社会保険労務士の登録区分(種別)と選び方を解説。費用、業務範囲

2026年02月15日
社労士 登録区分

社会保険労務士試験(社労士試験)に合格後、法律で定められた登録手続きを完了して初めて「社会保険労務士」を名乗ることができ、資格を活かした業務を行うことが許されます。

この登録手続きの際、自身のキャリアプランに応じて「開業」や「勤務」といった複数の区分から最適なものを選ぶ必要があります。

この記事では社会保険労務士の登録区分(種別)と業務範囲、選び方などを簡潔に解説します。

 【この記事のポイント】

  • 社会保険労務士の登録区分には「開業」「勤務」「その他」「社会保険労務士法人の社員」の4種類がある
  • 登録区分によってできる業務内容が異なる。働き方で登録区分を選ぶ
  • 社会保険労務士に登録している人で最も多いのは「開業」
  • 登録区分は変更することもできる

社労士の登録区分(種別)とは?4種類の特徴と違い

社会保険労務士として活動するためには、全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録し、活動拠点となる都道府県の社会保険労務士会に入会することが法律で義務付けられています。

詳しい手続きは以下の記事を参考にしてください。

関連記事:社労士試験合格後の流れを解説。社労士の登録、合格後のスキルアップ方法

その登録を行う際、自身の希望する働き方に応じて、4つの登録区分から適切なものを選ぶ必要があります。

以下では4つの区分「開業」「勤務」「その他」「法人社員」について、それぞれの特徴、業務範囲、メリットなどをお伝えします。

1. 「開業」登録

「開業」は「自分の名前で」独立して社会保険労務士業務を行うための登録区分です。

自身で事務所を開き、クライアントと直接契約を結び、自らの裁量で自由に業務を進められます。「開業」は営業活動から実務、経営まで全てを担うことになります。

2025年の「社会保険労務士白書」によれば、2025年3月31日時点における社会保険労務士の登録者数46,237人のうち、開業社労士は24,819人で約53%を占めています。

出典:社会保険労務士白書2025年版について|全国社会保険労務士会連合会

自由度が高い反面、収入はその人の能力と成果に直結します。

2. 「勤務」登録

社会保険労務士事務所、社会保険労務士法人、または一般企業などに雇用されて働く人が選ぶ区分です。

この区分で最も注意すべき点は、法律によって業務範囲に制限が定められていることです。

  1. 社労士事務所や社労士法人に勤務する場合
    所属する組織の業務しか行うことができず、個人で顧客と契約して業務を行うことはできない
  2. 一般企業に勤務する場合
    その勤務先企業内の社会保険労務士業務(例:自社の従業員に関する手続き)しかできない

「開業」登録と比べると、社会保険労務士としてできる業務に制限がかかります。

3. 「その他」登録

社会保険労務士の業務を一切行わない場合の登録区分です。

法律で定められた社会保険労務士の独占業務を行うことは一切できません。無資格者でも可能な相談・指導は行えますが、その際にも「社会保険労務士」と名乗ることは禁止されます。

社会保険労務士としての業務はできませんが、社労士会の会員として、研修への参加、最新の法改正情報の入手、他の社会保険労務士との人脈形成といったメリットを期待して登録する人が多い区分です。

将来の開業や転職に備え、知識やネットワークを維持したい方に適しています。

4. 「社会保険労務士法人の社員」登録

社会保険労務士業務を組織的に行う「社会保険労務士法人」の「社員(出資者)」としての登録です。一般企業でいう従業員とは異なり、法人の経営に関与する立場です。

「社会保険労務士法人の社員」は立場としては「開業社会保険労務士」的な性格を持ちます。複数の社会保険労務士が共同で事務所を経営する「共同経営者」のような立場であり、個人の開業よりも大規模な案件に対応したり、専門分野を分担したりできるメリットがあります。

ちなみに社会保険労務士法人の社員は「法人ごと」に登録されます。そもそも社会保険労務士法人の社員は社会保険労務士でなければならないので、個人ではすでに「開業」「勤務」などで登録しています。そのため、新規で社会保険労務士に登録する人はこの区分には該当しません。

登録区分別 活動範囲の比較表

これまでの解説をもとに、4つの登録区分で「できること」「できないこと」を一覧表にまとめました。

◯=可能、✗=不可

登録区分主な活動形態自身の名前での業務契約所属組織外の業務社労士と名乗っての相談業務
開業独立事務所の運営
勤務企業・事務所に勤務
※ 所属組織の業務として
その他社労士業務は行わない
法人社員社労士法人の運営に関与
※ 法人として

※ 法人として

社会保険労務士の登録区分に関するよくある質問

登録区分を検討する際によくある疑問と回答を簡潔にまとめています。

区分ごとの登録割合はどんな感じですか?

2025年3月31日時点における登録者数の内訳は以下のとおりです。

区分登録者数
開業24,819
法人社員4,127
勤務等17,291
合計46,237

出典:社会保険労務士白書2025年版について|全国社会保険労務士会連合会

社会保険労務士の登録区分は後で変更できますか?

変更可能です。社会保険労務士としての働き方が変わった時は、速やかに変更手続きを行う必要があります。変更手続きは各都道府県の社会保険労務士会で行います。

登録区分ごとに入会(登録)料金は異なりますか?

異なります。入会する都道府県の社会保険労務士会ごとに差があります(2026年1月現在)。

都道府県開業勤務等
その他
東京都入会金 5万円
年会費 9.6万円
入会金 3万円
年会費 4.2万円
岡山県入会金 5万円
年会費 8.04万円
入会金 4万円
年会費 5.04万円
大阪府入会金 15万円
年会費 8.4万円
入会金 10万円
年会費 4.2万円

社会保険労務士の「登録区分」と「業務区分」は別の概念ですか?

はい、登録区分と業務区分は異なるものです。

社会保険労務士の業務は、社会保険労務士法で定められた「1号業務」「2号業務」「3号業務」の3つに分けられ、これらは社会保険労務士だけが報酬を得て行える独占業務です。

業務区分主な内容具体例
1号業務労働・社会保険の手続き書類作成・提出代行新入社員の保険加入届、退職資格喪失届、傷病手当金請求、助成金申請
2号業務就業規則・帳簿書類の作成就業規則作成・変更、労働者名簿・賃金台帳作成
3号業務労務管理に関する相談・指導・助言残業規制対応、ハラスメント対策、年金相談

社会保険労務士の登録区分と混同しないようにしましょう。

特定社会保険労務士とはなんですか?

特定社会保険労務士とは、通常の社会保険労務士資格に加えて、労働紛争の代理業務を行う権限を持つ専門家です。

  • あっせん代理
    労働基準監督署に労使間の紛争解決を申し立てるときの代理人として対応​
  • 調停代理
    紛争調停委員会の手続きで、労働者や企業の代理人として交渉​
  • 仲裁廷代理
    労働紛争の仲裁手続きで代理人として活動​

通常の社会保険労務士の業務は「相談・指導」に留まりますが、特定社会保険労務士は企業と労働者のトラブルを「代理人」として解決に導く業務を行えます。

特定社会保険労務士になるためには社会保険労務士としての実務経験を積んだ後に特別研修を受講し、年に1回行われる「特定社労士試験」に合格する必要があります。過去の合格率は55%前後です。

この記事の執筆者
まき社会保険労務士事務所 代表
社会保険労務士 牧 あや