同一労働同一賃金とは?最新の情報、企業が取るべき対応

2025年12月17日
同一労働同一賃金

同じ内容や責任の仕事の場合、正社員と非正規雇用労働者(非正規労働者)とで待遇差をつけてはならない「同一労働同一賃金」は2021年の全面施行から5年が経ち、広く浸透してきました。

「あらためて同一労働同一賃金の要件を正確に理解したい」「社内制度の見直しや従業員への説明の参考にしたい」という担当者に向けて、制度を基本から丁寧にお伝えします。

 【この記事でわかること】

  • そもそも同一労働同一賃金とは?
  • 合理的・不合理な待遇差の実例
  • 同一労働同一賃金を導入するための手順

同一労働同一賃金の現状・最新動向

同一労働同一賃金は施行から5年後となる2025年頃から制度の見直しが始まっており、ガイドラインの改正や待遇差説明の義務の強化、行政の指導強化などが議論されています。

2025年11月「事業主が守るべきガイドライン」の見直し案を公開

現行のガイドラインには基本給や通勤手当について記載がありましたが、今回、最高裁判決で性質や目的が示された以下の待遇が新たに盛り込まれました。

  • 退職手当
    • 職務内容などにより待遇差が「不合理と認められる」場合もある
  • 家族手当
    • 継続的な勤務が見込まれる非正規労働者には「同一の家族手当を支給しなければならない」
    • 労働契約の更新を繰り返していない人は不支給でも「問題とならない」
  • 住宅手当
    • 正規と同様に転居を伴う配置変更がある場合は「同一の手当を支給しなければならない」
  • 賞与
  • 無事故手当
  • 病気休職(休暇)
  • 夏期冬期休暇

またこれまで同一労働同一賃金に該当しなかった「無期雇用フルタイム労働者」も正社員との待遇差をなくす対象とされ、待遇差には合理的な説明が求められるようになります。

※ 無期雇用のフルタイム労働者は有期雇用から転換した際、それまでの雇用条件がそのまま引き継がれたことで、給与や福利厚生に待遇差が残っていることがあります。

出典:第27回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用環境・均等分科会 同一労働同一賃金部会|厚生労働省

同一労働同一賃金の基本

「同一労働同一賃金」とは、「雇用形態にかかわらず、同じ仕事をする労働者は同じ賃金を得るべき」 という原則です。

パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などの「非正規雇用労働者(非正規労働者)」を保護して、正社員との不合理な待遇差を解消することを目的としています。

同一労働同一賃金は2020年4月1日に大企業で施行され、2021年4月1日からは中小企業にも適用されました。

導入された背景

日本の労働市場では、正社員と非正規労働者の間で賃金や待遇の差が広がることで、不公平感を抱かれたり、トラブルが起こりやすいです。多様な働き方が広まり非正規労働者が増えるなかで、この格差を是正し、労働者の安心と公平を守る必要が高まっていたことが、制度導入の背景にあります。

法的根拠と原則

同一労働同一賃金は単なる努力目標ではなく、法律に基づいた企業の義務として明確に定められています。

法律根拠原則
パートタイム・有期雇用労働法
(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
第8条「不合理な待遇差の禁止」
職務内容、配置の変更範囲、その他の事情を考慮し、その違いに応じた、合理的でバランスの取れた待遇を確保する。不合理な待遇差を設けることは禁止

第9条「差別の禁止」
職務内容や配置変更の範囲が正社員と全く同じ非正規雇用労働者については、非正規雇用であることを理由に差別的な取り扱いをすることを禁止
労働者派遣法
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
第30条の3「不合理な待遇の禁止」
派遣労働者について派遣先で同じ仕事をする正社員などと不合理な待遇差をつけることを禁止

