就業規則を変更するには?手続きの流れと注意点を解説

2025年12月24日
就業規則の変更

法律の改正や周囲の環境・自社の状況の変化によって、就業規則の内容を見直さなければいけないことがあります。

就業規則は労働者の拠り所となる「会社のルールブック」です。内容を変更する際は正確で透明性の高い手続きが求められます。

 【この記事のポイント】

  • 就業規則は法改正や会社の成長など、時代や環境の変化に合わせて鮮度を保つアップデートが不可欠
  • 変更手続きは「変更案の作成」「労働者代表への意見聴取」「労基署への届出」「従業員への周知」の4ステップ
  • 労働者の意見を聞くことは義務だが、全員の同意は必須ではない。ただし、強引な変更は信頼失墜とトラブルの元になるため、誠実な対話が重要

就業規則変更の必要性

就業規則は企業の賃金、労働条件、職場内の規律などを定めた規則集です。

10人以上の労働者を雇用している企業は作成が義務付けられますが、それ以下の規模であっても、従業員が安心して働けるために作成している企業は多いです。

関連記事:【基礎】就業規則の作り方を丁寧に解説

就業規則は一度作成したら終わりではありません。法改正や社会情勢の変化に応じて、適宜、見直しが必要です。就業規則を更新することで、法令遵守、労使間の信頼関係の強化とトラブルの防止、企業の信頼性の向上が期待できます。

就業規則を変更すべきタイミング

以下のようなときに、就業規則の変更を検討します。

  • 法改正時
  • 勤務形態・制度の新設・変更時
  • 経営状況が変化したとき

法改正時

昨今は働き方改革の関連法や育児・介護休業法、高年齢者雇用安定法など、毎年のように大きな法律の改正が行われます。

例えば、2025年4月から施行された「高年齢者雇用安定法」の改正では、企業は希望者全員に65歳までの雇用機会を確保する義務が課せられました。

関連記事:65歳までの雇用が完全義務化に。高年齢者雇用安定法の改正内容を解説

この改正では「定年の引き上げ」や「継続雇用制度の導入」などの具体的な対策が求められており、対応するためには就業規則を変更する必要があります。

勤務形態・制度の新設・変更時

リモートワークやフレックスタイム制、副業・兼業制度など、多様な働き方に対応するとき、就業規則の見直しが不可欠です。

これまでになかったルールや手続きを就業規則に明確に示すことで、従業員は安心して働くことができます。

経営状況が変化したとき

会社が成長して規模が大きくなると、就業規則が合わなくなってくることがあります。こうしたケースでは、規則を実態に合わせて変更します。

逆に経営が厳しくなり、賃金を引き下げたり、手当を廃止したりするときも、就業規則の記載を見直します。

また社会の変化に伴い、ハラスメントや懲戒処分に関する規定の見直しが必要になることもあります。このように就業規則の変更は、企業の危機管理的な側面もあります。

変更手続きの流れ

就業規則の変更は以下の手順で行います。

変更案の検討・作成

就業規則の変更が必要になったとき、まずはどの条文をどのように変更するかを具体的に検討します。

この際、現行の就業規則と新しい規則を比較するために「新旧対照表」を作成すると、変更点が一目でわかり、効率的に作業を進められます。

▼新旧対照表の例

条文 改正前 改正後
第◯条 第◯条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から6か月間を試用期間とする。 第◯条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から3か月間を試用期間とする。
第◯条

新設

(職場のパワーハラスメントの禁止)
第◯条 職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

※ 後述する届出の際、新旧対照表は必ずしも提出する必要はありませんが、変更箇所がわかる形で提出することが求められるため、作成すると親切です。

労働者の代表からの意見聴取

就業規則を変更する際は労働者の過半数が加入する労働組合(労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する人)から意見を聴取し、意見書としてまとめることが義務付けられています。

労働者が自分たちの労働条件に意見を述べる機会を提供することは、労働者の権利を守り、職場の透明性を高めるためにも重要です。

意見書に特定の様式はありませんが、以下の内容を記載します。

  • 意見を求められた日付
  • 会社名、代表取締役の氏名
  • 労働者代表の意見
  • 労働組合の名称、労働者代表の職名・氏名
  • 労働者の過半数代表者を選出した方法

出典:福井労働局

なお、意見書には労働者の代表の意見を記載することが重要であって、仮に代表者から「反対」「同意しない」といった意見が出た場合でも、その旨を記載してもらえば、手続き上は問題ありません。一部の労働者が納得せず、同意しないということは十分に考えらます。

ただし合理性に欠いた内容で、大半の労働者の理解を得られないまま就業規則を変更したとしても、労使トラブルや生産性、社会的な信用の低下は免れません。特に労働者に不利益になる内容に変更するときは、後述の 「不利益変更」を参考に丁寧なコミュニケーションが欠かせません。

また、労働者の代表から意見書すら提出してもらえない場合は、その旨を「報告書」として提出します。なお、特に意見がない場合は、特に意見なし、と記載します。

変更届の作成と労働基準監督署への提出

変更届を作成し、所轄の労働基準監督署に提出します。

変更届の様式は任意です。以下のような書類を作成し、提出します。

出典:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省

必要書類 ・就業規則変更届(様式任意)
・労働者代表からの意見書
・変更後の就業規則
・(変更点の新旧対照表)
提出先 各事業所の所在地を管轄する労働基準監督署
提出方法 ・持参
・郵送
・電子申請
提出期限 明確な規定なし
(原則、変更内容の施行前)

参考:岡山の労働基準監督署一覧

提出は電子申請がおすすめです。

関連記事:【簡単作成】GビズIDの基本とできること、取得方法

変更内容の従業員への周知

就業規則を変更した際は、その内容を従業員に周知することが義務付けられています。適切に周知されていない就業規則は無効とされる可能性があります。

主な周知の方法は以下のとおりです。

  • 掲示
    変更後の就業規則を、職場の見やすい場所に掲示する
  • 書面交付
    変更後の就業規則を印刷し、各従業員に直接手渡す
  • データ共有
    社内イントラネットや共有ファイルで、変更後の就業規則をデジタル形式で配布する

労働基準監督署に変更届を提出したあとは、できるだけ速やかに周知するのが望ましいです。

補足:複数の事業所がある場合

就業規則は「事業所ごと」に適用されます。

複数の事業所を持つ企業が就業規則を変更する際は、本社での変更に加え、各支店・店舗ごとに所轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。意見聴取も同様です。

※ すべての事業所の就業規則の内容が同じである場合に限り、「本社一括届出」制度が利用でき、本社を管轄する労働基準監督署にまとめて届出ることが認められています(その場合も、すべての事業所の提出書類は必要です)。

就業規則変更の際の注意点「不利益変更」

企業が一方的に労働者にとって不利益な条件の就業規則を作成したり、変更することは、原則認められていません(労働契約法第9条)。

例)賃金の引き下げ、手当の廃止、労働時間の変更、休業取得の厳格化 など

このような変更は労働者との合意が必要ですが、合理的な理由がある場合にのみ、例外的に合意を得られなくても認められることがあります(同法第10条)。

「合理性」の判断基準、トラブルの回避策

「合理性」は以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 労働者の受ける不利益の程度
    変更によって労働者がどの程度の不利益を被るか。例えば賃金の減額幅が大きければ、その変更の合理性は低い
  • 変更の必要性
    変更を行う必要性がどの程度あるか
  • 変更後の内容の相当性
    変更後の規則が社会的に妥当であるか。同業他社と比較して合理的な内容であるか
  • 不利益を避けるための対応
    不利益を避けるための十分な努力がなされたか。代替措置は設けられているか
  • 労働組合等との交渉の状況
    労働組合(労働者の代表)との交渉が行われたか

過去の判例では不利益変更が合理的と認められたものもあれば、合理性を欠き無効と判断されたものもあり、具体的な状況に依存します。

不利益変更をせざる得ない場合、労働者との十分な話し合いは避けられません。

先述のとおり、手続き上は労働者全員の同意を得る必要はありませんし、それは難しい部分もあるかもしれません。しかし、トラブル防止のためには、可能な限り従業員から同意を得ようとする姿勢を見せなければいけません。代替措置や経過措置を設けるなど、労働者と信頼関係を築きながら慎重に検討するよう努めることが大切です。

就業規則の変更について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

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    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや