【2025年4月】育児休業給付金の延長手続きがより厳しく。変更点を解説

子どもが1歳になるまで取得できる育児休業と、その間に支給される育児休業給付金は、子育て労働者の雇用を継続するための大切な制度です。
令和7年(2025年)4月、給付金の支給期間を延長する手続きが、これまでよりも厳しくなりました。
【この記事でわかること】
- そもそも育児休業・育児休業給付金とは?
- 育児休業・給付金の期間延長について
- 令和7年(2025年)4月改定の「延長申請手続きの厳格化」の背景、どう変わったのか
- 延長申請の流れ、必要な書類 など
目次
育児休業給付金とは
育児休業(育休)とは、原則、1歳未満の子どもを育てるために労働者が取得できる休業制度で「育児・介護休業法」に基づいて運用されています。
育児休業を取得した労働者は休業期間中、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。育児休業中の賃金が減少することを補填するために設けられているもので、給付金によって、一定の期間は子どもの育成に専念できます。
育児休業給付金は、男女問わず受け取ることができます。
支給条件と金額
育児休業給付金を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入している
- 1歳未満の子を育てるための育児休業を取得している
- 育児休業の開始前2年間に、11日以上(または80時間以上)働いた月が12ヶ月以上ある
- 育児休業中、各支給単位期間(1ヶ月ごと)の就業日数が10日以下(80時間以下)
上記の条件をクリアした場合、以下の方法で計算された給付金が支給されます。
1回の給付額 = 休業開始時賃金日額※ × 支給日数(30日) × 67%(育休開始181日以降は50%) |
※休業開始時賃金日額 = 育休開始前6ヶ月の給与総額 ÷ 180
例えば、育児休業に入る前の6ヶ月(180日)の給与総額が180万円だった場合、
1万円(180万円÷180日)× 30日 × 67%(育休開始181日以降は50%) =201,000円(同15万円) |
が1回の給付で支払われます。
※ 2025年4月から、子どもが生まれたあとの一定期間、両親がともに14日以上の育児休業を取得すると、最大28日間、「出生後休業支援給付金」が上乗せされます。
育児休業期間・支給期間の延長

育児休業と育児休業給付金の支給は、原則、子どもが1歳になった時点で終わります。
※ 父母が共に育児休業を取得する「パパ・ママ育休プラス」を利用すると、子どもが1歳2ヶ月になるまで延長されます。
また子どもが1歳になるタイミングで、働くことで子どもを育てる人がいなくなる(保育所に入れないなど)と認められたとき、子どもが1歳6ヶ月になるまで休業と給付金の支給が延長されます。さらに、1歳6ヶ月になる時点でも延長が必要な場合は、2歳になるまで再延長されます。
1歳6ヶ月、または2歳まで延長が認められる条件(延長事由)は以下のとおりです。
保育所等の利用を申し込んでいるが、利用できる見込みがない
- 育児休業後に主に子どもを育てる予定だった配偶者が亡くなったり、怪我や病気で養育ができなくなった場合など
実際、延長される場合のほとんどが、1の「保育所等を利用できない」パターンです。以下でくわしく説明します。
育児休業給付金の期間延長手続き(2025年4月1日以降の厳格化)
先述のとおり育児休業・給付金の期間は原則1年ですが、保育所等に入所できない場合は、最大2年まで延長できます。
平たく言えば、「保育所に入れなければ、休みとお金がもらえる期間が伸びる」ということです。
そしてこの制度下では、育児休業・給付金の期間を延長させるために、保育所等を利用するつもりがないにもかかわらず、わざと「落選狙い」で申し込むケースが増えていました。
保育所等の「落選狙い」の申請は、休業や給付金の趣旨から大きく外れるものであり、また、その対応に多大な負担がかかっているとの声が、現場の担当者から寄せられていました。
そこで2025年4月に延長の手続きが厳格化されることになりました。
速やかに職場に復帰するために保育所等に申込みを行っている(本当に保育所等を利用する意思がある)かが、厳しく判定されることになりました。
「保育所等に入所できない場合」を理由とする延長の要件
上記のような抜け道を防ぐため、保育所等に入れないことを理由に育児休業・給付金の期間の延長を希望する場合は、以下の要件をクリアする必要があります。
- 問い合わせだけではなく保育所等への入所の申込みを、子どもの1歳の誕生日前日までに行っている
- 入所希望日が、子どもの1歳の誕生日より前の日付になっている
- 申し込んだ保育所が片道30分以内である
- 申込みの際に「入所保留となることを希望する」「速やかな初期場復帰を希望していない」旨の意思表示をしていない
- 子どもの1歳の誕生日の時点で、入所できる見込みがない
必要な書類
延長申請の厳格化に伴い、新たに2種類の書類の提出が、追加で必要になりました。
- (延長時の)育児休業給付金支給申請書
育児休業給付金の延長を申請するための書類 - 入所保留通知書・入所不承諾通知書など
市町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(市町村によって名称が異なる) - 【新】:育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
- 【新】:市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
電子申請した場合は申込み内容や画面を印刷したもの
▼育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書

期間延長手続きの申請の流れ
- 従業員から延長の申し出を受ける
- 会社が上記の必要書類を作成し、育児休業終了(子どもが1歳になる日)の2週間前までにハローワークへ提出する(電子申請可)
- ハローワークにより審査される
- 結果が通知される
また子どもが1歳6ヶ月になるときに、2歳まで期間の延長を希望する際は、改めて延長申請の手続きが必要です。
育児休業にかかわるその他の給付・支援金

この記事では「育児休業給付金」に絞って解説しましたが、その他にも育児休業にかかわる給付や支援金があります(以下、厚生労働省の解説ページに飛びます)。
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まき社会保険労務士事務所 代表
社会保険労務士 牧 あや