65歳超雇用推進助成金とは?条件・改正ポイント・申請方法をわかりやすく解説

2026年05月29日

働き手不足が深刻な現代。2025年4月には「65歳以上の労働者の完全雇用義務化」が施行されるなど、国を挙げて働く意欲のある高齢者を支援しようとする機運が高まっています。

「60代前半の社員の定年が近づいているけれど、どうしよう……」「もっと活躍してもらいたいけれど、助成金を活用できないだろうか……」と、今まさに検討されている担当者さんも多いことでしょう。

この記事では高齢社員が働き続けられる環境を整えた事業者に支給される「65歳超雇用推進助成金」について、制度の基本から最新のコース、支給条件や金額を端的にわかりやすくお伝えします。

 【この記事のポイント】

  • 「65歳超雇用推進助成金」は高齢労働者が継続して働ける環境を整えた事業者への助成金制度
  • 全3コースが用意されている
  • 措置の実施の前に計画書の提出と認定を受けなければいけないコースがある
  • 窓口はJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)

65歳超雇用推進助成金とは

「65歳超雇用推進助成金」は、意欲と能力がある高齢労働者が働き続けられる環境を整えた事業者に対して、国から支給される助成金制度です。深刻な人手不足が続く中で、経験豊富なベテラン人材の力を活かし、生涯現役社会の実現を後押しすることを目的としています。

昨今の日本の少子高齢化は働き手確保をますます難しくしています。

引用:国立社会保障・人口問題研究所

また平均寿命や健康寿命は確実に延びており、60〜69歳の34.1%が「66〜70歳まで働きたい(働いていた)」と回答するなど、高齢者の勤労意欲は高まっています。

そんな中、2025年4月には「高年齢者雇用安定法」が改正され、65歳までの雇用確保の完全義務化、70歳までの就業機会確保の努力義務化が施行されています。国はこの方針に沿って、高齢者が活躍できる職場づくりに取り組む事業者を「65歳超雇用推進助成金」によって金銭面で支援しています。

関連記事:65歳までの雇用が完全義務化に。高年齢者雇用安定法の改正内容を解説

令和8年(2026年)も継続中

令和8年(2026年)5月現在、「65歳超雇用推進助成金」と検索してトップに上がってくる厚生労働省のページは「令和6年度(2024年度)」のものであるため「もう終わったの?」と質問されることが多々ありますが、2026年度も継続中です。

むしろ2026年度は後述のとおり、これまで以上に条件が良くなり制度を利用するメリットが拡大しています。

基本条件(共通条件)

2026年現在、65歳超雇用推進助成金には3つのコースが用意されていますが、いずれのコースを申請するにも以下の高齢者の雇用体制が整っていることが前提となります。

  • 雇用保険の適用事業所である
  • 就業規則が書面で作成され、労働基準監督署へ届け出・従業員に周知されている
  • (定年制度がある場合)定年を60歳以上に設定し、65歳までの雇用確保措置を導入している
  • 高齢者の雇用確保に関する勧告を受けていない
  • 「高年齢者雇用管理に関する措置」(以下図)を1つ以上実施

※クリックして拡大できます。

助成金を活用するメリット

65歳超雇用推進助成金は金銭面以外に以下のようなメリットが期待できます。

  • 熟練した人材の確保による採用難の解消
    会社の業務やノウハウをよく知ったベテランに引き続き戦力として活躍してもらえる
  • 若手への技術・ノウハウの継承がしやすくなる
    「見て覚える」「一緒に仕事をしながら学ぶ」という形でノウハウを継承できる
  • 会社のイメージ・採用ブランディングに好影響がある
    「長く働ける会社」は求職者にとっても魅力的に映る

上記のとおり、高齢者の雇用を確保したり働きやすい環境を整備することは、高齢者本人や事業主のみならず、すべての社員が「長く安心して働ける」という安心感を得ることができ、結果的に企業への忠誠心、一体感が高まります。

2026年度最新コース

2026年度の65歳超雇用推進助成金は全3コースが用意されています。ここではそれぞれのコースの概要や助成金額、主な支給条件などを紹介します。

自社の課題の解決に合った助成金を見つける参考にしてください。

コース主な対象最大支給額
(大企業)
1. 65歳超継続雇用促進コース定年引き上げ・廃止など240万円
2. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース制度整備・機器導入110万円
(95万円)
3. 高年齢者無期雇用転換コース有期労働者の無期転換400万円
(300万円)

1. 65歳超継続雇用促進コース(最大240万円)

定年の引き上げや廃止など、高齢者が長く働ける制度を導入した企業を支援する制度です。2026年度の改正により受給額が大幅に増額されています。

以下のいずれかの措置を行った事業者に支給されます。中小企業/大企業といった企業規模の条件はなく、すべての対象事業者共通の金額です。

【A. 65歳以上への定年引き上げ】

60歳以上の
対象人数
65歳66~69歳
(5歳未満引上げ)
66~69歳
(5歳以上引上げ)
70歳以上
1~3人15万円25万円40万円45万円
4~6人20万円32万円65万円70万円
7~9人25万円39万円110万円115万円
10人以上30万円46万円135万円140万円

【B. 定年の定めの廃止】

60歳以上の
対象人数
支給額
1~3人60万円
4~6人120万円
7~9人180万円
10人以上240万円

【C. 66歳以上への継続雇用制度の導入】

60歳以上の
対象人数
66~69歳まで70歳以上まで
1~3人22万円(20万円)40万円(36万円)
4~6人37万円(32万円)65万円(60万円)
7~9人60万円(50万円)105万円(95万円)
10人以上90万円(75万円)130万円(120万円)

※ カッコ内の金額は希望者全員ではなく、会社が定めた基準に該当する者のみを対象とする制度を導入した場合の金額

【D. 他社による継続雇用制度の導入】

60歳以上の
対象人数
66~69歳まで70歳以上まで
1~3人20万円(16万円)32万円(30万円)
4~6人30万円(26万円)50万円(45万円)
7~9人50万円(40万円)85万円(75万円)
10人以上70万円(60万円)105万円(100万円)

※ カッコ内の金額は希望者全員ではなく、会社が定めた基準に該当する者のみを対象とする制度を導入した場合の金額

主な支給要件

  1. 制度を労働協約または就業規則に規定し、労働基準監督署へ届け出ている
  2. 支給申請日の前日において、1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いる

申請受付期間

措置を実施した月の翌月から4ヶ月以内の各月月初から15日

2. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース(最大60万円+50万円)

55歳以上の労働者が意欲と能力を十分に発揮して働き続けられるように、評価制度や賃金体系、研修制度などの雇用管理制度を新しく導入・改善した企業を支援する制度です。

支給金額は実施した措置の内容と企業規模(中小企業かそれ以外か)によって決まります。また、制度整備に伴いシステムなどの機器を導入した場合は、その経費の一部も加算されます。

(助成金の支給対象の措置は先に紹介した「高年齢者雇用管理に関する措置」とは微妙に異なる点に注意)

実施した措置中小企業中小企業以外
(大企業)
① 職業能力を評価する仕組みを活用した
賃金・人事処遇制度の導入又は改善
60万円45万円
② 短時間勤務や隔日勤務制度の導入・改善30万円23万円
③ 負担を軽減するための在宅勤務制度の導入30万円23万円
④ 知識やスキルを身につけるための研修制度の導入30万円23万円
⑤ 法定外の健康管理制度の導入
(人間ドックの受診支援など)
30万円23万円
⑥ その他の高齢者の雇用機会拡大に必要な措置30万円23万円
(加算)雇用管理制度の整備に伴う機器等の導入導入経費の60%導入経費の45%

※ 複数の措置を実施した場合は、いずれか高い額

※ 機器等の導入経費が50万円を超える場合は50万円

※ 中小企業の定義は以下のとおり

業種中小企業事業主の基準
小売業
(飲食店を含む)
資本金・出資が5,000万円以下
または
従業員 50人以下
サービス業資本金・出資が5,000万円以下
または
従業員 100人以下
卸売業資本金・出資が1億円以下
または
従業員 100人以下
その他の業種資本金・出資が3億円以下
または
従業員 300人以下

主な支給要件

  1. 「雇用管理整備計画書」を高齢・障害・求職者雇用支援機構に提出し、認定を受けている
  2. 計画にもとづき措置を行い、計画終了から6ヶ月間の運用状況を明らかにする書類を整備している
  3. 申請日の前日において1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者で、措置計画の終了後も6ヶ月以上、継続して雇用されている人が1人以上いる
  4. 機器等を導入したときは、支給対象経費を支給申請日までに支払っている

申請受付期間

  • 「雇用管理整備計画書」を計画開始の3ヶ月前の日までに高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請
  • 計画期間終了日の翌日から6ヶ月後の日の翌日~その2ヶ月以内に支給申請

3. 高年齢者無期雇用転換コース(最大40万円×10人)

50歳以上の有期契約労働者(契約社員など)を、期間の定めのない無期雇用へ転換させる取り組みを支援する制度です。

会社が作成した計画に基づいて無期雇用へ転換させた場合、対象労働者1人につき、以下の金額の助成金が支給されます。無期雇用転換計画書の計画期間は2〜3年です。

中小企業中小企業以外
(大企業)
40万円30万円

※ 支給申請年度における対象労働者数の合計人数は、1事業所あたり10人まで

主な支給要件

  1. 有期契約労働者を無期雇用労働者に転換するルールを労働協約や就業規則などに新しく定めている
  2. 転換日において50歳以上、かつ定年年齢未満の労働者(転換日に64歳以上となっている人は対象外)
  3. 有期契約労働者として働いていた期間が、通算して1年以上5年以内
  4. 無期雇用へ転換した後、6ヶ月以上継続して雇用し、その期間の賃金を適切に支払っている

申請受付期間

  • 「無期雇用転換計画書」を計画開始の3ヶ月前の日までに高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請
  • 対象者に対して転換後賃金を6ヶ月分支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請

2026年度の主な変更点

65歳超雇用推進助成金は2026年度に大きく条件が改正されています。結果、これまで以上に助成金を活用するメリットが拡大しています。

  1. 専門家への委託経費要件の撤廃
    これまでは社外の専門家へのコンサル料などの支出が必須だったが、外部への支払いがなくても受給できるようになった
  2. 支給額の拡大
    「65歳超継続雇用促進コース」における定年廃止の最大支給額が従来の160万円から240万円に拡大。また他社への継続雇用も実費の部分的な補助から定額助成になった
  3. 受給回数制限の撤廃
    「1事業主1回限り」の制限がなくなり、過去に受給した企業でも、より高い水準の取り組みを実施すれば再受給できる機会が広がった

申請手続きと注意点

65歳超雇用推進助成金の申請手続きは各コースによって異なりますが、全体としての共通の流れは以下のとおりです。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)を窓口とし、事前の計画立てから制度の実施、そして支給申請というステップを踏んで受給に至ります。

  1. 事前相談と準備
    所在地を管轄するJEEDの都道府県支部に相談し、最新の要件を確認する
  2. 計画書の提出と認定(評価制度等雇用管理改善コース・無期雇用転換コース)
    取り組みを開始する前に計画書を提出し、機構の認定を受ける
  3. 制度の導入および措置の実施
    認定された計画や作成したルールに基づき、具体的な措置を社内で実施する
  4. 支給申請書の提出
    措置の実施後、申請期間内に必要書類を揃えて都道府県支部に提出する(窓口への持参、郵送、e-Govによる電子申請)
  5. 審査および現況確認
    提出された書類に基づき、機構本部で審査を実施。必要に応じて事業所へのヒアリングや現地確認(現況確認)が行われる
  6. 助成金の入金
    支給が決定すると事業者に通知され、助成金が振り込まれる。支給決定から入金までは概ね2〜3週間程度

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申請にかかわるよくあるミス・チェックリスト

65歳超雇用推進助成金の申請手続きでよくあるミスや注意点は以下のとおりです。

  • 申請期限
    「措置を実施した翌月から4ヶ月以内」など、コースによって申請期限・申請期間が異なる
  • 就業規則の不備
  • 従業員の要件(年齢など)
  • 支給後の対象者の早期離職
  • 窓口の間違い
    窓口はJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の各都道府県支部
  • 高年齢者雇用推進者の選任漏れ など

そして最大の注意点が、年度内であっても予算上限に達すると早期に受付を終了する可能性があることです。予算に達すると事前予告なく受付が停止されるため、早めに申請することが鉄則です。

例えば2021年度は9月24日をもって「65歳超継続雇用促進コース」の新規受付が完全に停止されました。

よくある質問

最後に65歳超雇用推進助成金に関してよくある質問と回答をまとめます。

助成金受給は課税対象になりますか?

法人が受け取る場合は法人税の課税対象(益金算入)となります。個人事業主が受け取る場合は所得税の課税対象となります。消費税はいずれの場合もかかりません。

65歳超雇用推進助成金はいつまで続きますか?

明確な終了時期は定められていませんが、毎年度の国の予算の範囲内で実施される制度です。

また先述のとおり、予算上限に達した場合は、年度の途中であっても事前予告なく支給申請の受付が停止されることがあります。将来的に制度内容が変更されたり、制度自体が終了したりする可能性もゼロではありません。

他の助成金と併用できますか?

原則、同一の対象者や同一の取り組み(事由)に対して、他の助成金を重ねて受給することはできません。

例えば一人の従業員を無期雇用へ転換させたことに対して、65歳超雇用推進助成金とキャリアアップ助成金(正社員化コース等)を同時に受給することはできません。

ただし、全く異なる事由であれば、他の助成金を受けられる可能性があります。事前に厚生労働省が公開している「雇用関係助成金の併給調整早見ツール(XLSデータ)」で確認することをおすすめします。

助成金について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

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    この記事の執筆者


    まき社会保険労務士事務所 代表

    社会保険労務士 牧 あや