参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov 法令検索

参照:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov 法令検索

「均衡待遇」と「均等待遇」

同一労働同一賃金の重要な考え方に「均衡待遇」と「均等待遇」があります。

  • 均衡待遇(不合理な待遇の禁止)
    正社員と非正規労働者の『職務内容(仕事の内容と責任の度合い)』や『職務内容・配置の変更の範囲(異動や役職の有無など)』が異なる場合にその違いに応じて合理的な待遇差が認められるという考え方。翻って不合理な待遇差は認められない
  • 均等待遇(差別的取扱いの禁止)
    非正規労働者が、正社員と『職務内容』や『職務内容・配置の変更の範囲』が同じ場合に、賃金や手当などの待遇も全く同じにしなければならないという考え方

つまり「仕事内容や責任が違うなら待遇が全く同じでなくてもいいけど、その差は正当な理由が必要で、仕事内容も責任も同じなら待遇も一緒じゃなきゃダメ」という考え方が同一労働同一賃金の根幹を成しています。

「合理的な待遇差」とは?厚生労働省のガイドライン

上記の「均衡待遇」でも触れたとおり、同一労働同一賃金を運用するときに難しいのが、その待遇差が合理的か不合理なのかを判断することです。

厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、待遇差の妥当性を判断するときの考慮要素として、以下の3点を挙げています。

要素内容
① 職務内容
『業務の内容』+『責任の程度』
「業務の内容」
・業務の種類(職種)の比較
・業務内の「中核的業務」を比較
(その職務に不可欠な要素である業務)

例:
・業務の種類「販売員」「営業」「Web制作」
・販売員の中核的業務→レジ、品出し、顧客対応など

【責任の程度】
著しく異ならないかどうかを判断

例:単独で契約できる金額の範囲、管理する部下の人数、業務の成果について求められる役割 など
② 職務内容・配置の変更範囲転勤、人事異動、昇進などの有無や範囲

例:正社員もパートも全国異動はない
→配置の変更範囲は同じ
③ その他の事情・職務の成果、能力、経験
・合理的な労使慣行、労使交渉の経緯 など

待遇差をつけるときは、これらの要素を踏まえ、合理的と言えるかどうか判断します。

対象となる非正規労働者(パートタイム・有期雇用労働者・派遣労働者)

以下の3種の労働者が非正規労働者と定義されて、正社員との待遇差をなくす対象とされています。

  • パートタイム労働者
    1日の所定労働時間や週の所定労働時間が正社員より短い人。いわゆる「パート」「アルバイト」
  • 有期雇用労働者
    契約期間に「○ヶ月」「○年」といった定めがある人。契約社員・嘱託社員・期間限定の再雇用者など
  • 派遣労働者
    派遣会社(派遣元)に雇用され、別の会社(派遣先)で働いている人

企業間、正社員同士、非正規労働者同士の待遇差をなくすものではない

同一労働同一賃金は「同じ企業・団体内」での正社員と非正規労働者の待遇差を是正するためのものです。別の会社同士の待遇差を埋めるためのものではありません。

また正社員同士・非正規労働者同士の待遇差も違法にはなりません。役職や勤続年数、職務内容などで賃金が異なることは通常の範囲です。

あくまで「正社員と非正規雇用者の不合理な差別をなくすこと」が同一労働同一賃金の目的です。

同一労働同一賃金の対象となる項目と待遇差(チェックリスト)

「同一労働同一賃金」という言葉だけを見ると、賃金(給与、賞与)だけが対象だと思われがちですが、この制度では労働者が企業から受けるあらゆる「待遇」が包括的に対象とされています。

福利厚生や教育機会など、働く上でのすべての条件において不合理な格差を設けることが禁じられています。

(冒頭の説明のとおり、各種手当もガイドラインに明記されるようになります。)

