両立支援等助成金とは?6つのコースの特徴と申請方法を解説

2026年03月20日

 【この記事のポイント】

  • 両立支援等助成金は、家庭の事情と仕事を両立できる職場環境を整備した企業に助成金が支給される制度
  • 育児・介護・不妊治療や女性の健康課題を対象に、全部で6つのコースが用意されている
  • 社内の制度を整え、必要に応じて就業規則や給与規定を変更する
  • 申請は規定の申込書の他、就業規則、面談記録などが必要

両立支援等助成金を申請する3つのメリット

両立支援等助成金とは、育児・介護・不妊治療などと仕事を両立できる職場環境を整備した企業を支援する制度です。

一定の要件を満たした事業主に対して、助成金が支給されます。

両立支援等助成金を申請する3つのメリットを紹介します。

1.就業規則や社内制度を整えるきっかけになる

両立支援等助成金の申請に向けての活動は、就業規則や社内制度を改めて整理し、見直す機会になります。

社内制度を文章にまとめ、運用方法を整理していく中で、法令遵守体制の強化や、将来的な労務トラブルの予防にもつながります。

2.家庭の事情による離職を防げる

従業員が離職する理由のひとつに「仕事と、育児や親の介護の両立が難しい」場合があります。

家族の介護・看護を理由とする離職者数は、令和3年10月〜令和4年9月の期間では約10万6千人でした。男女別では、男性が約2割、助成が約8割となっており女性の離職が多いことがわかります。

参考:厚生労働省 | 仕事と育児・介護の両立支援対策の充実に関する参考資料集(令和5年12月4日) 

社内制度を整えて、従業員が休職や短時間勤務といった働き方を選べるようになれば、家庭の事情による離職を防ぐ効果が期待できます。

3.従業員をサポートする体制が求職者にとって魅力的になる

求職者が応募する条件として、働きやすさや柔軟な制度も魅力的なポイントになります。

両立支援制度が整っている企業は「安心して長く働ける職場」としてイメージが向上し、求職者が応募するきっかけになる可能性があります。

また、両立支援制度を整える中で、関連する制度を合わせて取得できるように動くと、より多くの応募が見込めるようになります。

たとえば、育児支援に関連する制度として「くるみん・プラチナくるみん認定」があります。これらは「子育て支援に積極的な会社」であることを国が認定しているため、認定をとることができると以下のようなメリットが期待できます。

  • 採用活動でアピールしやすい
  • 求職者からの信頼が高まりやすい
  • 離職防止につながる

「くるみん・プラチナくるみん認定」を取得すると、両立支援制度を申請する時にも、以下のようなメリットがあります。

  • 両立支援制度の中で、育児に関連する助成金が加算される項目がある
  • 支給対象の一部項目を省略できる

両立支援等助成金の6つのコースを紹介

両立支援等助成金は、6つのコースが用意されています。

それぞれのコースの特徴について、詳しく紹介します。

1.出生時両立支援コース

出生時両立支援コースは、男性労働者の育児休業取得を促進するための制度です。

引用:厚生労働省

育児・介護休業法により「産後8週間以内に、男性が育児休業(産後パパ育休とも呼ばれている)をとれる」仕組みがあります。このコースは、この期間の育児休業を支援するコースです。

参考:【育児関連】2025(令和7)年改正 育児・介護休業法をわかりやすく解説

出生時両立支援コースは、2種類用意されています。

  • 第1種:男性労働者が子どもが生まれた後に8週以内に育休を取得する。1人目に20万円、2~3人目に10万円が支給される
  • 第2種:男性の育休取得率が、申請年度の前年度より30%上昇・50%を達成した場合に60万円が支給される

加えて、厚生労働省の「一般事業主行動計画公表サイト」に育児休業の取得率(男女とも)、育児休業の平均取得日数を公表すると、追加で2万円の補助金が加算されます。

男性の育児参加が進むことで、職場全体の意識改革や、育児をしている女性社員の負担軽減につながる可能性があります。

2.介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コースは、家族の介護を理由とした退職を防ぐための支援制度です。

引用:厚生労働省

従業者が介護による休業・短時間勤務を行う前に面談を行い、介護支援プランの作成をします。介護支援プランにて業務整理・引き継ぎの段取りを定めて、円滑に復帰できるようにします。

以下の3つのどれかを行う、または1人の従業員が複数の条件を満たした場合に助成金が支給されます。

  1. 介護休業:介護休業を取得し、職場復帰させた場合に40万円(1事業主 5人まで)
  2. 介護両立支援制度:時差出勤、短時間勤務制度を利用する。(1事業主 5人まで)
    1つの制度を利用すると20万円、2つの制度を利用すると25万円
  3. 業務代替支援: 介護休業取得者等の業務を代替する労働者へ手当を支給する。
    (介護休業の代替は5万円、短時間勤務の代替は3万円)
    または代替要員の新規雇用を行う。(20万円)

加えて、環境整備(研修や相談窓口設置等)を4つ全て実施すると10万円加算されます。

高齢化が進む中、今後ますます重要性が高まる分野です。

3.育児休業等支援コース

育児休業等支援コースは、育児休業の取得から職場復帰までを一体的に支援したときに助成金を支給する制度です。

引用:厚生労働省

1.育休取得時: 育休を取得する者と面談をする。「育休復帰支援プラン」を作成し、業務の引継ぎを行う。3か月以上の育児休業を取得する

2.職場復帰時: 休業中の情報提供、復帰前後の面談を行う。復帰後は原則として原職等に復帰させ、6か月以上継続雇用する

どちらの場合でも、助成金額は30万円です。

加えて、育児休業等に関する情報公表を行うと2万円加算されます。情報公表は、「一般事業主行動計画公表サイト」にて行います。

単なる取得実績ではなく、円滑な復職支援が重視される点がポイントです。

長期的な人材育成の観点からも重要な取り組みといえます。

4.育休中等業務代替支援コース

育休中等業務代替支援コースは、育休中である従業員の業務を代わりに行なう従業員に手当を支給したり、新しく従業員を雇用した場合に助成金が出ます。

業務体制を整備する経費についても助成金が支給されます。

令和6年(2023年)1月から新設されたコースです。

引用:厚生労働省

1.手当支給等(育児休業): 「育児休業者」の業務を代替した労働者に対し、手当支給等の取り組みを行なう
助成金の対象は、業務体制整備経費(6万円、労務コンサルを外部の専門家に委託すると20万円)+業務代替手当(手当総額の3/4。上限10万円/月、12か月まで)

2.手当支給等(短時間勤務): 「育児のための短時間勤務制度を利用した人」の業務を代替した労働者に対し、手当支給等の取り組みを行なう
助成金の対象は、業務体制整備経費(初回3万円、専門家委託なら20万円)+業務代替手当(支給額の3/4。上限3万円/月、子が3歳まで)

3.新規雇用: 育児休業取得者の代替要員を新たに雇い入れ(派遣含む)、業務を代替させる
支給額は、代替期間に応じて変動する(9万円〜67.5万円)

また、有期雇用労働者が育児休業や時短勤務をとった場合は加算として10万円、育児休業等に関する情報公表を行うと2万円加算されます。

情報公表は、「一般事業主行動計画公表サイト」にて行います。

5.柔軟な働き方選択制度等支援コース

柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児を行う労働者が柔軟な働き方をできるように支援した場合に支給されます。

引用:厚生労働省

以下の制度を設け、3歳〜小学校就学前の子どもがいる労働者が利用することが条件です。

  • フレックスタイム制度または時差出勤制度
  • 育児のためのテレワーク制度
  • 保育サービスの手配及び費用補助
  • 休暇制度・看護等休暇制度(有給休暇とは別)

制度を2つ導入し、利用した場合は20万円(1事業主1年度につき5人まで)、
制度を3つ以上導入し、利用した場合は25万円(1事業主1年度につき5人まで)が支給されます。

また、育児休業等に関する情報公表を行うと2万円加算されます。情報公表は、「一般事業主行動計画公表サイト」にて行います。

6.不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、女性の健康問題と仕事を両立できる環境を整備する制度です。

引用:厚生労働省

対象となるケースは以下の3つです。

  • 不妊治療
  • 女性の健康課題対応(月経、(PMS(月経前症候群)を含む)
  • 女性の健康課題対応(更年期) 

以下のような休暇制度、両立支援制度を1つ以上使用できるように社内制度を整備します。

  • 休暇制度(有給休暇をのぞく)
  • 所定外労働制限制度
  • 時差出勤制度
  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制
  • 在宅勤務等

いずれかの制度を5日(回)以上利用した場合に、30万円支給されます。

制度を整えるときには、対象社員のプライバシーへの配慮も合わせて行うようにしましょう。

申請前に行うべき社内整備

「両立支援等助成金」を申請するためには、社内の制度や業務体制を整えて、対象の従業員が活用することが条件です。

就業規則・社内制度の整備

社内で仕事と育児・介護などの両立を支援するための制度を設け、就業規則に明記します。

就業規則の整備は、助成金の支給要件に定められている場合があります。
たとえば「1.出生時両立支援コース」の支給要件には「育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること」と記されています。

参照:厚生労働省

労使協定の締結や社内規程の改定も必要になるケースもあります。

就業規則の変更について、詳しくはこちらで解説しています。

参考:就業規則を変更するには?手続きの流れと注意点を解説

制度を設けたら、従業員への周知徹底も必ず行いましょう。

代替要員確保と業務体制の見直し

従業員の休業取得を進めるためには、代替要員の確保が不可欠です。

休業する期間や業務内容によって、新規雇用、派遣社員の受け入れ、社内の調整といった方法を使い分けます。

もし業務が特定の社員に集中している場合は、事前に業務を整理して、分担しやすい状態にしておいたり、業務を引き継ぎやすくするために、マニュアルの整備や業務の標準化を進めることもおすすめです。

面談・周知・記録管理の徹底

助成金の申請にあたって、従業員との面談記録や周知資料の提出が求められます。

たとえば「2.介護離職防止支援コース」では、従業員との面談記録と介護支援プランを書類にまとめて提出します。

面談記録には面談内容のほか、日付や担当者も細かく記入します。

参考:厚生労働省

周知資料としては、社内報で知らせる、回覧板やメールで周知するといった方法があります。

日頃から文書管理を徹底して、申請時に速やかにまとめられるようにしておきましょう。

自治体独自の助成金・サポート制度と併用できるか確認する

自治体によっては、育児や介護などを助成する独自の制度を設けている場合があります。

たとえば、岡山県には「子育てしやすい職場環境助成金」制度があります。

従業員の子育てに関する費用を企業が負担した場合に、費用の2分の1、上限10万円を県から助成される制度です。

以下のような子育てに関する費用が対象となります。

  • 家事代行サービスやベビーシッターを利用し、事業者が費用の一部を負担
  • 子育てのためのテレワークに要する備品や消耗品の購入費用(webカメラ、ヘッドホン等)
  • 従業員が病児保育を利用する際、事業者が費用の一部を負担

参照:岡山県 | 子育てしやすい職場環境助成金制度

自治体の情報収集を行い、活用できる制度を最大限活用していきましょう。

申請手続きの流れと必要書類

両立支援等助成金の申請手続きの流れと、必要書類を紹介します。

この記事では「3.育児休業等支援コース」について解説します。

申請のステップ(書類作成前の準備)

まず、助成金の支給要件を確認し、労働協約または就業規則を要件に沿うように変更します。
「3.育児休業等支援コース」の主な支給要件は以下の通りです。

  • 対象労働者の育休が始まる前に、労働協約または就業規則に「育児休業制度」について定めている
  • 一般事業主行動計画を作成し、管轄労働局に届け出ている

加えて、「育休取得時」の申請には以下の追加要件があります。

  • 面談と業務プランの作成:育休開始前までに上司等と面談を行い「面談シート」を作成。面談シートに沿って業務の引き継ぎや復帰計画をまとめた「育休復帰支援プラン」を作成する
  • 3か月以上の育休:対象者に連続3か月以上の育児休業を取得させる

「職場復帰時」の申請には以下の追加要件があります。

  • 原職等への復帰:原則として、育児休業前と同じ部署・職務に復帰させること
  • 復帰後の継続雇用:復帰後、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用する。その間の実際の勤務日数が予定の5割以上になっている

参考:厚生労働省

必要書類と提出方法

申請に必要な書類の一部を紹介します。

  • 支給申請書
  • 対象育児休業取得者に係る面談シート
  • 育児休業の対象となる子がいることを確認できる書類(母子手帳や住民票など)

支給申請書は、以下のように形式が定められています。

参考:厚生労働省

提出期限は、以下のように定められているので、育児休業中から準備を進めることをおすすめします。

  • 育休取得時:育児休業(3ヶ月間)の翌日から2か月以内
  • 職場復帰時:育児休業の6ヶ月後の翌日から2か月以内

提出先と電子申請の活用

提出先は、申請事業主の本社などの所在地にある労働局雇用環境・均等部(室)です。

提出は電子申請がおすすめです。
両立支援等助成金の雇用関係助成金ポータルから電子申請を行うことができます。

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    この記事の執筆者


    まき社会保険労務士事務所 代表

    社会保険労務士 牧 あや