一般健康診断とは?2027年に検査項目が見直し。制度を基礎から解説

2026年05月25日

事業者にはすべての雇用している労働者に対して年に1回、健康診断を実施する義務があります。

この健康診断では法定の項目を網羅する必要があり、また労働者の健康を守るためにも労務担当者は内容をしっかり押さえておかなければいけません。

この記事では法律上、事業者が実施しなければいけない一般健康診断の基礎知識から検査項目、さらに2027年からの制度・検査項目の変更点についてもお伝えします。

 【この記事のポイント】

  • 労働者を1人でも雇用している事業者は1年以内ごとに1回、労働者の健康診断(一般健康診断/定期健診)を行わなければならない
  • 費用は事業者が負担5年間の診断結果の保存義務、異常があった労働者について医師への意見聴取義務などがある
  • 2026年現在、一般健康診断には11の検査項目が定められている
  • 2027年に「血清クレアチニン検査の導入」「喀痰(かくたん)検査の廃止」などの変更がある

一般健康診断の基礎知識

一般健康診断は労働安全衛生法第66条にもとづく、事業者が労働者に対して実施を義務づけられた健康診断です。

  • 対象事業者:常時使用する労働者を雇用しているすべての事業者
  • 対象労働者:常時使用する労働者
    (「無期契約または1年以上使用予定」と「週の所定労働時間が正社員の3/4以上」を両方満たすパートタイマーや契約社員なども対象
  • 実施頻度:原則、1年以内ごとに1回

そもそも事業者には労働者を心身ともに健康な状態で働かせる義務(安全配慮義務)があります。一般健康診断は従業員の病気の早期発見につながることはもちろん、従業員の健康を維持することは企業が長期的に生産性を保つ上でも重要な要素です。

事業者が実施義務を違反した場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります(労働安全衛生法第120条)。

健康診断の種類

労働者が受診する「健康診断」には一般健康診断の他にもいくつかの種類があります。大きく分けると「事業者が実施義務を負うもの」と「保険者が実施するもの」の2種類に分かれます。

健康診断実施対象頻度
一般健康診断事業者すべての労働者年に1回
特殊健康診断事業者有害業務
(有機溶剤・鉛・放射線などを扱う業務)
に従事する労働者
6ヶ月に1回
特定健康診断
(特定健診)
保険者40〜74歳の健康保険加入者
(メタボリックシンドロームの予防)
年に1回

特に「一般健診と特定健診の違い」はよく話題にされます。特定健診は健康保険組合や協会けんぽなどの保険者に実施義務があるもので、一般健康診断とは根拠法も目的も異なります。

ただし一般健康診断の検査項目には、特定健診に必要な項目がほぼすべて含まれているため、40歳から74歳の労働者が一般健康診断を1回受診すれば、両方を受診したことになります(高齢者の医療の確保に関する法律第21条)。

※ 逆に特定健診を一般健康診断の代わりにすることはできません。

企業の義務

一般健康診断の実務において、事業者には以下の義務があります。

  • 費用負担
    一般健康診断にかかわる費用は、全額、事業者が負担する(健康診断は事業者に実施が義務付けられているため)
  • 健診結果の保存と管理
    厚生労働省が定める項目を含んだ健康診断の結果は、5年間の保存が義務付けられている(厚生労働省様式
    ※ 特殊健康診断は5〜40年間保存が必要なものがある
  • (50人以上の事業場)労働基準監督署への報告
    常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署へ提出する
  • 異常所見があった場合の事後措置
    異常のある労働者について、事業者は3ヶ月以内に医師の意見を聴取しなければいけない。また医師の意見を踏まえて作業内容や労働時間などの変更を検討する

一般健康診断の費用相場

費用は血液検査を含むかどうかで大きく変わります。

  • 血液検査を含まない(省略する場合):約4,000円〜6,000円/人
  • 血液検査を含む(法定の全項目):約1万円〜1.5万円/人

金額はあくまで目安であり受診する医療機関によって異なります。

一般健康診断の健診項目一覧(2026年度)

2026年度における一般健康診断の健診項目を紹介します。

ここまで一般健康診断は年に1回受けるもの(=定期健康診断)として解説してきましたが、一般健康診断の中でも「雇入れ時」「定期健康診断」「特定業務従事者」といったように目的や条件によって必要な検査項目が異なります。

種別対象備考
雇入れ時新規採用者・入社から3ヶ月以内
・入社前3ヶ月以内の健康診断の
診断書で省略可
定期健康診断全労働者年1回
特定業務従事者健診恒常的に深夜業務に従事する者、
有害放射線業務に従事する者など
6ヶ月以内ごとに1回

「特定業務従事者健診」は一般健診診断の一種で、特定の業務(典型例は深夜業)に従事する人に追加で行う健診、先に紹介した「特殊健診診断」は有害物質・有害環境ごとに定められた健診群の総称で、一般健康診断とは別枠のもの、というイメージです。


以下、注釈がついている項目は条件次第で省略や代替が可能です。

健診項目雇入れ時定期健康診断特定業務従事者
問診
(既往歴・業務歴)
問診
(喫煙歴・服薬歴)
自覚症状・他覚症状
の検査
身長○ ※1○ ※1
体重
腹囲○ ※2○ ※2
視力
聴力
・1,000Hz
・4,000Hz
○ ※3○ ※3・※6
胸部X線検査○ ※4○ ※4・※7
喀痰検査○ ※5○ ※5・※7
血圧測定
貧血検査
(血色素量・赤血球数)
○ ※2○ ※2・※8
肝機能検査
・GOT
・GPT
・γ-GTP
○ ※2○ ※2・※8
血中脂質検査
・血清トリグリセライド
・HDLコレステロール
・LDLコレステロール
○ ※2○ ※2・※8
血糖検査(空腹時血糖)
(※ HbA1cでも代替可)
○ ※2○ ※2・※8
血糖検査
(HbA1c)
○ ※9○ ※9○ ※9
尿検査
・蛋白
・糖
心電図検査○ ※2○ ※2・※8
記号省略・代替できる条件
※120歳以上で、医師が必要でないと認めた場合に省略可
※240歳未満(35歳を除く)で、医師が必要でないと認めた場合に省略可
※妊娠中、BMI20未満などの場合も省略可
※345歳未満(35歳・40歳を除く)は、医師が認める方法(音叉など)に代替可
※440歳未満(20・25・30・35歳を除く)で、以下のいずれにも該当せず、医師が認めた場合に省略可
①感染症法の定期健診対象施設で勤務している
②じん肺健診(3年に1回)の対象
※5以下のいずれかに該当し医師が認めた場合に省略可
①X線検査で異常なし
②X線検査が省略された
※6前回の定期健診で当該項目を受診済みの場合、医師が認める方法(音叉など)に代替可
※71年に1回の実施で良い(6ヶ月ごとの実施は不要)(特定業務従事者のみ)
※81回目(前回)の定期健診で受診し医師が認めた場合に全部または一部を省略可
※9空腹時血糖検査の結果、医師が必要と判断した場合

年齢と省略

上記のとおり主に40歳未満で条件を満たしたり医師が認めた場合に、検査を省略できる項目があります。

ただ年齢だけを基準にして事業者の独断で検査項目を省略してしまうことが少なからずあります。あくまで省略するためには医師と連携の上、省略可と認められなければいけません。

その他の一般健康診断

上記の3種以外にも「海外派遣労働者」「給食従業者」「歯科医師」などの職種では、一般健康診断に特別な検査項目が定められています。

参照:一般健康診断の項目一覧表|厚生労働省

2027年(令和9年)4月の一般健康診断項目見直し

2027年4月に一般健康診断の検査項目が約20年ぶりに大幅に見直されることが決まっています。

前回の改正見直しから年月が経ち、「高齢化」「女性の社会進出」「医学の進歩」など、働く人を取り巻く環境が変化していることが背景にあります。

こうした状況を受けて2023年から厚生労働省の専門家検討会で検査内容が議論され、今回の改正に至りました。

【これまでの流れと今後のスケジュール】

  • 2025年12月:専門家検討会が報告書を公表
  • 2026年4月:改正省令の公布
  • 2026年8月:一部項目の先行施行
  • 2027年4月1日:新しい検査項目での健康診断をスタート

2027年から変更される項目は以下の3種類です。

  1. 血清クレアチニン検査の導入
  2. 喀痰(かくたん)検査の廃止
  3. 肝機能検査の名称変更(国際基準への統一)

① 血清クレアチニン検査の導入

これまでの項目に、腎臓(じんぞう)の働きを調べる検査が新しく加わります。

日本では自覚症状がないまま腎臓の機能が落ちる「慢性腎臓病(CKD)」の人が多く、推計250万〜500万人にのぼると言われています。これまでの尿検査(尿蛋白)だけでは、初期の腎機能低下を見逃してしまうケースがあるため、より精度の高い血液検査によって、腎臓が老廃物を正しくろ過できているかを確認します。

原則すべての労働者が対象となりますが、40歳未満は医師の判断で省略可能になる予定です。

事業者としては労働者1人あたり約60円程度の診断費増が見込まれます。

② 喀痰(かくたん)検査の廃止

これまで胸部エックス線検査の結果などに応じて行われていた「痰」を調べる検査がなくなります。

喀痰検査はもともとは結核を見つけるためのものでしたが、現在では結核にかかる人が大幅に減りました。また、もしX線検査で異常が見つかった場合でも、すぐに専門医の病院を受診してもらう方が確実な診断ができるという医学的な判断がなされました。

③ 肝機能検査の名称変更(国際基準への統一)

肝臓の状態を示す検査指標の呼び名が世界標準のルールに変わります。検査項目自体に変更はありません。

旧名称
(現行)
新名称
(2027年4月〜)
正式名称
GOTASTAspartate aminotransferase
GPTALTAlanine aminotransferase
γ-GTPγ-GTGamma-glutamyltransferase

女性特有の健康課題に関する問診(任意導入/2026年度から先行)

また検査項目の改正ではありませんが、これまでの健康診断の問診票に新しく「女性の体ならではの悩み」を確認する質問が追加されます。

問診では「月経困難症(ひどい生理痛)」、「PMS(生理前のイライラや体調不良)」、「更年期障害」などで、仕事に困っていることがないかを確認します。

問診の導入によって、自身の不調はケアが必要なものだという気づきになったり、専門家へ相談しやすくなるといったメリットが期待されています。

問診は自由回答で答えたデータは産業医や保健師といった医療の専門家だけが管理し、プライバシーは厳しく守られます(人事担当者や上司が回答を直接見ることはできません)。

国はマニュアルの整備を進めており、2026年(令和8年)から準備ができた会社や健診機関で先行して取り入れられる見込みです。

関連記事:両立支援等助成金とは?2026年最新の6つのコースを紹介

産業医の解任に関する報告義務(2026年8月から先行)

会社が契約している産業医を任期が終わる前に途中で解任する場合、その理由を労働基準監督署に報告しなければならなくなります。

施行は2026年8月1日で産業医を選任しているすべての事業場が対象です。

産業医は「この従業員は残業を減らすべき」のように、事業者にとって耳が痛い勧告をしなければいけないことがあります。

そうしたアドバイスに対して事業者側が「使いにくい医師だ」という理由で、不当に産業医を解任してしまうリスクがあったため、産業医の「独立性」と「中立性」を守るために、解任のプロセスが透明化されることになりました。

結果、働く人の安全がより守られるようになると期待されています。

一般健康診断に関するよくある質問

一般健康診断に関して労務担当者からよくある質問と回答をまとめます。

協会けんぽの健診(生活習慣病予防健診)と一般健康診断の違いは?

