2025年4月に始まった育児時短就業給付金って何?わかりやすく解説

2025年08月27日

育児と仕事の両立が社会的な課題となる中、2025年4月から「育児時短就業給付金」の新制度が始まりました。

労働者が経済的な不安を抑えつつ、育児を目的とした時短勤務を行いやすくすることを目的としたもので、多くの職場で活用されることが期待されています。

 【この記事でわかること】

  • 育児時短就業給付金の概要「どんなときにもらえるのか?」
  • 金額と計算方法
  • ケース別の給付条件
  • 事業者が行う申請手続き

※ この記事では「育児時短就業」のことを「時短就業」と記述することがあります。

育児時短就業給付金とは?基本

「育児時短就業給付金」は2025年(令和7年)4月1日に創設されました。

2歳未満の子どもを育てる労働者(従業員)が、育児のために所定労働時間を短縮して、賃金が下がったときに、その分を補うために支給される雇用保険の給付金です。

我が国の少子化の主な要因の1つと言われるのが、「育児と仕事の両立」の難しさです。育児のために時短勤務をすることで賃金が下がってしまい、これが離職やキャリアが中断する理由になっています。

実際に第1子を出産前に仕事に就いていた女性の約3割が退職しているというデータもあります。

出典:第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況|厚生労働省

このような背景のもと、働きながら育児にも参加しやすくし、少子化と労働力不足の問題の解決を目指して育児時短就業給付金制度が創設されました。

※ 財源には2026年から始まる「子ども・子育て支援金」などが活用されます。

関連記事:独身税?子ども・子育て支援金とは。2026年から始まる制度を正しく理解

育児休業時の給付金の全体像

子どもの出産前後に受け取れる給付金は複数あるため、全体像を理解することがポイントです。

給付金 対象 内容 支給額
出産育児一時金
※ 公的医療保険
子を出産した際に、加入している公的医療保険から支給される一時金 50万円
出産手当金
※ 健康保険
出産のために仕事を休んでいる間に、給与が支払われない場合に、健康保険から支給される手当 給与の2/3
出生時育児休業給付金 主に父親が子が生まれてから8週間以内に育休を取得した際に支給される給付金(産後パパ育休) 給与の67%
育児休業給付金 母 / 父 育児休業(原則、子が1歳になるまで)を取得した際に支給される給付金 給与の
67%〜50%
出生後休業支援給付金 母 / 父 子の出産直後の一定期間に、両親ともに育児休業を取得した際に上乗せされる給付金 給与の13%
育児時短就業給付金 母 / 父 育児休業終了後、2歳未満の子を養育するために時短就業した際に支給される給付金 給与の10%

この内、上から1つ目、2つ目の一時金と手当は、公的医療保険と健康保険から支給されます。

今回紹介する「育児時短就業給付金」を含む3つ目以降の給付金が、雇用保険から支給されるものです。

支給対象者

大前提として、育児時短就業給付金は

  • 2歳に満たない子を養育するために
  • 時短就業した結果、
  • 時短就業前と比べて賃金が下がったときに
  • 「月単位」で支給

されます。

具体的な対象者は以下のとおりです。

対象者(以下の両方を満たす人)

  1. 2歳未満の子を養育するために、時短就業する雇用保険の被保険者
  2. 以下いずれかに該当
    • 育児休業給付対象の育児休業から引き続き(14日以内に)時短就業を始めた人
    • 時短就業を始める前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月ある

支給される月

対象となる支給月は以下のとおりです。

支給される月(以下をすべて満たす月)

  1. その月の初日から末日まで雇用保険の被保険者であること(雇用保険に入っている)
  2. 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月(時短就業した)
  3. 初日から末日まで続けて「育児休業給付」か「介護休業給付」を受給していない月(指定の給付を受けてない)
  4. 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

支給対象の暦月を「支給対象月」といいます。

※ 主に公共団体等で採用されている「育児部分休業」で労働時間を短縮した場合でも、時短就業として認められることがあります。

支給される期間(いつからいつまで)

時短就業を始めた日の属する月から、終了した日の属する月までの各暦月が支給対象です。

上図の例だと、支給対象月は4月〜翌年の3月までです。

回数に制限なし

育児時短就業給付金に「一回限り」「回数上限」などの制限はありません。

一度時短勤務を終了した後でも、再び条件を満たして時短勤務を始めれば、その都度給付を受けられます。

ただし複数の子について同時に給付を受けることはできません。

育児時短就業給付金の金額と計算方法

原則、時短就業中の賃金額の10%が支給されます。

【原則】

支給対象月に支払われた賃金額 × 10%

ただし、以下の調整や減額、制限があります。

制限①:「育児時短就業開始時の賃金水準」を超えないように調整

支給対象月の賃金と給付金の合算額が「育児時短就業開始時賃金」を超えないように調整されます。

要は時短勤務をしたことで、その前より金額が増えることはないということです。

上記のとおり給付金の支給率は10%なので、つまりは、対象月の賃金額が時短開始時の賃金額の90%を超えると調整が入るということになります。

【賃金額が育児時短開始時の賃金額の90%超〜100%のとき】

支給対象月に支払われた賃金額 × 調整後の支給率

※ 補足:「育児時短就業開始時の賃金額」の求め方

時短就業開始前の6ヶ月に支払われた賃金(臨時の支給や賞与などは除く)÷ 180 ×30

例1)「育児時短就業開始時の賃金額」が30万円、支給対象月に支払われた賃金が20万円の場合

→ 20万円 × 10% =2万円 が支給

例2)「育児時短就業開始時の賃金額」が30万円、支給対象月に支払われた賃金が28万円の場合

支給対象月の賃金(28万円)が時短開始時賃金(30万円)の90%を超えているため、以下の計算式で調整される。

支給率 = { 9,000 × 30万円 ÷(28万円×100)- 90 } ÷ 100 =0.06428…… ≒ 6.43%(四捨五入)

→28万円 × 6.43% = 18,004円が支給

制限②:「支給限度額」を超えると減額

支給対象月の賃金と給付金の合算額が「支給限度額」を超えると、超えた分が減額されます。

2025年8月1日現在の支給限度額は471,393円で、毎年8月に更新されます。

例)「育児時短就業開始時の賃金額」が483,300円(上限額)、支給対象月に支払われた賃金が43万円の場合

支給対象月の賃金+給付金 = 43万円 + 43,000円 = 473,000円 > 471,393円(支給限度額)

→471,393円 – 43万円 = 41,393円が支給

育児時短就業給付金が支給されないケース

また以下の場合は、そもそも給付金は支給されません。

  • 支給対象月に支払われた賃金が「育児時短就業開始時の賃金」よりも減っていないとき
  • 賃金だけで「支給限度額(471,393円)」を超えているとき
  • 給付金額が「最低限度額(2,411円)」に達しないとき

※最低限度額(2,411円)は2025年8月1日現在の金額で、毎年8月1日に更新されます。

【ケース別】こんな働き方は育児時短就業給付金の対象?

以下では様々な勤務形態における育児時短就業給付金の取り扱いについて、簡単に見ていきます。

いずれのケースも重要なのは「労使間での合意の有無」です。

フレックスタイム制の場合

労働者が始業時刻や終業時刻、1日の労働時間を自分の裁量で決められる「フレックスタイム制」でも、上記でお伝えした所定の条件を満たせば、育児時短就業給付金の対象です。

「時短就業」と認められるには、清算期間(通常は1ヶ月)における、総労働時間自体を短縮することが必要です。

例)通常の総労働時間が1ヶ月160時間(8時間×20日)のところ、育児のために「1ヶ月120時間」として、清算期間全体の総労働時間を会社と合意して減らした

ここで重要なのが「清算期間全体の総労働時間を会社と合意して、最初から減らすこと」です。

以下のような「結果的に時短就業になり、賃金が減った」場合は、育児時短就業給付金の対象外となることに注意が必要です。

  • 「この日は子育てで所々抜けた」「今日は休む」など、その日ごとに個別に欠勤や早退を繰り返した場合(欠勤扱い)
  • 清算期間が終わり「所定の総労働時間を下回った分」の賃金が減額された場合(欠勤控除)

