まき社会保険労務士事務所
健康保険証が廃止へ。マイナ保険証と資格確認書について知っておきたいこと
従来の紙・プラスチックカードの保険証の発行は終了し、マイナ保険証の本格的な運用が始まりました。
2025年は新しい保険証制度への過渡期であり、今後は従業員から、さまざまな質問や不安の声が出てくると予想されます。
実務担当者はマイナ保険証の制度と「資格確認書」に関する正しい知識を身に着け、制度の変更にスムーズに対応しましょう。
【この記事でわかること】
- マイナ保険証の制度下における「資格確認書」とは？
- 実務における従来の手続きとの違いや注意点
- 従業員からよくある質問と回答例
目次
資格確認書とは？健康保険証廃止と制度の移行
2024年12月2日以降、従来の紙の健康保険証の新規発行は終わり、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」が基本的な保険証の使い方になりました。
しかし現実的にはマイナ保険証に対応できない人もいるため、マイナ保険証を持たない人、利用登録をしていない人のために「資格確認書」の制度が導入されています。
【健康保険証に関する重要なお知らせ】
— 厚生労働省 (@MHLWitter) August 1, 2025
国民健康保険にご加入の方など、一部の方は、昨日で健康保険証の有効期限満了を迎えました。
記載されている期限をご確認のうえ、期限が切れたあとは #マイナ保険証 か資格確認書をご利用ください。
※有効期限の記載がない場合は、12月1日まで使えます。 pic.twitter.com/4lk3LbgBSH
従来の健康保険証はいつまで使える？使えなくなったときの対応
従来の健康保険証は券面に記載されている有効期限までは引き続き利用できます。有効期限は加入先によって異なり、最長で2025年12月1日までとなっています。
例えば2025年7月末、75歳以上が入る「後期高齢者医療制度」の加入者全員と、自営業者などが入る「国民健康保険」の加入者の7割、約3,700万人の保険証の有効期限が切れました。
従来の健康保険証は2024年12月2日をもって、すでに新規発行を終えています。そのため、有効期限が切れて使えなくなったときは
- マイナ保険証
- 資格確認書
いずれかを使うことになります。
資格確認書の概要｜いつ、だれに届くのか？交付対象と送付時期
2025年7月下旬から10月下旬にかけて、マイナ保険証を使っていない被保険者の自宅宛てに特定記録郵便などで順次発送されます。地域ごとに発送時期が異なります。
出典：マイナ保険証をお持ちでない方へ資格確認書をお送りいたします｜全国健康保険協会
- 対象
健康保険の加⼊者（2024年11月29⽇までに資格取得/扶養認定）で、2025年4月30⽇時点でマイナ保険証を持っていない人 - 交付者
保険者（協会けんぽや健康保険組合など）が、申請不要で無償交付する - 有効期限
最長5年以内。期間を過ぎた場合は保険者が自動更新する
上記対象の従業員がいる事業者には、「対象者一覧表」が事前に送付されます。
そもそも資格確認書は、従来の健康保険証の代わりになる公的な証明書です。
氏名・生年月日・保険者番号・証明書番号・有効期限などが記載され、被保険者（従業員本人や扶養家族）が保険に加入していることを病院や薬局などで証明するためのカード型書類です（ざっくり「これまでの保険証」と同じ役割を持つイメージです）。
※「資格確認書」と2024年9月頃から順次発送された「資格情報のお知らせ」という書類は別ものです。
「資格情報のお知らせ」は健康保険組合の名前や、保険者番号などが記載された書類で、マイナ保険証利用者が、保険者番号などを簡単に確認できるようにするための書類です（「資格情報のお知らせ」だけでは保険診察は受けられません。あくまでマイナ保険証の補助書類です）
マイナ保険証と資格確認書の違い
| 項目 | マイナ保険証 | 資格確認書 |
|---|---|---|
| 使い方/ 役割 | ・マイナンバーカードを健康保険証として利用 ・窓口でカードを読み取って本人確認・資格確認を行う | ・保険証を持たない人向けの「健康保険証の代替証明書」 ・医療機関に提示して資格確認を行う |
| 対象者 | マイナンバーカード保有者 かつ 健康保険証利用登録済みの人 | ・マイナンバーカード未取得者 ・健康保険証利用未登録者 ・マイナ保険証が使えない人 など |
| 有効期限 | マイナンバーカードの 「利用者証明用電子証明書」の有効期限内 （発行日から5回目の誕生日まで） | ・有効期限内（最長5年以内） ・期限が近づくと保険者から再発行 |
| 本人確認 | 顔認証や暗証番号入力 | 書類確認のみ |
| メリット | ・顔認証など高いセキュリティ性 ・初めての医療機関でも医療情報を共有できる （より良い医療が受けられる） ・確定申告時の医療費控除の申請が簡単になる ・高額医療費制度の限度額認定証が不要 | ・マイナンバーカード取得が不要 ・対象者に自動で送付される |
| デメリット | ・マイナンバーカードの取得・登録が必要 ・システム障害時等は使えない場合がある （ただし、トラブル時に医療費が10割負担 になることはない） | ・有効期限の管理が必要 ・本人確認が厳格でない ・将来的にはマイナ保険証へ完全移行する見込み |
