【育児関連の変更点】2025(令和7)年改正 育児・介護休業法をわかりやすく解説

2025年03月25日
育児・介護休業法

この記事は約 8 分で読めます。

育児や介護を行う人が仕事と家庭をうまく両立できるようにサポートするための法律「育児・介護休業法」が、2025年(令和7年)に改正されます。

これまでの過去の改正と比べても大きなもので、すべての企業が対応しなければいけない内容です。

 【この記事でわかること】

  • 育児・介護休業法の「育児」にかかわる改正ポイント
  • 改正にともない、担当者は具体的に何をしなくてはいけないのか

介護関連の改正は、以下の記事で解説します。

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そもそも育児・介護休業法とは

育児・介護休業法は、仕事と育児や介護を両立できるようにするための法律です。育児や介護を理由に仕事を辞めなくてもよい環境を整えることを目的に、1992年(平成4年)に施行されました。

法律には育児休業、子の看護休暇、介護休業、介護休暇といった制度が定められています。

育児休業1歳未満の子を育てる労働者が取得できる。育児休業中は、育児休業給付金が支給される。
産後パパ育休(出生時育児休業)産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる。育児休業の一部で、1歳までの育児休業とは別に取得できる。
子の看護等休暇小学校3年生修了までの子を育てる労働者が取得できる。年間で子ども1人につき5日、2人以上の場合は最大10日まで取得でき、年次有給休暇とは別に付与される。
介護休業要介護状態にある家族を持つ労働者が、家族1人につき93日を限度として3回に分けて取得できる。休業期間中、企業に給与の支払い義務はない。
介護休暇要介護状態にある家族を持つ労働者が取得できる短期間の休暇。対象家族1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日まで取得できる。休暇期間中は原則、無給。

2025年(令和7年)育児・介護休業法の改正の目的・特徴

2025年4月、10月に施行される改正は、以下の3点を目的に行われます。

育児関係はより柔軟な働き方ができるような改正が多いことに対して、介護関係は既存の制度に大きな変更はなく、活用を強化するための改正と言えます。

育児関連の2項目をもう少しくわしく確認します。

子の年齢に応じた柔軟な働き方の推進

子どもの年齢に応じてフルタイムで雇用されながらも「残業なし」「就業時間の変更」「テレワーク」など、柔軟な働き方を希望する割合が増えています。

これらの希望を踏まえ、男女ともにキャリア形成と育児を両立できるようにするための対策が拡大されます。

また事業主は従業員に対して、休業制度の個別の周知や意向聴取、配慮が求められるようになります。

育児休業の取得状況の公表義務の拡大

育児休業を取りやすくするため、また、事業主の仕事と育児の両立支援を促すために、男性の育児休業取得率を公表しなければいけない企業が拡大します。


以下では今回の改正項目を「育児関連」に絞ってお伝えします。

介護関連は以下の記事で解説しています。

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【育児】2025年(令和7年)育児・介護休業法の改正内容

2025年の育児・介護休業法の改正における「育児休業」「子の看護休暇」にかかわる具体的な変更点を確認していきます。

  1. 子の看護休暇の見直し
  2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
  3. 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加
  4. 育児のためのテレワーク導入
  5. 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
  6. 柔軟な働き方を実現するための措置等
  7. 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

なお、一部を除いてこれらの改正はすべての企業が対象です。

① 子の看護休暇の見直し

【育児】2025年(令和7年)育児・介護休業法の改正内容

画像出典:厚生労働省 

施行日2025年(令和7年)4月1日
対応義務
就業規則等の見直し必要

休暇を取得できる日数はこれまでと変わりません(1年間に5日、子が2人以上なら10日)。

② 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

画像出典:厚生労働省 

施行日2025年(令和7年)4月1日
対応義務
就業規則等の見直し必要

小学校就学前の子を育てる労働者であれば、残業の免除を請求できるようになります。

③ 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加

施行日2025年(令和7年)4月1日
対応選択
就業規則等の見直し選択する場合は必要

3歳未満の子を育てる労働者で、短時間労働が難しい場合の代替措置にテレワークが追加されます。

④ 育児のためのテレワーク導入

施行日2025年(令和7年)4月1日
対応努力義務
就業規則等の見直し必要

③の短時間勤務の代替措置のみならず、3歳未満の子を育てる労働者がテレワークを選べるようにすることが、努力義務化されます。

⑤育児休業取得状況の公表義務適用拡大

施行日2025年(令和7年)4月1日
対応対象企業は義務
就業規則等の見直し

公表する内容は男性の「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかです。

公表は自社のHPのほか、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」の活用も推奨されています。

⑥ 柔軟な働き方を実現するための措置等

施行日2025年(令和7年)10月1日
対応義務
就業規則等の見直し必要

3歳から小学校就学前の子を育てる労働者に対して、事業主は以下のうち2つ以上の措置を行うことが義務化されます。その際、過半数組合等からの意見聴取が必要です。

  1. 始業時刻等の変更
  2. テレワーク等(10日以上/月)
  3.  保育施設の設置運営等
  4.  就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇
    (養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
  5.  短時間勤務制度

※2、4は時間単位での取得を認める必要があります。

労働者は講じられた措置の中から1つを選び、利用できます。事業主は対象の労働者へ個別で周知と制度利用の意向聴取を行うことが義務付けられます。

⑦ 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

施行日2025年(令和7年)10月1日
対応義務
就業規則等の見直し

労働者から本人や配偶者の妊娠・出産の申出があったときと、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は以下の内容を個別に意向聴取することが義務化されます。

  1. 勤務時間帯(始業および終業の時刻)
  2. 勤務地(就業の場所)
  3. 両立支援制度等の利用期間
  4. 仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

事業主は聴取した意向は、自社の状況に応じて配慮しなければいけません。

補足:2025年4月から育児休業給付の給付率が引き上げ

補足:2025年4月から育児休業給付の給付率が引き上げ

画像出典:仕事と育児の両立支援 | 政府広報オンライン

2025年4月から育児休業給付の給付率が変更されます。

現行の給付率(67%)に加えて、両親ともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、賃金の13%が追加で給付されます。これにより給付率は80%(手取りで10割相当。育休中は社会保険等が免除されるため)となり、手取りはほぼ減らなくなります。

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金とは

出典:仕事と育児の両立支援 | 政府広報オンライン

両立支援等助成金とは、労働者の家庭と仕事の両立を支援する取り組みを行ってる企業に対して、国が助成する制度です。

例えば「育休中等業務代替支援コース」では、育児休業や短時間勤務期間中の業務を代わりに行う労働者へ手当を支給したり、代わりの要員を新たに雇用した場合、1人あたり最大で140万円の助成を行っています(2025年3月現在)。

参照:両立支援等助成金|厚生労働省

育児・介護休業法について相談できる窓口(岡山)

育児・介護休業法に関する問い合わせは各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)で受け付けています。

岡山労働局 雇用環境・均等室
086-225-2017
受付時間 8時30分~17時15分(土日・祝日・年末年始を除く)

また、育児・介護休業を取得する社員をサポートする企業は、社会保険労務士等の専門家から無料でアドバイスを受けられます(受付時期に制限あり)。

中小企業育児・介護休業等推進支援事業|いくぷら(パソナ)

岡山で育児・介護休業について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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    参考資料

    2025年(令和7年)育児・介護休業法 改正ポイントまとめ

    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや