2026年4月、在職老齢年金の停止基準額が65万円に引き上げでより働きやすく

2026年02月20日
在職老齢年金制度の見直し2026

2026年4月から在職老齢年金制度が見直され、年金支給停止の基準額が65万円に引き上げられます。

制度の仕組みや改正の背景について解説し、65歳以上の従業員と企業がとるべき対応を解説します。

 【この記事のポイント】

  • 在職老齢年金制度とは「年金を受給しながら働く高齢者」の賃金+厚生年金が一定額を超えると、受け取れる年金額が下がったり停止されたりする制度
  • 2026年4月から在職老齢年金制度の年金支給停止の基準額が65万円に引き上がり「働きたいが、年金額が下がるなら仕事を控えたい」高齢者が働きやすくなる
  • 高齢者向けの給与・賞与ルールを事前に整え、それぞれの従業員の考えを把握しておくとスムーズに対応できる

2026年の在職老齢年金制度の見直しとは?変更点と影響の全体像

在職老齢年金制度とは、年金を受給しながら働く高齢者が、一定額以上の報酬を得ている場合に、厚生年金の一部または全額が支給停止される制度です。

※基礎年金と加給年金は減額の対象外なので、全額受け取ることができます。

2026年4月から「一定額以上」の基準額が65万円に引き上げられ、「年金をもらいながら働き続けたい」方をより後押しする制度となります。

在職老齢年金の仕組みと現行ルール(支給停止の考え方)

在職老齢年金制度は報酬のある方は年金制度を支える側に回ってほしい、という考え方からこの制度が設けられました。

賃金と年金額を合算する基準値は、その年によって変動します。2024年度の基準値は、1ヶ月の賃金+厚生年金の合計が50万円以上、2025年度は同51万円以上でした。

なお、1ヶ月の賃金は、ボーナスを含む年収の12分の1で計算されます。毎月の月収だけでなく、年収ベースで賃金を計算し、基準値を超えるかどうかを計算することが必要になります。

在職老齢年金制度見直しの背景・目的

平均寿命・健康寿命が上がっている中、働き続けたい高齢者は増加しています。

企業としても、人材確保や技能継承のために、高齢者に働き続けてほしいと考えているニーズがあります。

その結果、高齢者の就業率は年々上昇しており、2023年の65歳〜69歳の就業率は53.5%を占めています。

出典:令和6年版 高齢社会白書|内閣府

一方で、在職老齢年金制度により「受け取れる年金額が減るなら仕事時間を抑える」と考えている方もいます。

内閣府の調査によると、受け取れる年金額が減らないように「労働時間を調整する」と考えている方は31.9%でした。

出典:「生活設計と年金に関する世論調査」の概要|内閣府

在職老齢年金制度が労働意欲を下げる原因とならないように、働きたい高齢者・働いてほしい企業の双方のニーズに応える形で、在職老齢年金制度の見直しを行い、上限額を引き上げることになりました。

関連記事:65歳までの雇用が完全義務化に。高年齢者雇用安定法の改正内容を解説

65歳以上の従業員と企業の制度に影響が出るため対応が必要

在職老齢年金制度の見直しの影響を直接受けるのは「65歳以上で老齢厚生年金を受給しながら働いている従業員」です。

しかし、高齢者を雇用している企業も、対応が必要となります。再雇用制度や継続雇用制度を導入している企業では、賃金水準や賞与設計の見直しが必要になる可能性があります。

個別調整によって高齢者の処遇を決めている場合は、制度変更によって「これまで抑えていた給与をどうするか」「役職や手当を見直すべきか」といった判断が求められる場面が増えると考えられます。

新基準における年金支給停止(一部減額)の計算例

2026年4月以降の年金支給停止基準額は「65万円」です。2026年1月下旬に、正確な金額が決定しました。

冒頭でお伝えしたとおり年金の支給停止が判断される基準額は1ヶ月分の賃金と老齢厚生年金の月額(基本月額)の合算額です。

基準額=1ヶ月分の賃金(賞与を含む年収の12分の1)+ 老齢厚生年金の月額(基本月額)

老齢基礎年金(国民年金)や加給年金の受給分は基準額には含まれません。

1ヶ月分の賃金(賞与を含む年収の12分の1)

「1ヶ月分の賃金」は「月収」と「賞与を12で割った金額」の合算で計算されます。

正確には月収は「標準報酬月額」、賞与を12で割った金額は「標準賞与額」で計算します。

1ヶ月分の賃金 = 標準報酬月額 + 標準賞与額

標準報酬月額、標準賞与額ともに、実際の報酬額を厚生労働省が定めた一定の区分に分けて計算されます。

例えば報酬月額が29万円の方でも、30万円の方でも標準報酬月額は「30万円」となります。

厚生年金保険の等級標準報酬月額報酬月額
1930万円29万円以上〜31万円未満
2032万円31万円以上〜33万円未満
2134万円33万円以上〜35万円未満

出典:東京支部の保険料額表|協会けんぽ

標準賞与額は、実際の税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てて計算します。ボーナスや期末手当のような形で、年3回以下の回数で支給されるものを指します。

例えば報酬月額が33万円(標準報酬月額34万円)、年間の税引前賞与額が144万円だった場合は

34万円+(144万円÷12ヶ月)= 46万円

46万円が1ヶ月分の賃金になります。

老齢厚生年金の月額(基本月額)

「老齢厚生年金の月額」(基本月額)は老齢厚生年金から配偶者などがいる場合に加算される「加給年金額」を差し引いた金額で計算されます。

老齢厚生年金の月額(基本月額)=老齢厚生年金の月額 – 加給年金額

例えば老齢厚生年金が120万円/年、加給年金額が40万円/年で、年間160万円の年金を受給しているケースでは

(160万円-40万円)÷ 12ヶ月 =10万円

10万円が老齢厚生年金の月額(基本月額)となります。


以上、仮に1ヶ月分の賃金が46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円だった場合、その合算額は56万円になりますが、2026年4月以降の新基準(65万円)では老齢厚生年金が満額もらえ、さらに1ヶ月分の賃金が9万円増えても年金が減らなくなります。

企業が取るべき対応と実務準備のポイント

在職老齢年金の新基準の実際の運用は2026年4月からスタートしますが、事前に準備しておくことで、実務負担を大きく減らすことができます。

あらかじめ社内ルールを整備しておくとスムーズ

人事・経理担当者としては、高齢者向けの給与・賞与ルールを整理し、年金制度との関係を説明できる体制を整えておくことが重要です。

特に、制度変更があった場合にどこを見直すのか、社内で共有できるルールを明確にしておくと、対応がスムーズになります。

従業員説明でよくある質問への対応

従業員に説明する際には、「いつから変わるのか」「自分の年金はどうなるのか」といった質問が想定されます。

現時点で分かっていることと、未確定な点を整理して伝えましょう。

そして、在職老齢年金制度に対しての考え方も、従業員によって異なるケースも考えられます。

「年金が満額支給される範囲で働きたい」「年金を気にせず働きたい」どちらの場合でも、丁寧に説明し、理解を求めましょう。

対応が難しい場合は、社会保険労務士に相談しながら進めることをおすすめします。

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    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや