36協定(サブロク協定)とは?労働時間の原則を解説

2025年06月26日
36協定

従業員に残業や休日出勤をお願いするときは36協定(サブロク協定)の締結・提出が必要です。労働時間のルールを明確にしておくことで、従業員は心身ともに安心して働くことができます。

従業員の働き方が重視されるいま、労働時間に関する基礎知識は、確実に押さえておきたいものです。

 【この記事でわかること】

  • 36協定ってなに?なぜ必要なの?
  • 従業員が働ける時間の上限
  • 36協定の作成、提出の手順

「36協定の基本」をわかりやすく

36協定(サブロク協定)とは、時間外労働や休日労働に関する労働者と会社の約束(労使協定)です。過剰な労働を防ぎ、労働者の健康を守ることを目的とします。

正式な名前は「時間外労働・休日労働に関する協定」で、労働基準法第36条に基づいていることから、そのように呼ばれます。

大原則として労働基準法では、労働者に法定労働時間を超えて労働させることを禁止しています(同法32条)。1日8時間、1週間40時間を超えて労働させる場合、休日に労働させる場合は、必ず36協定を結ばなければいけません。

また36協定を締結したあとは、所轄の労働基準監督署に提出する義務があります。

法定労働時間と所定労働時間

36協定を理解する上で重要なのが「法定労働時間」と「所定労働時間」です。

法定労働時間とは先述した「大前提」の労働時間です。

  • 労働時間の上限は「1日8時間」「1週間あたり40時間」
  • 休日は「毎週少なくとも1回」または「4週間を通じて4日以上」

一方、所定労働時間とは企業が就業規則や労働契約で定めた労働時間を指します。法定労働時間内であれば、自由に定めることができます。

※ 法定労働時間、所定労働時間に休憩時間は含まれません。例えば9時〜17時が就業時間で、12時から13時が休憩の場合、労働時間は7時間です。

【原則】時間外労働・休日労働の上限

そして上記の法定労働時間を超えた労働時間が「時間外労働(残業)」であり、法定休日(週1回)に行う労働が「休日労働」です。いずれも36協定の対象となります。

【例1】

 

所定労働時間が7時間の会社でいわゆる「残業」を30分した場合、法定労働時間の8時間は超えていないため、法律上の「時間外労働」はゼロです。

【例2】

 

所定休日が土・日曜日、法定休日を日曜日に定めている会社で、土曜日に働いた場合、法律上の「休日労働」には該当しません。

36協定を締結した場合、以下の時間外労働の上限の原則があります。

【時間外労働の上限(原則)】

 
  • 月に45時間
  • 年に360時間

    有効期間は1年間

    36協定には効力を発揮する「有効期間」があります。有効期間は1年間として、毎年労働条件を確認して更新するのが一般的です。

    例えば2025年4月1日から2026年3月31日までの期間を対象とする場合、次回は26年3月末までに新しい協定を締結して、届け出る必要があります。

    労働者代表との締結

    36協定は「労働者の過半数で組織する労働組合」、または「労働者の過半数を代表する者」との書面による締結が必要です。

    36協定を締結しないと

    36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定を締結していても、その上限を超えて労働させるなどの違反をした場合、6ヶ月以上の懲役、または30万円の以下の罰金が課されます(労働基準法第119条)。

    また従業員からはもちろんのこと、社名が公表されて社会的な信用を失ったり、過労死などの労働災害が発生したときには、訴訟に発展する可能性もあります。

    ※ ちなみに2018年6月の労働基準法の改正以前は、36協定には罰則による強制力がありませんでした。そのため今でも「36協定は意味がない」という誤った考えを持ってしまっている人もいます。

    36協定で定めるべき重要事項

    36協定では以下の項目を定める必要があります。

    • 協定の起算日(上限時間を計算する起算日)
    • 協定の有効期間(1年が望ましい)
    • 時間外労働が必要な理由
    • 1日、1ヶ月(上限45時間)、1年(上限360時間)毎の、時間外動労時間の限度
    • 時間外労働と休⽇労働の合計を「⽉100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」にすることへの合意(後述)

    36協定の「特別条項」

    繰り返しになりますが、時間外労働の上限の原則は「月に45時間」「年に360時間」です。

    ただし36協定には「特別条項」というものがあります。

    業務量が急増したり、予期しない事情に対応するため、特別条項を設けることで、原則の時間外労働の上限(月に45時間、年に360時間)を超えて、臨時的に時間外労働を行わせることができます。

    限度時間を超えて労働させられるのは、あくまで「臨時的で特別な事情がある場合」に限ります。

    【臨時的で特別な事情の例】

     

    予算・決算業務、納期のひっ迫、クレームへの対応、機械トラブルへの対応 など

    また特別条項を設けたとしても、以下の上限を守らなければいけません

    【特別条項下での上限】

     

    • 時間外労働は年720時間以内
    • ※ 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • ※ 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1月当たり80時間以内
    • 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6回(6ヶ月)が限度

     

    ※は休日労働も含んだ時間であることに注意

    例えば、1ヶ月の時間外労働が44時間であっても、休日労働が56時間あり、合計が100時間を超えると、法律違反です。


    36協定には「原則」と「特別条項」があり複雑ですが、以下がここまで説明してきた時間外労働の上限のイメージです。

    36協定の作成・届出のステップと注意点

    36協定の作成・届出の流れは以下のとおりです。

    36協定は「労働者の過半数で組織する労働組合」、または「労働者の過半数を代表する者」との書面による締結が必要です。

    36協定を締結したら、以下の届出(様式第9号)を労働基準監督署に提出する必要があります。36協定自体をこの様式を用いて締結することもできます

    出典:労働基準法に基づく各種届出|岡山労働局

    特別条項を定める場合は、様式第9号の2(2枚)を届け出る必要があります。

    出典:労働基準法に基づく各種届出|岡山労働局

    様式ダウンロード:時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)|東京労働局

    様式は上記のリンクからダウンロードできますが、電子申請を使用すれば、届出(協定書)の作成から申請までWeb上で完結させることができます。

    36協定は有効期間が始まるまでに提出しなければいけません。

    関連記事:【簡単作成】GビズIDの基本とできること、取得方法

    36協定作成時の注意点

    36協定を作成して締結する際には、以下の点に留意しましょう。

    • 時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめる
    • 協定の範囲内であっても、使用者には安全配慮義務がある
    • 時間外労働・休日労働の業務を明確にする

    36協定に関する疑問への回答

    36協定に関するよくある疑問と回答をまとめます。

    36協定の従業員視点でのメリット・デメリットは?

    「36協定があると残業や休日出勤させられる」と考える労働者は多いですが、36協定によって不当な時間外労働や休日労働を避けることができるのも事実です。

    もちろん時間外労働が増えると、ワークライフバランスに影響することが考えられます。

    提出後の期間内変更について。上限を超えてしまったらどうする?

    36協定で定める上限時間などは厳格に適用される必要があるため、原則、期間内で変更することは認められません。

    時間外労働が増える可能性がある場合は、予め特別条項を盛り込むなど対策が必要です。

    万が一、36協定で定めた上限時間を超えてしまう可能性がある場合、まずは業務改善を行い、時間内に収めるように管理を徹底します。

    それでも難しい場合は、法令違反になる前に、所轄の労働基準監督署や顧問社労士へ相談してください。

    岡山で36協定について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

    岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

    「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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      参考資料

      この記事の執筆者
      まき社会保険労務士事務所 代表
      社会保険労務士 牧 あや