人事評価制度はなぜ必要なのか。作り方や機能させるためのコツを解説

2026年01月20日

従業員数が増え、組織運営に限界を感じ始めたときは人事評価制度の導入を検討するタイミングです。また既存の人事評価制度が形骸化しており、本当に必要なのだろうか?と感じている管理職や人事労務担当者もいるかもしれません。

 【この記事のポイント】

  • 人事評価制度は、一定期間内の従業員の仕事の内容や成果、能力を評価して昇給や昇進、賞与などの処遇に反映させる仕組み。単なるランク付けではなく「人材育成」や「理念の浸透」などが目的
  • 工数がかかる、評価のバラツキや不公平感が生まれやすいといった注意点がある
  • 数字(結果)だけでなく、スキル(過程)や仕事への姿勢(意欲)も評価に加える方法もある
  • 一方通行の目標設定や評価ではなく、対話を通じて双方が納得して取り組むことが重要

【結論】人事評価制度は必要な理由。時間の無駄?廃止したほうが良い?

人事評価制度があることで従業員を公正に処遇でき、適切な人材配置、人材育成、モチベーションの向上、理念や方針の浸透といったメリットがあります。

人事評価制度に対して「時間の無駄」「廃止した方が良いのでは?」という意見を見かけることがありますが、人事評価制度がうまく機能していないことが原因かもしれません。

人事評価は人が行うため、どうしても心理的なバイアスなどの課題を抱えるものです。その前提で、絶えず制度を改善し続けることが大切です。

人事評価制度とは

人事評価制度とは、一定期間内の従業員の仕事の内容や成果、能力を評価して昇給や昇進、賞与などの処遇に反映させる仕組みです。企業はこの制度によって社員の成長を促し、適切な人材配置や公正な報酬決定を行うことができます。

人事評価と人事考課の違い

「人事評価」と似た言葉として「人事考課」があります。人事考課は給与や昇進といった処遇を決めるための「査定」的な側面が強い言葉です。

一方の人事評価は人材育成、能力開発といった、未来志向のより広義な概念を指し「人事考課は人事評価の一部」と位置づけられることもあります。

比較項目人事考課人事評価
目的賃金・昇進など処遇に特化した評価従業員の行動、成果、能力を総合的に評価し、育成や配置転換など幅広く活用する
評価対象成績、能力、勤務態度、貢献度など比較的具体的な指標行動、成果、スキル、成長性など多面的な観点
実施時期半期ごと(年2回)など短期的で頻度が多い年1回や通年など長期的・継続的な評価
概念の広さ狭い。人事評価の一部の機能として理解されることが多い広い。人事考課を含む上位概念として捉えられることが多い

近年では査定中心の文化から育成文化へと戦略的にシフトする考え方がトレンドになっています。

関連記事:人的資本経営とは?を簡単に解説。経営・人材戦略を連動させる具体的な進め方

人事評価制度の目的とメリット

人事評価は従業員のパフォーマンスを測るだけでなく、企業の経営戦略を推進して、組織を活性させる目的があります。人事評価制度は以下のように企業の成長に貢献します。

  1. 公正な処遇
    客観的な指標に基づく評価によって、給与や昇進の正当性を担保する
  2. 人材育成
    従業員が自身の強みと課題を客観的に把握して、自己成長のために何をすべきか理解できる
  3. 適切な人事配置
    蓄積された評価データから個々の強みを最大限に活かす「適材適所」の人員配置ができる
  4. モチベーションの向上
    「頑張りが正当に評価される」という認識が広がることで、高いパフォーマンスや組織への信頼が醸成される
  5. 理念や方針を浸透させる
    評価項目や基準に企業のビジョンや方針を反映させることで、従業員が日頃から意識して行動するようになる

人事評価の評価基準

多くの企業では人事評価を 「業績評価」「能力評価」「情意評価」という3つの基準により行っています。

評価基準概要評価例
業績評価評価期間内の業務目標に対する成果や達成度を評価する。
結果だけでなく、目標達成に向けたプロセスも評価に加えることが重要
・売上高
・目標達成率
・業務の量と質
・コスト削減量
能力評価業務遂行に必要とされる知識、スキル、専門性を評価する。
業務上でいかにその能力を発揮・活用しているかで判断する
・企画力、実行力
・リーダーシップ
・コミュニケーション能力
・専門知識、資格
情意評価業務に対する姿勢や意欲、勤務態度を評価する。
客観的な視点を保つ努力が必要。勤怠のような数値化可能な指標を取り入れる
・責任感
・協調性
・積極性
・規律性

人事評価制度の種類と選び方

人事評価制度は以下の3種類に大別できます。

種類概要特徴とメリット
目標管理制度(MBO)個人やチームの具体的な目標達成度に基づいて評価する制度成果重視で目標達成意欲が高まりやすい。企業の目標とも連動させやすい
コンピテンシー評価業務における行動や能力、仕事の進め方を基に評価する制度成果だけでなくプロセスや能力を評価し、育成にも活用しやすい
360度評価上司だけでなく、同僚、部下、自己評価など多方面の視点から評価を行う制度多面的で公平な評価が可能。フィードバックが豊富で自己成長を促す効果も期待できる

これらの制度は評価の軸や方法が異なり、どれかが優れいている、というものではありません。自社の文化や目的、課題に応じて適切な制度を選ぶことが重要です。

基本は成果を重視するMBOを導入し、状況に合わせて他の複数の制度を組み合わせて運用してみるのが良いでしょう。

人事評価制度のデメリットや課題

上記のとおり、人事評価制度には従業員の成長を促し、企業活動を促進するメリットが期待できますが、一方で以下のような課題やデメリットも想定されます。

  1. 「時間の無駄」「工数がかかりすぎる」
    準備や集計・集約、記録など、担当者・評価者・従業員全員に発生する業務負担が大きい
  2. 「やる気をなくす」「評価が不公平」
    評価者の主観や価値観に左右されやすく、評価のバラツキや不公平感が生まれやすい。評価に納得できないと従業員のモチベーション低下、不満につながるリスクがある
  3. 「経営戦略とズレている」
    定期的に修正、見直さないことにより、会社の経営戦略と評価制度の間にズレが生まれる

人事評価はこうした課題に直面するものだということを前提に、常に制度を改善し続けることが重要です。

人事評価が機能しない原因

上記のように評価者が無意識のうちに心理的なバイアス(偏見)に陥ることで、人事評価が機能しないことがあります。

以下のような代表的な「人事評価エラー」を理解し、対策を講じることが評価の質を高めるために重要です。

人事評価制度の作り方(例あり)

以下では一般的な人事評価制度の作り方を確認していきます。

  1. 評価のウエイトを決める
  2. 等級を決める
  3. 等級レベルの明確化
  4. 業務内容を評価項目へ落とし込み
  5. 評価項目ごとに求められる仕事内容や行動の決定

1. 評価のウエイトを決める

「評価のウエイトを決める」とは、「何をどれだけ重視して社員を評価するか」を、会社の価値観や仕事の特徴ごとに明確にすることです。

「この会社で一番重視してほしいポイントはココ!」というメッセージを実際の評価配分(=ウエイト)で社員に伝える役割があります。

例:営業の評価ウエイト

  • 売上・利益などの業績:50%
  • 顧客対応や提案の質:30%
  • チーム協力や行動姿勢:20%
    →「売上などの数字を最重要視する」という会社の姿勢を、ウエイトでわかりやすく示す

2. 等級を決める

会社が社員をグループ分けしてランク付けする(等級を決める)ことで、そのランクによって役割・責任・報酬の基準を設定します。

社員の成長を細かく支援するなら多めに、大きな成果を重視してシンプルにしたいなら少なめに設定するのが良いでしょう。

例:

  • 中小企業:3〜4段階のシンプルな等級
  • 中堅企業:5〜6段階に分けてキャリア形成に幅を持たせる
  • 大企業・技術系企業:専門性や責任範囲でさらに細かく分ける

3. 等級レベルの明確化

先に決めた等級ごとに「どんな仕事をするのか」「どんな責任があるのか」「何を達成すれば良いのか」という役割や成果のレベルを具体的に決めます。

例:マネージャー

  • 職務内容:部門戦略の立案・実行、部下のマネジメント
  • 責任範囲:部門目標の達成と組織全体の成果向上
  • 成果例:部門の売上・利益達成と組織風土の改善

4. 業務内容を評価項目へ落とし込み

自社で実際に行われている仕事の内容を整理し、評価の基準である「業績」「能力」「情意(やる気・態度)」の3つの視点に分けて具体的な評価項目を作ります。

例:技術職の場合

  • 業績:プロジェクト納期の遵守率
  • 能力:技術スキルの習得度、新技術の提案力
  • 情意:問題解決への意欲、後輩指導力 など

例:事務職の場合

  • 業績:正確な資料作成、業務効率
  • 能力:ITスキル、マルチタスク能力
  • 情意:責任感、コミュニケーション能力 など

5. 評価項目ごとに求められる仕事内容や行動の決定

先に決めた評価項目ごとで、各等級で求められる具体的な仕事内容や行動を決めます。具体的に示すことで、評価の公平性と客観性が高まり、評価される側も何を期待されているかが明確になります。

例:事務職の「コミュニケーション能力」

  • グレード3(中堅):
    日常の報告・連絡・相談(報連相)が適切に行え、誤解なく情報共有ができる
  • グレード4(リーダー):
    チーム内の意見調整や対外的な調整役を果たし、相手の感情や立場にも配慮したコミュニケーションができる
  • グレード5(管理職):
    部門や複数チーム間の複雑な調整や折衝をリードし、組織全体の円滑なコミュニケーションを促進できる

人事評価制度の運用ステップとコツ

作成した人事評価制度を効果的に運用する5ステップは以下のとおりです。

  1. 目標設定
    実現可能かつ挑戦的な目標を設定する。双方が納得できる内容にする
  2. 業務遂行と進捗管理
    上司は部下の進捗を定期的に確認し、サポートやアドバイスを行う。「監視」ではなく「伴走」する
  3. 行動記録
    評価者は期間中の部下の具体的な行動(成功事例や改善点など)を記録し、評価の信頼性を担保する
  4. 評価の実施
    評価シートを用いて自己評価と上司評価を行います。記録した行動事実に基づき、客観的な視点で評価する
  5. フィードバック面談
    評価結果とその根拠を具体的に伝え、次期の成長に向けた課題と改善策を共有する

運用で大切なポイントは一方通行の目標設定や評価ではなく、対話を通じて双方が納得して取り組むことです。

人事評価制度を機能させるためのポイント・コツ

以下の人事評価制度を機能させるポイントも参考にしつつ、自社にとって最適な制度の構築と運用を検討してみてください。

人事評価制度に関するよくある質問

以下では人事評価制度の作成、運用、見直しの際に、担当者からよくある質問と回答をまとめておきます。

人事評価制度を導入すべきタイミングはいつ?

絶対的な正解はありませんが、一般論として従業員が50人を超えたあたりや、組織が階層化したタイミングで検討するのが適切です。

また退職者が増えたり、給与体系が不透明になってきたなど、課題が顕在化したときも導入や見直しを考える時期と言えます。

人事評価の不服申立てはできるのか・されたときはどうする?

従業員は人事評価に不服申立てできます。申立てされた際は、本人に対して評価の根拠や基準の説明を実際の記録を根拠に伝えることが重要です。ただしここでも従業員と対立したり、一方的に押さえつけるのではなく、対話によって納得を得られるようにする姿勢が大切です。

従業員からの意見は企業にとっても評価制度の改善につながる良い機会と捉えましょう。

人事評価制度作成・運用のコストはどれくらい?

小規模な企業では年間数十万円から、中・大企業では数百万円のコストがかかることもあります。

制度の導入費用(専門家に依頼する場合)、人件費、システム運用費などが主なものです。

人事評価制度作成は専門家に依頼できる?

社会保険労務士や人事コンサルタントなど専門家に依頼できます。

専門家は企業理念や事業計画に沿った評価基準や運用フローを設計し、法令遵守や公平性確保の視点からアドバイスをしてくれます。

自社内だけより効率的かつ効果が期待できる制度を作れます。

人事評価制度について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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