待遇「合理的」な例「不合理」な例
基本給・正社員は転勤や部署異動があるが、パートにはないため基本給に差がある・業務内容も責任も同じだが「非正規」という理由だけで基本給が低い
・現在の業務と関係ない過去の経験を理由に、正社員の基本給を高く設定する
賞与・正社員の賞与は業績連動で支給するが、ノルマのないパートには業績に応じて一定額を支給する・正社員には全員に賞与を支給するが、非正規社員には一切支給しない
各種手当・正社員は深夜・休日勤務手当や役職手当があり、非正規はそれらの勤務を行わないため手当がない・同じ時間数・内容の深夜労働を行ったのに、非正規社員の深夜手当の割増率が低い
福利厚生・正社員は社宅利用や退職金制度があるが、パートは短時間勤務のため社宅利用対象外や退職金は制度外・正社員のみが社員食堂や休憩室を利用でき、非正規社員は利用できない
・正社員に適用される病気休職制度を、非正規社員には認めない
教育訓練・広範な職務を担う正社員には多様な教育訓練を、担当業務が限定的な非正規社員にはその業務に必要な訓練を行う・同じ職務内容であるにもかかわらず、正社員にのみスキルアップ研修の機会が与えられる
その他・正社員は年次有給休暇の他に長期休暇があり、パートは勤務日数に応じて付与
・法律に基づく健康診断は全員対象だが、追加の人間ドックなどは正社員向けに行う
・同じ勤務日数・業務内容なのに、非正規だけ有給取得が制限されるなど差別的に扱う
・健康診断の頻度や内容を不公平に限定し、非正規労働者だけ最低限にとどめる

同一労働同一賃金の企業への影響

同一労働同一賃金の制度は企業にどのような影響をもたらすのか、企業・事業主側のメリット・デメリット、さらに労働者側の視点からも考えます。

企業・事業主側の主なメリット

企業・事業主側には以下のようなメリットが期待されます。

  • 企業イメージの向上と人材確保
    公平な待遇を保証する企業は「従業員を大切にする会社」として社会的な信頼性が高まる。採用市場でも有利にはたらく
  • 従業員のスキルとモチベーション向上
    従業員全体のスキルが底上げされる。仕事のモチベーションを高め、組織全体の生産性向上に貢献する
  • 離職率の低下とチーム意識の強化
    非正規労働者の早期離職を防げる。福利厚生施設の共同利用など、部門や雇用形態を超えたコミュニケーションを活性化させ、組織としての一体感を醸成する

企業・事業主側の主なデメリットと課題

逆に同一労働同一賃金の制度には、企業・事業主側にとって金銭的、労力的な負担がかかります。

  • 人件費の増加
    非正規労働者の待遇を改善することで短期的には人件費が増える。単なるコスト増ではなく、全従業員の業務内容や生産性を見直す絶好の機会と捉える
  • 人事・給与制度の再構築にかかる労力
    既存の人事制度や給与体系を全面的に見直すプロセスには、多大な時間と労力がかかる。この機会を活かして自社の人材戦略を再定義し、より競争力のある組織を構築することが重要

労働者側からの視点

労働者側の視点からメリットやデメリットを理解しておくことも大切です。

【メリット】

  • 待遇の改善とスキルアップ
    収入の安定や向上が期待できる。正社員と同様の教育訓練の機会を得られれば、自身のキャリア開発につながる
  • 多様な働き方の選択とモチベーション維持
    ライフスタイルに合わせてパートや有期雇用といった働き方を選びやすくなる。ワークライフバランスを実現しながら、高いモチベーションで働き続けることができる

【デメリット】

  • 雇用機会の減少の可能性
    企業が人件費の増加を懸念して、非正規の採用を抑制したり、全体の雇用者数を削減したりするリスクがある。「同じ賃金を払うなら正社員を」という判断がはたらく可能性もある
  • 正社員の待遇が引き下げられる可能性
    非正規労働者の待遇を引き上げるのではなく、正社員の待遇を引き下げることで帳尻を合わせようとする可能性がある

同一労働同一賃金対策の具体的な手順(取組手順書を参考に)

企業は厚生労働省の「取組手順書」に基づき、以下の4つのステップで同一労働同一賃金の制度に対応します。

  1. 雇用形態の確認
  2. 待遇状況の確認
  3. 待遇差がある場合の理由の確認・合理的か検証
  4. 不合理な待遇差の改善

参照:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書|厚生労働省

1. 雇用形態の確認

まずは自社にパートタイム労働者や有期雇用労働者が在籍しているか確認します。

  1. 非正規労働者(短時間労働者、有期雇用労働者)の有無を確認
  2. 非正規労働者をタイプ別に区分(パート/アルバイト、フル/短時間、有期/無期 など)
  3. それぞれのタイプの人数を把握

出典:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書|厚生労働省

2. 待遇状況の確認

該当者がいる場合、正社員との間で基本給、賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練など、あらゆる待遇項目を比較し、どこに差があるのかを一つひとつ洗い出します。

  1. すべての手当を洗い出して確認する
  2. 賞与の支給を確認する
  3. 福利厚生などの待遇(社員食堂、休憩室、更衣室、転勤者用社宅、休暇、休職、教育訓練など)を確認する
  4. 対象の労働者と最も業務内容が近い正社員と基本給の支給に差があるか確認する

3. 待遇差がある場合の理由の確認・合理的かの検証

2のそれぞれの待遇状況の確認で差があった項目はその理由が「職務内容」「責任の範囲」「配置転換の範囲」といった客観的・合理的な違いに基づいているかを検証します。ここでは「パートだから」「将来への期待値が違うから」といった主観的であいまいな理由は、合理的な説明とは認められません。

  1. (待遇差がある項目は)正社員と非正規労働者との間でどのような待遇差があるか確認
  2. 違いを設けている理由をまとめる

4. 不合理な待遇差の改善:是正に向けた計画を策定・実行

検証の結果、合理的な説明ができない待遇差が見つかった場合は、その格差を解消するための改善計画を策定し、実行します。

(就業規則・賃金規定の見直し、手当の統一など)

関連記事:2025(令和7)年 キャリアアップ助成金の改正ポイント(正社員化コース)を解説

関連記事:就業規則を変更するには?手続きの流れと注意点を解説

説明義務の強化

2021年4月1日に全面施行された「パートタイム・有期雇用労働法」では、企業の説明責任が以前より格段に求められるようになりました。

非正規労働者から、正社員との待遇の違いの内容やその理由について説明を求められたとき、企業は遅滞なく説明する義務があります(パートタイム・有期雇用労働法第14条)。

説明を拒否したり、曖昧な回答しかできない場合は法律違反とみなされ、訴訟問題や行政指導につながることがあります。

  • 行政指導で改善が見られない場合は、非正規労働者1人につき10万円以下の過料(罰金に近い行政制裁金)
  • 行政からの助言や指導に対し、報告拒否や虚偽報告などをした場合は20万円以下の過料

同一労働同一賃金対応の注意点

最後に同一労働同一賃金に対応する上での注意点をまとめておきます。

形式的な業務内容変更や名称変更

正社員と非正規労働者で表面的に職務名を変更したり業務内容を少し調整するだけでは、待遇差の合理化とは言えません。

実質的に中核的な業務や責任が同じであれば、待遇差は違法と判断されます。具体的な業務内容や責任を正しく整理することが重要です。

定年後の再雇用にかかわる考え方

定年後の再雇用者(嘱託社員など)も有期労働契約を締結している場合は、「同一労働同一賃金」の対象です。

しかし企業が法の趣旨を誤解し、抜け道として安易に対策を講じているケースがあります。正社員時代と仕事内容がほとんど変わらないにもかかわらず、「再雇用だから」という理由だけで賃金などの待遇を大幅に引き下げると不合理と判断されるリスクがあります。

正社員による「ずるい」「おかしい」の声

非正規労働者の待遇が改善される一方で、自分たちの負担(転勤・残業・責任)が報われないと感じ、「努力が無駄になるのはおかしい」「非正規が楽をしてる」とのフラストレーションを抱える正社員は一定数います。

ただし同一労働同一賃金が「正社員の給料を下げる」「責任の違いが無視される」ものだと勘違いされていることもあります。

同一労働同一賃金は「同じ仕事には同じ待遇を」が基本原則であり、正社員の負担は考慮されていること、合理的な差は残る(認められる)ことを丁寧に説明し、安心して働いてもらえるように心がけましょう。

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    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや