【基礎】就業規則の作り方を丁寧に解説

2025年03月18日
就業規則の作り方

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就業規則を作らなければいけないけれど、どんなことを書けば良いのか、誰に相談、依頼したら良いのかわからない……と悩んでしまう担当者さんや会社の代表の声をよく聞きます。

就業規則を作ることは法律の義務を果たすためであることはもちろん、従業員が会社のためにより良く働けるようにするための重要なものです。

 【この記事でわかること】

  • そもそも就業規則って何?
  • 就業規則はどんな会社が作らないといけないのか
  • 就業規則を作った方が良い理由
  • 具体的な就業規則の作り方と注意点

就業規則とは

就業規則とは企業の賃金、労働条件、職場内の規律などを定めた規則集です。「会社のルールブック」と例えられることも多いです。

就業規則を作ることで労働条件が明確になります。従業員にとっては安心して働くために、企業にとっては円滑に運営するための重要なツールと言えます。

10人以上を雇用している企業は作成義務あり

就業規則はパートやアルバイトを含めて常に10人以上の労働者を使用している企業は作成が義務付けられています(労働基準法第89条)。

10人未満の企業は法律による作成の義務はありません。しかし労使間のトラブルを未然に防いだり、職場の秩序を安定させるためにも、作成するメリットは大きいです。実際に10人未満の多くの企業が就業規則を策定しています。

※ 労働基準法に定められた就業規則の作成義務に違反すると、30万円以下の罰金に処すると定められています。

就業規則には法的な効力がある

就業規則には以下のような法的な効力があります(労働契約法)。

効力
労働契約の最低基準を決める効力「基本給は○○万円以上」など
※ 就業規則で定めた基準に達しない労働契約は無効になる
労働条件を規律する(決める)効力「入社6ヶ月で○日の有給休暇を付与する」など
労働条件を変える効力「経営難の場合、退職金額を引き下げることがある」など

ただし、就業規則は法令や労働協約(会社と労働組合との間における、労働条件やルールの合意)に反した内容にはできません。

就業規則は自社で作れる

就業規則の作成者に決まりはなく、会社の人事労務担当者や代表が原案を作成しても問題ありません。

ただし就業規則の作成には労働関連法規への十分な理解と専門的な知識が求められ、また多くの時間と労力を費やすことから、社会保険労務士などの専門家へ依頼することが一般的です。

自社で作成する方法社会保険労務士に依頼する方法は後述します。

就業規則を定める理由やメリット

作成の義務に関わらず、就業規則を定めるべき理由やメリットには以下のようなことが挙げられます。

会社(経営者)と従業員、それぞれにメリットがあります。

  • 労働条件を可視化できる
    勤務時間、休日、給与などを明確にすることで、従業員は自身の権利や義務を理解して、安心して働けるようになる
  • 企業内のルールを明確化できる
    従業員の行動規範を定めることで、会社が期待すること、禁止することを明文化できる。業務命令や懲戒処分の根拠にもなる
  • 労使間トラブルを未然に防げる
    明確な規則があることでトラブルを防ぎ、またトラブルが起きたときにも就業規則に基づいて、公平に対処できる
  • 良い採用につながる
    整備された就業規則は企業の信頼や魅力を高め、求職者が安心して就職先に選べる
  • 助成金の条件を満たせる
    就業規則の作成や改定が申請の条件になっている助成金がある

就業規則への記載事項

就業規則に書かなければいけないことには以下の3種類があります。

絶対的必要記載事項

労働基準法で必ず記載しなければいけないと定められている事項です。

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

相対的必要記載事項

以下は、会社が独自に定めているものがあれば、記載しなければいけないとされています。

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品などの負担に関する事項
  4. 安全衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. その他全労働者に適用される事項

任意的必要記載事項

会社が自由に定められるものです。

  • 社是、企業理念
  • 服務規律
  • 入社、退社に関すること
  • 人事異動に関すること
  • 福利厚生に関すること など

就業規則の作り方

就業規則は以下の流れで作成します。

まず、職場の現状の把握を行い、目的を明確にした上で、就業規則の原案を作成します(原案は自社で作成するか、社会保険労務士へ作成を依頼します)。

その後、労働基準法の定めにより「従業員の過半数で組織する労働組合」または「従業員の過半数を代表する者」から意見聴取を行います。

従業員からの意見を踏まえ、必要に応じて修正して完成した就業規則を労働基準監督署に届け出ます。その際、従業員代表の意見書を添付します。

作成した就業規則は従業員に周知する義務があります。社内で掲示、配布するなど、閲覧できる状態にします。

就業規則の作成費用

就業規則の作成にかかる費用は「自社(自分)で作る場合」と「社会保険労務士へ依頼して作る場合」とで、大きく異なります。

自社で全て対応するなら、担当者の人件費しかかかりません。

一方で社会保険労務士へ依頼する場合、数万円から100万円程度と、幅広い料金がかかります。20〜30万円という料金で「作成」と「提出代行」を請け負っているところが多いようです。

依頼する際は見積もり料金に含まれる内容を精査し、自社に必要なサービスを選ぶようにしましょう。

※まき社会保険労務士事務所では就業規則の新規作成を10万円からお見積りしております(お見積りはこちらから)

自社で作る方法

社内に精通した従業員がいるなら、自社で就業規則を作成することもできます。

  • 費用がかからない
  • 社内に作成ノウハウが蓄積される

といったメリットがあります。

自社で作成する場合は厚生労働省が公開しているモデル就業規則(令和5年7月更新版)を使用するのが良いでしょう。

モデル就業規則|厚生労働省

モデル規則を使う際はそのまま流用するのではなく、自社の実情に合った内容にカスタマイズすることが大切です。

また簡易的な内容であれば各地の労働局※ に設置されている「総合労働相談コーナー」や、労働基準監督署※ の相談コーナー、労働条件相談ほっとラインなどで質問することもできます。

原案へのアドバイスやチェックなどをスポットで行っている社会保険労務士のサービスを活用するのも良いでしょう。

事業規模が大きい、職種が幅広い、変形労働制があるなど、複雑な職場の場合は、原案の作成から専門家へ依頼することをおすすめします。

社会保険労務士に依頼する方法

社会保険労務士に依頼することで以下のようなメリットを得られます。

  • 小規模な事業者は本業に集中できる
  • 労働関連法規に精通している専門家から適切な助言がもらえる
  • 法令を守り、またトラブルを未然に防げる内容の規則を作れる
  • 将来の修正の際にもスムーズなサポートを受けられる

一般的に社会保険労務士では、以下の流れで就業規則の作成をサポートします。作成から提出の代行までを行ってくれる社会保険労務士が多いです。

  1. 相談・ヒアリング
  2. 見積もり提示
  3. 企業の現状を詳細に確認
  4. 原案を作成、修正
  5. 労働基準監督署への提出

※サービスとしての就業規則の作成と労働基準監督署への提出の代行は社会保険労務士の独占業務です。

就業規則を作成する上での注意点

最後に就業規則を作成する上で気をつけたいポイントをお伝えします。

  • 実態に合った企業独自の「思い」を込める
  • 労使間で十分に話し合う
  • 依頼する際は業務範囲を確認する
  • 作成後も定期的に見直す

実態に合った企業独自の「思い」を込める

就業規則の内容は実態に則したものであることが大切です。

テンプレート・雛形を参考にすることは問題ありませんが、会社の現状とかけ離れた内容だと就業規則が効果を発揮しない形だけのものになってしまいます。

就業規則には会社の理念の下で従業員に「こんな働き方をして欲しい」という期待を込めることが重要です。

労使間で十分に話し合う

上記の「会社の思い」に対して、従業員の意見もしっかりと反映させる必要があります。形だけの「意見聴取」ではなく、対話を通じて従業員と一緒に作成していくことで、納得してモチベーションを高く保ちながら働ける規則を目指すのが理想です。

社労士に依頼する際は業務範囲を確認する

社会保険労務士に作成を依頼する際は、具体的に行ってもらえる作業範囲を明確に確認しましょう。

「就業規則の本則のみなのか、関連規程の作成も含むのか」「意見聴取のサポートや提出代行も行ってもらえるのか」などは、よく確認すべき事項です。

作成後も定期的に見直す

会社の状況(事業内容、従業員数、社内体制など)は時間とともに変化します。その変化に合わせて、定期的に就業規則も修正を行う必要があります。


就業規則は法律に迫られて作成されることが大半です。しかしその本質は従業員が気持ちよく働けて、会社にとっては安定した運営を行うために作成されるものです。

法律に則った内容で作成することはもちろんのこと、実情に合った、企業独自の就業規則を作成してくださいね。

岡山で就業規則の作成・相談について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや