試用期間とは?法律・期間・条件の基礎知識と効果的な運用方法
新たに社員を採用するとき、多くの企業で試用期間が設けられます。
会社と従業員、それぞれが入社後のミスマッチを防ぐために、試用期間の基礎知識を押さえた上で、適切に運用されることが重要です。
【この記事でわかること】
- そもそも試用期間とは?定義や法的な根拠
- 試用期間の長さや、社会保険や給与などはどうしたらよいのか
- 試用期間が終わったあとの手続きはどうするのか
- 試用期間では何を評価すればよいのか
目次
試用期間とは
試用期間は従業員を正式に採用する前に一定の期間を設け、能力や適性、勤務態度などを評価する期間を指します。
一般的な採用面接や試験だけで評価するのが難しい能力や新しい業務への適応力などを、実務を通して評価します。
また従業員の視点に立てば、業務の難易度や自身との相性など、実際に働くことでわかることもあり、試用期間は双方にとってミスマッチを防ぐための大切な期間です。
少し古い調査になりますが、2014年の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、86.9%の企業が試用期間を設けていると報告されています。
試用期間の長さ(上限期間)
試用期間の長さについて、法的な定めはありません。
「能力を評価するため」「業務に必要な基礎知識・スキルを身につけるため」など、その目的に応じた期間を自由に設定できます。
一般的には3ヶ月、長くても6ヶ月程度で設定されることが多いです。
試用期間中、従業員は不安を感じながら働くことになります。企業の都合だけで、いたらずらに長い試用期間を設けることは、適切ではありません。
試用期間中の労働条件・待遇(給料、社会保険、残業など)
試用期間中であっても雇用契約は結ばれます。つまり、基本的には正社員の労働条件と同様の対応が求められます。
ただし給料や手当などは就業規則に基づき設定することができます(正社員よりも低く設定することが可)。
| 社会保険 (健康保険、厚生年金保険) | 加入義務あり(参考記事) |
|---|---|
| 労働保険 (雇用保険、労災保険) | 加入義務あり(参考記事) |
| 給料 | ・本採用後の給料よりも低く設定することは可 ・ただし最低賃金を下回ることはできない(参考記事) ・雇用契約書へ明示する |
| 有給休暇 | ・取得の権利は発生する ・「雇入日から6ヶ月継続勤務し、8割以上出勤した労働者」に対して付与(労働基準法第39条) (参考記事) |
| 手当 | 就業規則に則る(明記が必要) |
| 残業(36協定) | ・残業を命じられる ・残業代を支払わなければならない ・36協定の締結が必要(参考記事) |
※ 厚生労働省が公表している「モデル就業規則」にも、第6条に試用期間にかかわる定めが明記されています。
試用期間の対象(パート、アルバイト、契約社員)
試用期間は正社員だけでなくパートやアルバイト、契約社員にも適用させることができます。
一般的にパートやアルバイトの試用期間は、正社員よりも短く、1ヶ月程度なことが多いです。
試用期間中や終了後の対応
試用期間中、または終了後の具体的な実務を確認します。
本採用
本採用をする場合は、社内の規定に基づき、以下のような手順で対応します。
- 期間中の従業員の成果を評価し、本採用を決定(具体的な評価基準の例は後述)。
- 社内の承認手続き
- 本人への通知書の作成
- 本採用後の雇用契約書の作成
解雇(本採用の拒否)
試用期間中であっても従業員を制限なく解雇して良いわけではありません。しかし比較的、広い理由での解雇が認められています。
- 業務遂行能力が著しく欠けている
- 指導を行っても、改善が見られない など
使用期間中や試用期間後に解雇する場合であっても、上記のような合理的な理由と、正当性が必要です。正当性という点では十分な指導を行い、従業員に対して改善の機会を与えることが重要です。
解雇を行うには
- 原則30日前に「解雇予告」を行う
- 30日分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う
いずれかが必要です。
またトラブルを防ぐためにも、解雇通知書を作成するなど、解雇理由を明記して記録しておくとよいでしょう。
※ ちなみに、雇用から14日以内であれば、解雇予告を行わずに解雇できるとされています(法律上では「試みの使用期間」と言われます)。ただし、この場合であっても、合理的な解雇理由は必要です。
関連記事:円満に従業員を解雇する方法と手順|法的リスクを抑えるポイント
試用期間の延長
試用期間の延長は法律では制限されていません。能力をもう少し見極めたい、スキルの習得にもう少し時間をかけたい、といった時は、試用期間を延長することもできます。
試用期間を延長するには、以下のような条件が必要です。
- 就業規則に試用期間の延長に関して明記されていること(試用期間前に、延長の可能性があることに同意を得ていること)
- 延長に合理的な理由があること
- 当該の従業員の同意を得ること
試用期間を延長する際は、従業員の同意とトラブルを防止する為にも、延長の理由や期間を文書で通知しましょう。
試用期間の短縮
業務に早く適応していたり、社内事情によって、早めに正規雇用に切り替えたいケースもあるかもしれません。
この場合も、就業規則に短縮について明記されており、従業員に同意を得た上で、文書で通知を行えば、短縮も可能です。
ただし、他の従業員と不公平にならないよう、合理的な根拠が必要です。
従業員からの退職申し出
試用期間は従業員にとっても、自分の適性や会社との相性などを見極める機会です。試用期間中に従業員から退職したい旨の意思表示があったときは、誠実な対応が求められます。
まずは退職の理由を確認し、従業員の不満を改善する方法がないか、検討します。
その後、就業規則で規定した退職の方法に則って、手続きを進めます。
※ 試用期間中であっても、就業規則に規定された期日までに退職の申し出を受ける必要があります(1ヶ月前など)。
関連記事:もはや当たり前?「静かな退職」が企業にもたらすデメリットと予防策
試用期間を設定するメリット・デメリット
会社側と従業員側、それぞれの視点から試用期間を定めるメリットとデメリットを確認します。
【試用期間を定めるメリット】
- 採用のミスマッチを防ぐことにつながる(双方)
- 適切な業務に配置できる(双方)
- 採用コストを削減できる(会社)
- 期間中は大きな成果を求められることなく、スキルや知識を向上させられる(従業員)
【試用期間を定めるデメリット】
- 本採用を辞退されるリスクがある(会社)
- 長期の試用期間の設定や解雇により、企業イメージが低下する可能性がある(会社)
- 給料が低く設定されることがある(従業員)
- モチベーションの低下(従業員)
オープンなコミュニケーションの場をつくったり、評価や待遇を明確にすることで、少しでも試用期間のリスクを抑えて運用するのが理想です。
試用期間を有意義なものにするための評価基準例
試用期間を使用者、従業員、それぞれにとって有意義なものにするためには、試用期間を通して何をチェックし、どう評価するのか基準を定めておくことが大切です。
- 最優先で確認すること
採用時の情報(本人がアピールしていたこと、経歴など)と相違がないか、健康上の問題の有無 など - 業務能力
基礎能力、専門知識、技術力、問題解決力 など - 勤務態度
勤怠状況、規律性 など - コミュニケーション能力
報告・連絡・相談の適切さ、顧客対応 など - 成長性
学習意欲、改善への取り組み など - 社風への適応度
企業理念や価値観への共感、組織文化への適応 など
また「現場の責任者に『OJT』として丸投げ」ではなく、定期的な面談やフィードバック、多くの従業員とのコミュニケーションの場を設定するなど、試用期間中のプログラムを設計することも、人事労務担当者の重要な責務です。
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