シフト制勤務の場合

実際の労働時間から1週間当たりの平均労働時間を出し、時短が確認できるときは、育児時短就業が認められます。

例)これまで1週間に平均30時間働いていたが、育児でシフト回数を減らしたり、1回ごとの勤務時間を短くしたことで、平均20時間に減った

ただし、事業者側との間でシフト調整の合意がなく、単に労働時間が減っただけでは認められないことがあります。

変形労働時間制・裁量労働制の場合

変形労働時間制の場合、1ヶ月や1年など一定期間内の総所定労働時間そのものを短縮することで、育児時短就業が認められます。

例えば「閑散期だけ極端に労働時間を減らし、他の時期に多く働くことで、期間内の総所定労働時間は変わらなかった」ケースは、時短就業とは認められません。

裁量労働制の場合は、労使間で「みなし労働時間」を短縮する取り決め(例:1日8時間→1日6時間)を行い、賃金が減った場合に限り、給付金の対象です。

短時間正社員やパートへの転換の場合

育児のために正社員から短時間正社員やパート・アルバイトなどの短時間労働者へ転換したときも、育児時短就業が認められます。

ただし1週間の所定労働時間が20時間を下回り、雇用保険の資格を喪失してしまうと、育児時短就業給付金は支払われません。

※ 子が小学校に就学するまでに1週間20時間以上の労働に復帰する前提であることが就業規則等の書面で確認できると、給付が受けられることがあります。

育児時短就業給付金の申請方法と事業者の手続き

担当者が知っておきたい、事業者における育児時短就業給付金の手続きをまとめます。

申請方法と提出先

育児時短就業給付金の申請は、原則、事業者(会社)が手続きします。

以下で説明する申請書を事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)」へ提出します。電子申請にも対応しています。

関連記事:【簡単作成】GビズIDの基本とできること、取得方法

申請書・添付書類と申請期限

申請手続きに必要な書類、添付書類、申請期限は以下のとおりです。

初回に①〜③を、以後は時短就業が終わるまで④を繰り返し提出します。

基本的には電子申請での作成・提出を推奨します。

書類添付書類申請期限
育児時短就業開始時賃金の届出

所定労働時間短縮開始時賃金証明書
(もしくは「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」)

記入例:パンフレット P.11
・賃金証明書に記載した賃金支払基礎日数、賃金支払状況及び育児時短就業を開始した日を確認できる書類
(賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書 など)
③の支給申請まで

(①〜③は同時に申請することを推奨)
(育児休業から引き続き、時短就業を始めたときは①は不要)
②受給資格確認

・「育児時短就業給付受給資格確認票

記入例:パンフレット P.12
・育児の事実、出産予定日及び出生日を確認することができる書類
・育児時短就業を開始した日を確認できる書類
・本来の週所定労働時間を確認できる書類
(母子健康手帳、賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書 など)
・※ 従業員からの同意書
③の支給申請まで

(②と③は兼用の書式。①〜③は同時に申請することを推奨)
③初回の支給申請

・「(初回)育児時短就業給付金支給申請書

記入例:パンフレット P.12
・支給対象月における賃金の額及び賃金の支払状況を確認できる書類
・支給対象月における短縮後の週所定労働時間を確認できる書類
(賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書等)
最初の支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内
(例:4月中に時短就業を開始した場合は7月31日まで)
④2回目以降の支給申請
(2ヶ月分)

「育児時短就業給付金支給申請書」

記入例:パンフレット P.13
・支給対象月における賃金の額及び賃金の支払状況を確認できる書類
・支給対象月における短縮後の週所定労働時間を確認できる書類
(変更が無い場合は省略可)
(賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書等)
支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内
(例:6月・7月分は9月30日まで)
(原則、2ヶ月分をまとめて、2ヶ月毎に申請する)

※従業員からの同意書

事業者が申請を行う際、労働者本人から「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」を受け取り、申請書に添付することで、申請時の本人署名を省略できます。

出典・ダウンロード先:厚生労働省

給付金はいつ振り込まれる?スケジュール

初回は審査を経るため、事業者が申請書を提出してから1〜2ヶ月かかることがあります。2回目以降は申請から1ヶ月程度を目安に入金されます。

被保険者(労働者)の口座に直接振り込まれます。

社内規定の見直しと従業員への周知

育児時短就業給付金の制度に対応するには、育児のための時短勤務の制度内容や運用方法を、就業規則や育児・介護休業規程に記載しておく必要があります。

また従業員へ制度を周知するとともに、希望する従業員には安心して相談・制度を活用してもらえるように、サポートします。

育児に関わる労働制度について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


お問い合わせ

    電話連絡を希望メールでの連絡

        


    参考資料

    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや