勤怠管理システムを導入する前に知っておきたいこと

2025年05月15日
勤怠管理システム

従業員の労働時間の適正な管理が求められるようになった昨今。これまでの勤怠管理のやり方に限界を感じ、業務を効率化して担当者の負担を減らしたいという企業が増えています。

そんな課題を解決できる「勤怠管理システム」は、比較的安価に運用できることもあり、多くの企業で導入されるようになりました。

 【この記事でわかること】

  • 勤怠管理システムでどんなことができる?
  • 勤怠管理システムにかかる費用
  • 主要な勤怠管理システム
  • 勤怠管理システムを選ぶときのポイント
  • システムの導入を専門家に相談するメリット

勤怠管理システムとは

勤怠管理システムは、従業員の出勤・退勤時間、労働時間、休暇の取得状況などを正確に記録・管理するためのツールです。

昨今は働き方改革に伴う労働基準法の改正により、企業には労働時間を適正に管理し、労働者の健康を守ることが、厳格に求められるようになりました。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(抜粋)

 

○ 使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること
(1)原則的な方法
・ 使用者が、自ら現認することにより確認すること
・ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

 

参照:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

こうした背景もあり、勤怠管理システムが広く一般的に普及することになりました。システムを導入することで、従業員の労働時間を効率よく把握し、法令遵守を徹底できます。

勤怠管理システムでできること(一例)

 

勤怠管理システムは従業員の労働時間や出勤状況を効率よく管理するための、以下のような機能を備えています。

  1. 出勤・退勤の打刻
    ICカード、スマホアプリなどによる出勤・退勤時間の打刻
  2. 労働時間の集計
    打刻されたデータをもとに、労働時間や残業時間を自動的に集計
  3. 残業や休暇管理
    従業員による残業、有給休暇や特別休暇の申請。管理者による申請内容の確認・承認
  4. シフト管理
    管理者によるシフトの作成や変更。従業員によるシフトの確認、変更申請
  5. 残業アラート機能
    設定した残業時間の上限を超えそうな場合、自動的にアラートを発信

ここで挙げたのはあくまで主要なもので、サービスによって提供する機能は様々です。

勤怠データをグラフで可視化して労働時間の傾向や問題点を把握したり、給与計算システムと連携して給与計算の手間を大幅に削減したりすることもできます。

勤怠管理システムを導入するメリット・デメリット

上記のような機能を活用することで、以下のような業務効率化を期待できます。

  • 勤怠管理や給与計算にかかる時間・労力・コストを削減できる
  • 労働時間をリアルタイムで把握し、集計前に対策できる
    (アラートが出た従業員の業務量を調整するなど)
  • 工数を管理して生産性の向上にもつなげられる
  • 集計ミスを解消できる
  • 法令を遵守できる
  • 従業員の不正を防げる
    (打刻時間の修正、他者に打刻させるなど)

一方で以下のような注意点もあります。

  • 初期費用、運用コストのハードルが高い
  • 費用対効果を測定しにくい
  • 自社独自の規則など、システムでは対応しきれない業務もある
  • 従業員へのレクチャーなど、運用の周知が必要

ただこれらのデメリットも、導入前に自社に合ったサービスを選ぶことができれば、最小限に留められます。

また記事末で説明する補助金を活用することで、導入や運用にかかる費用を抑えられます。

勤怠管理システムの導入にかかる費用

勤怠管理システムには導入にかかる費用、運用にかかる費用があります。

費用はシステムの種類、企業の規模(従業員数)、搭載する機能などによって、大きく変動します。

クラウド型が導入しやすい

システムはインターネットを介して利用する「クラウド型」と、自社のサーバーに構築する「パッケージ型(オンプレミス型)」に大別されます。

パッケージ型はセキュリティ面や独自機能のカスタマイズ性の高さなどから選ばれることがありますが、初期投資が高くなる傾向にあります(大企業の場合は、結果的に割安になることもあります)。

中小企業では初期投資の低さやメンテナンスの負担が少ないことから、クラウド型が選ばれることがほとんどです。

多くのクラウド型サービスの月額料金は、1ユーザー(1従業員)あたり数百円で設定されています。例えば従業員が10人程度であれば、数千円から利用することもできます。

中小企業向け勤怠管理システム

以下、中小規模の事業者でも導入しやすい、主要な勤怠管理システムの一例です(五十音順)。

サービス名
(提供会社)
導入企業数 ※
KING OF TIME
(株式会社ヒューマンテクノロジーズ)
6.2万社
(25年4月時点)
ジョブカン勤怠管理
(株式会社DONUTS)
25万社
(累計)
jinjer勤怠
(jinjer株式会社)
1.8万社
(トライアル含む合計)
Touch On Time
(株式会社デジジャパン)
6.2万社以上
(25年4月時点)
HRMOS勤怠
(株式会社ビズリーチ)
10万社
(シリーズ累計)
freee人事労務
(freee株式会社)
56万事業所
マネーフォワード クラウド勤怠
(株式会社マネーフォワード)
10万社
(クラウドサービス全体、
2022年10月時点)
MINAGINE 就業管理システム
(株式会社ミナジン)
非公表
楽楽勤怠
(株式会社ラクス)
8.3万社以上
(クラウドサービス累計)

※ サービスサイトで公表されている数

勤怠管理システムの選び方・比較方法(中小企業向け)

勤怠管理システムを選ぶ際、相見積もりを取ることが前提ではありますが、それ以外に注目すべきポイントを確認します。

自社の規模に対応できるか

上記で紹介した勤怠管理システムサービスは、基本的に中小企業でも導入しやすいものばかりです。まずは自社の規模(従業員数)でも対応できるサービスをピックアップします。

先に説明したように、中小企業は初期費用や運用コストを抑えられる「クラウド型」の中から選ぶのが良いでしょう。

無料プランやトライアル期間を設けているサービスもあります。初めて勤怠管理システムを導入する際は、試しに使ってみることをおすすめします。

自社の課題を解決できる機能があるか

勤怠管理システムは各社が差別化をはかるべく、多様な機能を提供しています。

ユーザー側としては「できるだけたくさんの機能があるものを選んでおきたい」と考えるかもしれません。しかし「必要な機能がある = 余計な機能がついていないものを選ぶ」という考え方も大事です。

そのためには、現在、何に課題を感じてシステムを導入したいのか、自社の課題を明確にしておきましょう。

既存システムとの連携・親和性

例えば、現在使っている給与計算ソフトとの連携が可能か、といった視点も重要です。

特にクラウド型の勤怠管理システムを提供している会社の多くが、「給与計算」「人事労務」「会計」などの関連サービスをシリーズで提供しています。

既に使っている給与計算、会計ソフトなどと同じ会社が勤怠管理システムを提供していないか、確認しておきましょう。

従業員の使い勝手

導入する際、どうしても「管理する側」の視点で検討してしまいがちですが、特に勤怠管理システムの場合、「打刻」や「残業申請」などを行う従業員が使いやすいか、簡単に使えるか、といった視点に立つことが重要です。

業界との相性

勤怠管理システムの中には、業界ごとの特有のニーズに応じた機能を持つものもあります。

  • 建設業:現場でのGPSを利用した出退勤の記録
  • 医療業:夜勤、交代制勤務に対応したシフト管理機能
  • 飲食業:短時間勤務、柔軟なシフト変更が可能な機能  など

自社の業界に特化した勤怠管理システムがないか、調べてみるのも良いでしょう。

勤怠管理システムの導入を専門家に依頼するメリット

ここまで見てきたように勤怠管理システムは非常に種類が多く、自社に最適なものを導入するためのハードルが高いです。

システムを導入することで、長期的な業務効率化が期待できるところ、導入時の負担で断念してしまうのは、非常にもったいないです。

そこで初めて勤怠管理システムを検討される場合は、ぜひ社会保険労務士などの専門家に、アドバイスや導入のサポートをしてもらうことも検討してみてください。

  • 労務を熟知している専門家から、自社の課題に合ったサービスを提案してもらえる
  • 法令を遵守するために最低限必要な機能を知れる
  • サービスの調査や比較にかかる時間を大きく削減できる
  • システムの導入設定(初期設定)に対応している(別途費用がかかります)
  • 導入後の運用方法のレクチャーやサポートを受けられる

導入を検討される際、まずは顧問契約を結んでいる社会保険労務士に相談してみるのが良いでしょう。

補助金を活用できる

ちなみに勤怠管理システムを導入する際、以下のような補助金を活用できます。

IT導入補助金
(通常枠)
働き方改革推進支援助成金
(労働時間短縮・
年休促進支援コース)
補助対象・ソフトウェア購入費
・クラウド利用料(最大2年)
・オプション料
 ・機能拡張
 ・データ連携ツール
 ・セキュリティ
・導入・活用コンサル費
・導入・活用設定費
・保守費 など
・ソフトウェア購入費
・研修費
・コンサル費 など
補助率1/2以内
(条件該当で2/3以内)
4/5(条件次第で3/4)
補助上限150万円
(勤怠管理システムのみ
導入の場合)
150万円
(賃上げによる加算あり)

システムの利用料はもちろんのこと、導入にかかわるコンサル費や諸設定の費用も助成の対象です。

勤怠管理システムの導入について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや