【実体験】社労士試験とは?概要や試験対策、キャリアパスを現役社労士が紹介
毎年、8月下旬に社会保険労務士試験が行われます。非常に難易度が高い国家資格試験ではありますが、学習の過程で人事労務にかかわる重要な基礎知識を身につけることができます。
この記事では社労士試験に4回挑戦して合格した筆者が、試験に合格し社労士として独立開業を目指す方はもちろん、企業の人事労務担当者や、将来の働き方として少しでも社労士に関心がある方に向けて、社労士試験の概要をお伝えします。
【この記事でわかること】
- 社労士試験の概要
- 実体験に基づいた社労士試験の対策とポイント
- 社労士試験後のキャリアパス
目次
社会保険労務士という職業の魅力
社会保険労務士(社労士)は、労働や社会保険に関する専門知識をもとに、企業や労働者が安心して働ける環境づくりをサポートする国家資格の専門家です。
社労士試験に合格し、登録することで社労士として活動できます。
社労士は労働法や社会保険制度の申請手続きの代行、労務管理のアドバイス、会社のルールブックである「就業規則」の作成支援など、企業や労働者が法律を守りながら円滑に仕事が進むよう支援します。
労働環境を整えることで企業の成長や労働者の働きがい向上などに貢献できる仕事です。
社会保険労務士が社会に求められる理由
仕事に対する考え方が多様化している現代では、働き方や雇用形態がますます複雑になりました。企業の人事労務担当者にとっては、労働法の遵守や社会保険の正しい取り扱い、働きやすい環境づくりなど、負担が大きくなっています。
そんな中で「人の専門家」である社労士によるサポートが以前に増して求められています。
関連記事:社労士の顧問契約の必要性|依頼できることや費用相場を本音で紹介
資格取得で広がるキャリアやメリット
▼2023年度(2024年3月31日現在の社労士の登録者数)
| 所属等 | 登録者数(人) |
|---|---|
| 開業 | 24,549 |
| 社労士法人の社員 | 3,915 |
| 勤務等 | 16,922 |
| 合計 | 45,386 |
社労士試験に合格し、社労士に登録した多くの人が自身の事務所を開業します。
また資格を取得することで就職・転職市場での評価も高まり、企業の人事労務担当や労務コンサルタントなどとして活躍する道も広がります。
いつの時代も労働や社会保障に関する知識は求められ、生涯現役で活躍できる資格として長期的なキャリア形成に有利になる資格です。
社会保険労務士試験の概要
社労士試験の概要をお伝えします。
日程
社労士試験は年に1回、例年8月下旬に実施されます。
| 年度 | 試験日 | 合格発表 |
|---|---|---|
| 第57回 (令和7年/2025年度) | 8月24日(日) | 10月1日(水) |
| 第56回 (令和6年/2024年度) | 8月25日(日) | 10月2日(水) |
| 第55回 (令和5年/2023年度) | 8月27日(日) | 10月4日(水) |
また第57回(令和7年/2025年度)の申込受付期間は4月14日(月)から5月31日(土)まででした。
受験資格
以下、1〜3のいずれかを満たすことで受験できます。
- 学歴
大学・短大の卒業、大学で規定単位の修得、専門学校の卒業、厚労相が認めた学校の卒業、各種学校等の卒業、専門職大学・専門職短期大学の卒業、高等専門学校(5年制)の卒業 など - 実務経験
労働社会保険諸法令の規定に基づき設立された法人の役員又は従業者、国又は地方公共団体の公務員等、社会保険労務士又は弁護士の補助者、会社その他の法人の労務担当役員 など - 試験合格者
社労士以外の国家試験合格、司法試験予備試験合格、行政書士試験の合格 など
試験内容・時間
2025年現在、社労士試験は8科目2形式で行われ、マークシートに記入する試験です。

「選択式」は問題文の空白部分に選択肢の中から適当な語を選択します。
「択一式」は「記述の内、正しいもの/誤っているものはどれか」「記述の内、正しいものはいくつあるか」などの問いに解答します。
第57回(令和7年/2025年度)試験の時間配分は以下のとおりです。
| 出題形式 | 着席時間 | 試験時間 |
|---|---|---|
| 選択式 | 10:00 | 10:30〜11:50(80分) |
| 択一式 | 12:50 | 13:20〜16:50(210分) |
申し込み方法
申し込みは「インターネット申し込み」か「郵送申し込み」で行います。
「インターネット申し込み」は受付期間内に社会保険労務士試験オフィシャルサイト からエントリーします。
- 顔写真、受験資格証明書、必要書類(データ)の準備
- マイページの登録
- 【受付期間内】マイページから申し込み内容の入力、各種データアップロード
- 受験手数料の支払い
- 完了
「郵送申し込み」は事前に社会保険労務士試験オフィシャルサイト から受験案内等を請求して入手する必要があります。試験センターや都道府県社会保険労務士会窓口では配布されません。
特別な事情がない限り、インターネット申し込みをおすすめします。
費用
受験手数料は15,000円(非課税)で、その他に以下の手数料もかかります。
- インターネット申し込みの場合:払込手数料418円
- 郵送申し込みの場合:払込手数料203円、簡易書留料金350円、郵便料金
合格基準点
合格基準点(合格最低点)は
- 「選択式」「択一式」それぞれの総得点
- それぞれの科目ごと
に定められており、合格するには、いずれも合格基準点に達する必要があります。
合格基準点は以下の「目安」が設定されています。

つまり「選択式試験」の各科目で3点以上、選択式試験全体で28点以上を、「択一式試験」の各科目で4点以上、択一式試験全体で49点以上を取らなければいけないということです。
ただし合格基準点はその年ごとの難易度や得点分布などによって補正(引き下げ)されます(合格発表日に公開されます)。
| 年度 | 選択式 総得点 | 選択式 各科目 | 択一式 総得点 | 択一式 各科目 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和6年(2024) | 25点 | 3点 | 44点 | 4点 | 6.9% |
| 令和5年(2023) | 26点 | 3点 | 45点 | 4点 | 6.4% |
| 令和4年(2022) | 27点 | 3点 | 44点 | 4点 | 5.3% |
| 令和3年(2021) | 24点 | 3点 | 45点 | 4点 | 7.9% |
| 令和2年(2020) | 25点 | 3点 | 44点 | 4点 | 6.4% |
| 令和元年(2019) | 26点 | 3点 | 43点 | 4点 | 6.6% |
また各科目の合格基準点(選択式3点/択一式4点)も問題の難易度によって、科目ごとに引き下げられることがあります。
例えば令和6年(2024年)は選択式「労務管理その他の労働に関する一般常識」は2点に引き下げられました(「例年は3点以上が合格だけど、2点以上でOK」ということ)。
合格率
上記表のとおり合格率は6〜7%程度を推移しています。
試験範囲が広く法改正も多いこと、事例や細かい条文理解、応用力が問われること、働きながら受験対策する社会人が多いことなどが、合格率が低い理由とされています。
また社労士試験が大学受験に例えられることもあり、偏差値60〜65、「MARCH」クラスや、地方国公立大と同じくらいの難しさと言われます。
【実体験】社労士試験の対策とポイント
社労士試験対策について、筆者の経験も踏まえてお伝えします。
合格に必要な勉強時間
一般的に社労士試験に合格するのに必要な学習時間は800〜1,000時間と言われています。
筆者の場合、合格した最後の1年はフルタイムの仕事や家事育児の両立をしながら、平日で平均4〜5時間、休日は6〜7時間の学習時間を必死に確保しました。
学習方法
社労士試験対策は主に「通信講座」「専門学校・予備校への通学」「独学」といった方法が取られることが多いです。
| 学習方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 通信講座 | ・自宅や好きな場所で、自分のペースで学べる ・仕事や家事と両立しやすい ・オンライン動画やテキストで分かりやすい解説が多い | ・自己管理が必要 ・わからない部分の質問が通学に比べしにくい |
| 通学 | ・疑問点をすぐ質問できる ・学習仲間ができてモチベーションを維持しやすい ・学習スケジュールが立てやすい | ・通学時間や場所・日時の拘束がある ・通信より費用が高くなることが多い |
| 独学 | ・費用が最も安い ・自分の好きな教材を選び、自由なペースで進められる | ・学習計画が立てにくい ・疑問点の解決が難しい ・モチベーションの維持が難しい |
筆者もすべて経験し、最終的には通信講座で合格できました。仕事や子育てをしながらという筆者の環境にはとても合っていたと思います。ご自身の状況に合った方法を見つけてみてください。
問題集の回数
合格した最後の1年は各法律の問題集を7〜8周は行いました。
勉強する科目が偏らないように「労働保険科目」「社会保険科目」をバランスよく回していくことを意識していました。
問題集はいろいろなものに手を出すのではなく、これと決めたものを繰り返し行うのがよいでしょう。筆者も通信講座の問題集に絞ってひたすら繰り返し、基礎を固めました。
学習のポイントとスケジュール
- 基本を押さえる
基本的かつ多く出題される問題を確実に正解できるように、基礎知識を固める - 過去問を繰り返し解く
問題の出題傾向や形式に慣れることが重要。試験時間と同じ時間配分で過去問を解く練習も行う - 耳学習も有効活用する
移動中・家事中などに音声や動画コンテンツで学習する - 【直前】模擬試験を受ける
各予備校の模擬試験(5月下旬頃〜)を受け、実践力をつける - 【直前】法改正・一般常識・最新情報をチェックする
最新の制度変更や法改正を試験直前まで気にかける
社労士試験まで100日を切った「直前期」は気持ちが焦ってしまいますが、1ヶ月、1日ごとの細かい学習スケジュールを立て、コツコツ進めることを意識しました。
社労士試験合格後のキャリアパス
先に触れたように社労士試験合格後のキャリアパスは独立開業以外の道もあります。
- 勤務社労士として企業や社労士法人で働く
一般企業の人事部や総務部、社労士法人で複数のクライアントの労務サポートを担当するなど。安定した収入を得ながら幅広い実務経験を積める - 会計事務所や法律事務所で専門性を活かす
会計事務所で給与計算や労務管理支援、法律事務所で労働問題の法律相談や紛争解決のサポートを行うなど。専門分野を深めながら活躍の幅を広げられる - 複業やコンサルタントとして活動
社労士業務に加え、ビジネスコンサルティングやセミナー講師など、複数の仕事を組み合わせる
社労士として独立・開業するまでの具体的ステップ
自由度が高く、自分の専門性を最も活かせるのが自身で事務所を設立し開業する道です。
前提として社労士として活動するためには社労士の登録が必要です。独立・開業するまでのステップは以下のとおりです。
- 社労士試験の合格
- 「2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験」または「事務指定講習(約4ヶ月)の修了」
- 社労士会への登録申請
入会希望の都道府県社労士会に申請。審査後、全国社会保険労務士連合会への名簿登録も行われる - 事務所開設・独立開業
社労士登録には「開業登録」「勤務登録」「その他の登録」があります。
社労士試験に関するよくある質問
最後に社労士試験に関して実際にわからなかったことや、よくある質問をまとめます。
仕事や家事と両立しての試験対策は可能ですか?
時間の使い方を工夫することで可能です。
筆者も最後の1年はフルタイムで仕事をし、家事や育児もしながら勉強時間を確保していました。通信講座のコンテンツを耳で聞いて学習するなど、スキマ時間を有効活用することも心がけました。
試験会場はどこですか?
第57回(令和7年/2025年度)は全国19か所で行われました。希望する都道府県で受験できます。
北海道、宮城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、福岡、熊本、沖縄
社労士の年収はどれくらいですか?
社労士の平均年収は約500万円から700万円とされています。
勤務型社労士の場合は400万円から500万円程度、独立開業する社労士は年収500万円から700万円程度で1,000万円を超える人もいます。
もちろん事務所の規模や地域、役職や営業力により幅があります。
社労士試験の過去問はどこで手に入りますか?
社労士試験の直近の過去問は全国社会保険労務士会連合会ホームページ で公開されます。
また市販の過去問題集は書店やネットで購入できます。
どんな人が社労士に向いていますか?
「人」が好きな人、サポートが得意な人、継続した勉強・仕事ができる人、法律や社会保険の仕組みに興味がある人などが社労士に向いていると言えます。
まき社会保険労務士事務所 代表
社会保険労務士 牧 あや
まき社会保険労務士事務所




