独身税?子ども・子育て支援金とは。2026年から始まる制度を正しく理解

2025年09月24日
子ども・子育て支援金

「2026年、日本で独身税が始まる」との話題がひとり歩きしています。筆者のお客様からも「独身税って本当に始まるんですか?」「独身税が始まるの知らないです」というお声が多く聞かれます。

少子化対策の財源を確保するために創設される「子ども・子育て支援金」の制度が、独身者を含むすべての人が負担の対象になっていることもあり、そのような言葉が飛び交っています。

企業にも負担が増えるなど、少なくない影響がある新しい支援金制度について、正しく理解し、従業員にも説明できるようにしておきましょう。

 【この記事でわかること】

  • 子ども・子育て支援金って何?何のために創設されるの?
  • 子ども・子育て支援金を負担する人、金額の目安
  • 企業への影響と対策

※ この記事では「子ども・子育て支援金」のことを「支援金」と記載することがあります。

“独身税”こと「子ども・子育て支援金」の概要

「子ども・子育て支援金」とは、深刻な少子化・人口減少対策として2026年4月から導入される制度です。

支援金は社会保険料(医療保険料)に上乗せして徴収されます。そのため、高齢者や独身者、企業を含む全世代・全ての経済主体から幅広く拠出されます。

創設の目的と使途

2024年国内の出生数は68万6061人で減少の一途を辿っています。

「子ども・子育て支援金」制度は、こうした少子化の進行で、将来の働き手や消費者が減ることが予想されることから「社会全体で子育て世帯・若年層を支援する」ことで、少子化のトレンドを反転させることを目的につくられました。

政府が定めた少子化対策「こども未来戦略」にかかる予算3.6兆円のうち、約1兆円を今回の支援金で確保します。支援金は使い道が決められている「特定財源」です。

具体的には以下のような目的で使われます。

  • 児童手当の拡充
  • 妊婦のための支援給付(出産・子育て応援交付金)
  • 乳児等のための支援給付(こども誰でも通園制度)
  • 出生後休業支援給付(育休給付率の手取り10割相当の実現)
  • 育児時短就業給付(育児期の時短勤務の支援)
  • 国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランスなど)の育児期間の保険料の免除

関連記事:2025年4月から「育休の手取り10割」が実現。出生後休業支援給付金とは?

関連記事:2025年4月に始まった育児時短就業給付金って何?わかりやすく解説

負担者、徴収方法

2026年4月から子ども・子育て支援金は原則、すべての世代・すべての医療保険の加入者を対象に、医療保険料に上乗せして徴収されます。

つまり「国民皆保険」の日本では、会社員(被用者保険・協会けんぽ)、公務員、自営業者(国民健康保険)、高齢者(後期高齢者医療制度加入者)など、保険料を納めるすべての国民が負担します。

また事業主は支援金を従業員から天引き・納付する義務が発生します。

※ 「国民が負担」とされていますが、支援金は社会保険料に上乗せされて徴収されるため、事業主もその半分を負担します。

企業はすでに負担している「子ども・子育て拠出金」(後述)とは別に負担することになります。

金額と計算式(年収別でいくら負担が増えるのか目安)

支援金制度は2026年から2028年にかけて、段階的に構築していくとされており、金額も段階的に上がっていきます。

支援金額は加入する医療保険制度や所得、世帯の状況によって異なりますが、こども家庭庁では以下のような「医療保険加入者1人あたりの平均金額」を示しています。

出典:子ども・子育て支援金制度のQ&A|こども家庭庁

※ 上記の金額は本人負担分です。原則、事業主も同額を負担します。

※ 「加入者」には扶養されている子どもなどを含むため、実際に支払う保険料の目安は上記表内の「被保険者1人あたり」の金額です。

また年収別では以下のように試算されています(会社員などの被保険者保険、本人負担分のみ)。

年収2026年度
月額
2027年度
月額
2028年度
月額
200万円約200円約250円約350円
400万円約400円約550円約650円
600万円約600円約800円約1,000円
800万円約800円約1,050円約1,350円
1,000万円約1,000円約1,350円約1,650円

また社会保険料の計算は「標準報酬月額 × 保険料率」で行います。

支援金も「標準報酬月額 × 支援金率」で計算されます。支援金率は国が一律で示すとされています。

※ 「標準報酬月額」:被保険者(従業員)の毎月の給与や各種手当の合計を一定の区分に分けてまとめた金額。標準報酬月額に含むもの、含まないものは以下の記事でまとめています。

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「子ども・子育て支援金」と「子ども・子育て拠出金」の違い

「子ども・子育て拠出金」は1971年度からある制度で、児童手当や子育て支援を目的に企業が費用の一部を負担する拠出金です。当時は「児童手当拠出金」として創設され、2015年度に現在の名前になりました。

「拠出金」は厚生年金に加入している従業員を雇用する事業主が「全額負担」するもので、従業員個人の負担はありません。

今回の「支援金」とは全く別の制度で、「拠出金」を支払っていた企業は、今後はさらに「支援金」も負担することになります。

子ども・子育て支援金子ども・子育て拠出金
創設年度2026年1971年
負担者すべての医療保険の加入者
労使折半、個人+企業
厚生年金加入者の雇用主
全額事業主負担
徴収方法社会保険料に上乗せ、給与・賞与から天引きして納付事業主負担分の拠出金を納付
使途・児童手当の拡充
・出産・育児にかかわる各種手当 など
・児童手当の原資
・保育所整備や育児支援 など

デマ?”独身税が日本で導入”と言われる理由

見てきたように子ども・子育て支援金は、子どもを持つ家庭だけでなく、独身者を含むすべての社会保険加入者が負担します。

つまり、児童手当などの直接的な恩恵を受けられない独身者や、子どもがいない夫婦も負担者に含まれるため、実質「独身税」と呼ばれることが増えています。

ただし、例えば、かつてブルガリアなどの共産圏で採用されていた、結婚していない成人に収入の一定割合を課税したような「独身税」とは、そもそもの趣旨が異なります(これらの施策も人口増加を目的に行われることが多かったようですが、効果は限定的と評価され、廃止されています)。

独身者、高齢者、子育てが終わった世代……支援金は不公平という声

確かに社会全体で子育てを支援する仕組みである以上、負担が増える当事者としては、そのように感じてしまうことは無理もないかもしれません。

ただ「子どもを産み育てることは社会的・経済的に大きな投資」だということは事実です。

子ども・子育て支援金による少子化対策は、未来の働き手(子どもたち)を育てることであり、今の社会で暮らす全ての人の生活を守ることにつながっています

また高齢者や子育てを終えた世代も、かつては子育てをしており、今は社会の安定や医療、介護などの恩恵を受ける側に回っています。

「世代や立場を超えて負担を分かち合い、全員が恩恵を受ける未来をつくる」という制度の考え方を理解し、自分の言葉で、従業員に対しても丁寧に説明できるようにまとめておくと良いでしょう。

子ども・子育て支援金制度による企業への影響と対応

子ども・子育て支援金制度が始まることで、企業や担当者には以下のような影響があると予想されます。

  • 社会保険料負担の増加と経営の圧迫
  • 事務負担の増加
  • 給与計算・システム対応の複雑化
    保険料率の変更に応じた給与計算ソフトやシステムのアップデートが必要
  • 従業員への説明責任の増大
    「恩恵がない」「払いたくない」という従業員に対して制度の趣旨と重要性を説明する負担が増える

給与計算システムのアップデートなどの対応はもちろんのこと、新たに増える法人負担の試算を行い、経営への影響を早めに把握しておくことも重要です。

また先述のとおり従業員にわかりやすく説明するためのQ&Aや資料を用意したり、説明会の実施、負担が増える従業員へ福利厚生を充実させるなど、早めの対応を検討しましょう。

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    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや