社労士の顧問契約の必要性|依頼できることや費用相場を本音で紹介

従業員が増えてくると、多くの企業が社会保険労務士と顧問契約を結びます。
煩雑な業務を外部のプロの手を借りて進めたい。ただ「本当に社労士は必要?」「自社に必要なサポートを受けられるだろうか?」と不安に感じている経営者や担当者は多いかもしれません。
【この記事でわかること】
- そもそも社労士と顧問契約する必要はあるのか
- 社労士との顧問契約で依頼できること
- 社労士と契約するにはいくらかかるのか、その目安
- 社労士の選び方
目次
社労士の顧問契約の必要性
社会保険労務士(社労士)は企業の人事労務をサポートする「人」の専門家です。社会保険や労働保険の手続き、就業規則の作成、給与計算、労務トラブルの防止など、幅広い業務に対応します。
少し古いデータになりますが、2016年(平成27年)に全国社会保険労務士会連合会が全国約6,900社を対象にした調査によれば、66.1%の企業が社労士を利用している、または過去に利用したことがあると回答しています。

出典:社会保険労務士のニーズに関する調査結果|全国社会保険労務士会連合会
また同連合会が2024年に全国の社労士2.5万人に行った調査では、開業社労士の顧問契約先の63.9%が従業員29人以下の企業であるとされており、多くの社労士が中小企業・小規模事業者に寄り添ったサポートを行っていることがわかります。
出典:2024年度社労士実態調査概要|全国社会保険労務士会連合会
※ 従業員を10人以上雇用している企業は就業規則の作成が義務付けられています。従業員10人程度を目処に社労士と契約する企業は多いです。
関連記事:【基礎】就業規則の作り方を丁寧に解説
いま、社労士が求められている理由と契約するメリット
現在、社労士が企業に求められている理由や、契約することで得られるメリットには、以下のようなことが挙げられます。
- 労働環境の変化
働き方改革やコロナ禍を経ることで、リモートワークやフレックスタイム制などの新しい労働条件に適応する必要があり、専門家のサポートが重要な役割を果たしている - 人材の確保
優秀な人材を集めることが難しくなっている中、就業規則や働きやすい環境を整備することで、従業員の満足度を高めることが求められている - 法令の遵守
頻繁に改正される法律をキャッチアップして、適切に対応する必要がある。第三者の視点を入れ法令を遵守することは社会的な信用につながり、また従業員とのトラブルを未然に防げる - 本業への集中と企業の成長
労務管理を外注して効率化することで、利益を生み出す本業に最大限のリソースを投入できる
昨今の企業運営では、従業員がいかに働きやすい環境を整えるかが重視されるようになりました。人に関わるプロである社労士と契約することは「従業員への投資」と考えることもできます。
「社労士は必要ない」「要らなくなる」という意見の根拠(デメリット)
一方で社労士との契約をしていない企業には、以下のような事情や考え方があるようです。
- 従業員数が少ない
社労士に依頼するほどの業務がなく、十分、内部で対応できる - ソフトウェアで対応できる
適切なソフトを導入することで、給与計算や社会保険の手続きなども対応できる - 他の士業と契約している
給与・税額計算を税理士に依頼している - 個人情報流出を懸念
外部に人事労務の個人情報を提供する必要があり、セキュリティ的なリスクがある - 依存して社員が育たない
社労士を利用することで社内にノウハウが蓄積されない、担当者が育たない
企業の方針や目的、置かれた状況はそれぞれであり、一社労士としてこれらの考え方を否定することはありません。
社労士との顧問契約で依頼できること
一般的に社労士が提供するサービスには以下のようなものが挙げられます。
サービス | 内容 |
---|---|
社会保険・労働保険の届出 | 資格取得届・喪失届、傷病手当、育児・介護休業給付金、算定基礎届 など |
労務相談 | 採用、退職、労働時間、有給などの雇用に関するアドバイス |
就業規則 | 作成、届出、一部変更 など |
給与計算 | 時間集計、残業代、源泉所得税、社会保険料の計算、給与明細の作成 など |
助成金申請 | 対象となる助成金の提案、申請代行など |
労働基準監督署や 年金事務所の調査対応 | 書類の提出、現場確認の支援 など |
その他 | 研修、求人票の作成、人事評価制度の導入、従業員の外部相談窓口、労働協約の作成、マイナンバーの管理、勤怠管理 など |
これらのうち、どの業務が顧問契約(毎月、定額を社労士に支払う契約)に含まれ、また、個別契約が必要かは、社労士事務所によって異なります。
一般的な傾向として、「社会保険・労働保険の届出」「労務相談」「労基署、年金事務所の調査の初期対応」などは、顧問契約に含まれることが多いです。
※ まき社会保険労務士事務所では「社会保険・労働保険の届出」と「労務相談」を顧問契約に含みます。
一方で就業規則の作成など単発的なもの、給与計算など継続的で労力を要するものなどは、顧問契約とは別に契約が必要なことがほとんどです。
関連記事:【基礎】就業規則の作り方を丁寧に解説
関連記事:給与計算代行とは?依頼できること、委託先と選び方を解説
社労士にしかできない業務
ちなみに社労士が提供する業務には「1号業務」「2号業務」とされる、社労士にしか行えない独占業務があります(社会保険労務士法の第27条)。

これらの業務を社労士資格がない者がおこなった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
※ 同様に税理士にも「税金の申告手続」「税務計算」などの独占業務があり、これらの業務は社労士では対応できません。
社労士の顧問契約の費用
社労士と顧問契約する際の月額費用は2万円程度から数十万円まで幅広く設定される傾向にあります。
一般的に従業員の人数に応じて料金が決まることが多く、従業員が増えるほど費用も高くなっていきます。その他、以下のような要素で費用が上下します。
【顧問契約の費用が決まる要素】
- 企業の従業員数
- 業務範囲
- 社労士の得意分野(保有資格)
- 地域
- 社労士事務所の規模 など
※ かつて各都道府県の社会保険労務士会が報酬の基準額を定めていました。現在は撤廃されて自由化されましたが、この「旧基準」を根拠に顧問契約の費用を決めている社労士事務所は多いです。
【東京都社会保険労務士会の旧報酬基準(参考)】
従業員数 | 旧報酬基準 | 従業員数 | 旧報酬基準 |
---|---|---|---|
1〜4人 | 20,000円 | 50〜69人 | 80,000円 |
5〜9人 | 30,000円 | 70〜99人 | 100,000円 |
10〜19人 | 40,000円 | 100〜149人 | 130,000円 |
20〜29人 | 50,000円 | ⋮ | ⋮ |
30〜49人 | 60,000円 | 500人以上 | 別途協議 |
顧問契約ではなくスポットで依頼する際の費用
顧問契約をするほどではないけれど、特定の業務をスポットで依頼したい、というケースもあると思われます。
例えば就業規則の作成(弊事務所の場合、新規作成10万円〜)や社会保険・労働保険届け出(同6,000円〜)などは、スポットでも依頼できることが多いです。
【東京都社会保険労務士会の旧報酬基準例(参考)】
- 就業規則作成:200,000円
- 健康保険・厚生年金の新規適用(1〜4人):80,000円
- 相談報酬(1時間):10,000円
一方で給与計算代行などの詳細な情報が必要で継続的な業務はスポット契約できない可能性が高いです。
後悔しない社労士の選び方
最後に社労士を選定する際に確認しておきたいこと、重視したいポイントを紹介します。
報酬(費用)が明確であること
報酬体系が明確であることは重要です。どの業務に対してどのくらいの費用がかかるのか、契約の範囲を確認し、予想外の費用が発生することを防ぎましょう。相見積もりを取ることも有効です。
優先度の高い業務内容に精通していること
自社が特に重視したい業務内容に精通している社労士を選ぶことが大切です。労務管理、給与計算、社会保険の手続きなど、社労士によって得意な分野は異なります。自社の業種や特有の課題に対して経験と知識がある社労士を選びましょう。
社内システムとの親和性(連携できるか)
労務管理、給与計算や勤怠管理システムなど、自社が利用しているものに対応しているか確認することも必須です。
コミュニケーションの取りやすさ(相性)
顧問契約を結ぶ社労士は長期にわたって深い関係を築き、伴走して会社を成長させていくパートナーになります。その上でコミュニケーションが取りやすいか、といった相性的な部分も見過ごせません。
岡山で社労士の顧問契約について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ
岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。
「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。
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まき社会保険労務士事務所 代表
社会保険労務士 牧 あや