2025(令和7)年 キャリアアップ助成金の改正ポイント(正社員化コース)を解説
契約社員や派遣社員を正規雇用するなど、労働者のキャリアアップにつながる取り組みを行った企業に支給される助成金「キャリアアップ助成金」は、多くの企業で活用されています。
このキャリアアップ助成金が2025年4月に改定されました。
【この記事でわかること】
- そもそも、キャリアアップ助成金の「正社員化コース」とは?
- 2025年に4月に変更された内容(正社員化コース関連)
- 今回の変更は改悪なのか、改良なのか
- キャリアアップ助成金の支給申請の流れ
目次
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者、つまり有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などが企業内でキャリアを向上させるための支援制度です。
これらの労働者を正社員に転換したり、待遇を改善する取り組みを行った事業主に対して助成金が支給されます。
キャリアアップ助成金の種類
キャリアアップ助成金は「正社員化支援(2コース)」と「処遇改善支援(4コース)」の全6コースが用意されています。

キャリアアップ助成金申請の全体像

出典:キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)厚生労働省
キャリアアップ助成金を申請する前の準備として重要なのが、各コースとも、取り組み(正社員化する、賃金を改定するなど)を実施する前日までに「キャリアアップ計画」を管轄の労働局に提出しなければいけないことです。
キャリアアップ計画とは今後のおおまかな取り組み(対象、目標、機関、取り組み内容)を記載するものです。
以下では2025年(令和7年)の改正対象となった「正社員化コース」について、くわしく解説します。
キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは
「正社員化コース」は、有期または無期の雇用労働者を正社員化したり、派遣労働者を直接雇用して正社員化したときに、事業主に助成金が支払われます。
助成金額はこちら
前提として正社員化する以前に6ヶ月以上、有期雇用労働者、または無期雇用労働者として雇用されている人が対象です(派遣の場合も6ヶ月以上、継続して業務に従事している必要あり)。
対象事業主の主な要件
- 対象の労働者の正社員化後6ヶ月の賃金を、正社員化前6ヶ月の賃金より3%以上増額させていること
- 正社員化した日の6ヶ月前から1年経過するまでの間に、雇用保険被保険者を事業主の都合により離職させていないこと
- 正社員化した日以降、その労働者を雇用保険、社会保険に加入させていること
- 就業規則などに正社員への転換制度を規定していること など
正社員化コースの注意点
主な注意点は以下のとおりです。
- 過去3年以内に業務を委託していた個人事業主などを正規雇用した場合は、「正社員化コース」の対象外
- 「正社員化前6ヶ月の賃金より3%以上増額」には「実費補填であるもの」「毎月変動する費用」「賞与」は含まない
2025年(令和7年)キャリアアップ助成金の改正点
2025年4月、キャリアアップ助成金の内容が一部変更されました。今回は「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」の内容が変更されました。
この記事では申請が多い「正社員化コース」にかかわる変更点をお伝えします。
「正社員化コース」の変更点
正社員化コースは有期雇用労働者等を正規雇用した事業主に対して支払われる助成金です。
正社員化コースは2023年11月に内容が拡充され、今回はそれ以来の改定です。
【2025年3月まで】
| 雇用形態 | 規模 | 助成金額 (1人あたり) |
|---|---|---|
| ① 有期→正規 | 中小企業 | 80万円 (40万円×2期) |
| 大企業 | 60万円 (30万円×2期) | |
| ② 無期→正規 | 中小企業 | 40万円 (20万円×2期) |
| 大企業 | 30万円 (15万円×2期) |
上記に加えて、以下の加算措置がありました。
- 派遣労働者を正規労働者として直接雇用した場合:28.5万円
- 母子家庭の母等又は父子家庭の父:9.5万円(有期→正規)
- 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正社員転換:9.5万円(一部11万円)
(有期→正規 ) など
【2025年4月以降】
| 雇用形態 | 規模 | 重点支援対象者 (1人あたり) | それ以外 (1人あたり) |
|---|---|---|---|
| ① 有期→正規 | 中小企業 | 80万円 (40万円×2期) | 40万円 (40万円×1期) |
| 大企業 | 60万円 (30万円×2期) | 30万円 (30万円×1期) | |
| ② 無期→正規 | 中小企業 | 40万円 (20万円×2期) | 20万円 (20万円×1期) |
| 大企業 | 30万円 (15万円×2期) | 15万円 (15万円×1期) |
※ 重点支援対象者とは、以下a〜cいずれかに該当する者を指します。
- a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
- b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
- ①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下
- ②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
- c:派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定訓練修了者
25年4月の改定では、新たに「重点支援対象者」という考え方が採用され、これまであった労働者ごとの加算措置がなくなりました。
結果、正規雇用に移換する労働者が重点支援対象者でない場合、助成金額がこれまでの半額になりました。
「正社員化コース」の具体的な改定例
例1 )中小企業が雇用期間7ヶ月の有期雇用労働者(入社直前までいた以前の職場で、退職まで数年間、正規雇用だった)を正規雇用したとき
- 25年3月まで:80万円
- 25年4月以降:40万円(重点支援対象者でないため)
例2)中小企業が雇用期間7ヶ月の有期雇用の新卒者を正規雇用したとき
- 25年3月まで:80万円
- 25年4月以降:0円(対象外)
上記の例のように、これまでよりも助成金額が減ってしまうケースも少なくありません。
キャリアアップ計画書の取り扱いも簡素化
これまでキャリアアップ助成金の各コースを申請するためには、取り組み開始の前日までに管轄の労働局にキャリアアップ計画書を提出し、認定を受ける必要がありました。
今回の改定で、届出のみでよいことになりました。これにより「取り組み開始前に認定が間に合わず、助成されなかった」といったことは減りそうです。
「正社員化コース」申請の流れ
上図のように、正社員に転換して6ヶ月の賃金を支払ったのちに1回目(1期目)の助成金の支給申請ができます。また転換した従業員が「重点支援対象者」だった場合、さらに6ヶ月の賃金を支払ったのちに2回目(2期目)の申請ができます。
申請ができるのは1期目は6ヶ月分の賃金を払ってから2ヶ月以内、2期目はさらに6ヶ月分の賃金を支払ってから2ヶ月以内です。
申請は電子申請が可能です。
岡山でキャリアアップ助成金について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ
岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。
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参考資料
まき社会保険労務士事務所 代表
社会保険労務士 牧 あや
まき社会保険労務士事務所