基本的にはマイナ保険証の方が、利便性・正確性・セキュリティの観点で優れています。
資格確認書は「マイナ保険証を持てない事情がある人」「一時的なトラブル時」の「限定的な代替策」と認識するのが良いでしょう。
実務にあたる人事労務担当者が知っておきたいこと
以下ではマイナ保険証の資格確認書の取り扱いについて、実務上、担当者が知っておきたいことをまとめます。
新入社員の資格取得時の手続き（変更点）
マイナ保険証の新制度では、新たな紙などの保険証の発行は廃止されました。会社が健康保険資格取得の手続きを行っても、健康保険証は発行されません。これまで行っていた従業員への保険証の配布作業はなくなります。
会社は新たに社会保険対象の従業員を雇用した場合、従来どおり「資格取得届」を提出します（電子申請も可能）。
関連記事：【担当者向け】社会保険の加入手続きに必要な書類、最新の加入条件を解説
関連記事：【簡単作成】GビズIDの基本とできること、取得方法
また資格取得届の「資格確認書発行要否」の欄にチェックを入れることで資格確認書が発行され、チェックがない場合は発行されません（↓下記画像⑩の欄）。
そのため、新入社員にはマイナ保険証を利用するか、もしくはマイナンバーカードを持っているかどうかを確認し、その意向・状況に応じて、資格取得の手続きをする必要があります。
新規加入の際は、事業所経由で従業員へ資格確認書を配布します。日本年金機構の混雑状況にもよりますが、2～3週間で資格確認書が事業所に送付されます。
新入社員自身が行う手続き
マイナ保険証を利用する手続きは、従業員自身が行います。担当者は登録を希望する従業員がスムーズに手続きできるよう、資料を提供したり、制度を周知するなど、サポートに努めましょう。
またすでにマイナ保険証を使用している新入社員の場合は、会社側が「資格取得届」の手続きを行うことで、その情報がオンライン資格確認システム上に登録されます（資格取得届の提出から5日程度で反映されますが、状況によって反映にかかる期間は異なります）。
マイナンバーカードと健康保険の紐付けの登録は、一度済ませれば転職や転居などによる保険者の変更があっても、自動的に新しい情報に切り替わります。利用者（従業員）が新たに登録しなおす必要はありません。
最新のマイナンバーカードの健康保険証利用登録状況は、マイナポータルで確認できます。
退職時の手続き（変更点）
従来と同様に、退職日に健康保険・厚生年金保険の「資格喪失届」を速やかに提出します。退職者には現在の健康保険が使えなくなることを伝えます。
先述のとおり、マイナ保険証を使用している退職者が以後、新たな健康保険に加入した場合は、自動で新しい情報に更新されます。
また資格確認書や従来の紙の健康保険証を配布している場合は、回収します。
資格確認書の早期の交付（紛失・破損など）が必要なときの対応
従業員から以下のような理由で早期の資格確認書の発行を求められたときは、「健康保険資格確認書交付申請書（協会けんぽ用）」を協会けんぽなど保険者へ提出します。資格確認書が事業所に送付されます。
- マイナ保険証を使っておらず、早急に資格確認書が必要なとき
- マイナ保険証の利用登録解除やマイナンバーカードを返納したとき
- 資格確認書を紛失したとき
- 資格確認書をき損したとき
マイナ保険証と資格確認書に関する従業員からよくある質問
以下では従業員からよく受ける「マイナ保険証と資格確認書」に関する質問と回答をまとめます。すでにこの記事で説明した内容も含みます。
マイナ保険証を使っているが、資格確認書は発行できるか？
原則、マイナ保険証を利用できる人に資格確認書は発行されません（高齢者や障害者など、特別な事情がある場合を除く）。どうしても発行が必要な場合は、マイナ保険証の利用登録解除や、カード返納などの手続きが必要です。
資格確認書はいつ、どこでもらえますか？
2024年11月29⽇までに健康保険に加入していた人は、2025年7月以降、自宅に郵送されます。
新規入社で新たに健康保険に加入するときは、2〜3週間で会社に届いたものを配布します。
資格確認書を早めにもらうことはできますか？
会社経由で保険者の窓口へ個別申請することで対応してもらえることがあります。
資格確認書をもらうには申請が必要ですか？
基本的に申請不要で自動的に交付されます。ただし、一部の健康保険組合や特別な事情（高齢者・障害者、マイナンバーカード紛失時など）では申請が必要な場合もあります。
紙の健康保険証はいつまで使えますか？
すでに交付されている紙の保険証は記載されている有効期限まで使えます。最長で2025年12月1日まで有効です。
紙の保険証の期限が切れてしまった場合は10割負担になりますか？
期限が切れても一定期間（2026年3月末まで）は資格確認ができれば医療機関での保険診療が可能な暫定対応があります。
参照：「有効期限切れの保険証でも医療機関を受診できます」 厚労省が暫定措置を通知 – 全国保険医団体連合会
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参考資料
まき社会保険労務士事務所 代表
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