協会けんぽは加入者(被保険者)向けに費用の一部を補助して実施する「生活習慣病予防健診」を実施しています。

協会けんぽの健診は一般健康診断(定期健診)の法定項目をすべて含みつつ、事業者が負担を抑えて実施できるため、多くの中小企業で利用されています。

協会けんぽ健診
(生活習慣病予防健診)
一般健康診断
対象20歳・25歳・30歳・
35歳〜74歳の被保険者
全年齢
検査項目一般健診の法定項目+がん検診法定項目
費用最高5,500円
(一般健診)
医療機関が設定した金額

ちなみに「生活習慣病予防健診」と、冒頭でお伝えした40歳〜74歳に受診義務がある「特定健診」は異なる制度ですが、協会けんぽの健診には一般健康診断の項目を含むため、特定健診も同時に受けたことになります。

健康診断を受診する時間分の賃金は支払うべきですか?

法律上は一般健康診断の受診時間は必ずしも労働時間ではないため、その時間の賃金を支払うかどうかは事業者と労働者の協議によって決定されます。

ただし実務的には多くの事業者が就業時間内に受診させて、その時間は通常どおりの賃金を支払っています。

(一方で特殊健康診断については、有害業務を行う上で当然に実施すべき健診であるため、業務と不可分=賃金の支払いが必要という考え方が一般的です。)

再検査・精密検査を受診させることも事業者の義務ですか?また費用負担はどうなりますか?

法律上は再検査・精密検査を受診させることは義務付けられていませんが、安全配慮義務や労働者の健康のためにも、事業者から強く推奨することが望ましいです。

また再検査・精密検査の費用は本人負担とするケースが多いですが、特定の年齢層については事業者が補助するケースも見られます。

巡回健診にはどんなメリット・デメリットがありますか?

巡回健診(医療機関のバスなどが職場に来訪して行う健康診断)の実施には以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 受診率が上がりやすい
  • 業務への影響を最小限に抑えられる
  • 担当者の管理の負担が下がる

デメリット

  • 実施できる項目に制限がある
  • 最低人数の条件があるため小規模事業所では利用しにくい
  • 個人の都合に合わせた日程変更が難しい

検便やバリウムは法定項目ですか?

どちらも法定項目ではありません。

検便は食品を取り扱う業種(食品製造・飲食店など)では、食品衛生法に基づき別途実施が義務づけられていることがあります。

バリウム(胃部X線検査)は協会けんぽの生活習慣病予防健診に含まれる項目ですが、定期健康診断の項目には含まれていません。

パートタイマーにも実施義務がありますか?

冒頭でお伝えした条件(「無期契約または1年以上使用予定」と「週の所定労働時間が正社員の3/4以上」)をいずれも満たす労働者はパートタイマーでも実施する義務があります。

雇入れ時健診を行った年は定期健診は不要ですか?

雇入れ時の健康診断で実施した検査項目については、受診後1年間は一般健康診断(定期健診)の該当項目を省略(免除)できます。

ただし一般健康診断は1年以内ごとに1回行う必要があるため「入社4月、翌年の定期検診が6月」のように1年以上空いてしまうと法律違反になってしまう恐れがあるため注意が必要です。

異常所見があった従業員にかかわる「医師への意見聴取」は義務ですか?

異常所見があった労働者について医師に対して「この労働者をどんな条件で働かせるべきか」を確認する行為は事業者の義務です。当該労働者の労働時間や作業環境などの情報を医師に提供し、就業上の判断を仰ぎます。

労働者が受診する「再検査(精密検査)」とは別に事業者が行わなければいけないことに注意が必要です。

なお従業員50人未満の産業医の選任義務がない小規模な事業場であっても免除されません。

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    この記事の執筆者


    まき社会保険労務士事務所 代表

    社会保険労務士 牧 あや