【初級】労災保険とは?仕組みや適用範囲、給付金の種類を解説

2025年08月13日
労災保険とは

業務中や通勤の途中で従業員がケガや病気などを負ってしまったとき、労災保険による補償を受けられることがあります。

万が一、災害が起こってしまったとき、冷静に対応するためにも、制度の基本を理解しておきましょう。

 【この記事でわかること】

  • 労災保険の概要
  • 労災保険が適用される災害
  • 労災保険で支給される給付金の種類
  • 労災保険の加入、保険料の支払い、労災発生時の対応

労災保険の基本

労災保険は、労働者が業務中や通勤途中にケガや病気、亡くなってしまった場合などに、本人や遺族を保障するための公的な制度です。「労働者災害補償保険法」にもとづき厚生労働省が運営し、窓口業務は労働基準監督署が担っています。

企業には労働契約法第5条などで、労働者が安全、健康に働けるように環境を整える責任「安全配慮義務」が課されています。

労災保険はこの義務を補完し、万が一、事故が起きてしまったときに迅速に補填を行う制度です。

適用対象者

労災保険は、原則として一人でも労働者を雇う企業に加入する義務があります。つまり、企業で働くすべての労働者が対象になります。「労働者」には正社員だけでなく、パートタイム、アルバイト、契約社員、派遣社員※ などの雇用形態に関わらず、会社と雇用契約を結んで働くすべての人が含まれます。

※ 派遣社員は派遣元の会社で加入します。

※ 一部、労災保険の対象外になる労働者もいます。

  • 会社の代表取締役や執行権を持つ役員など、経営者の立場にある人
  • 個人事業主
  • 事業主と同居している親族で、他の労働者と同様の業務に従事するなどの条件を満たさない人
  • 一部の農林水産業に従事する人 など

加入義務に反した企業には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、未払保険料の追徴などが課されます。

他の保険との関係・位置づけ

労災保険は広義では「社会保険」の一種です。狭義では雇用保険と合わせて「労働保険」と定義されます。

保険種類狭義内容加入手続き
1. 健康保険
(医療保険)
社会保険病気やケガを負ってしまった際、医療費の一部を負担することで医療を受けられる制度年金事務所
2. 厚生年金保険企業の従業員や公務員が加入する公的年金制度。将来、国民年金保険に上乗せして年金を受けられる年金事務所
3. 介護保険40歳以上が加入する、介護サービス利用費の支援を受けられる制度自動加入
4. 雇用保険労働保険失業した際に失業手当や再就職支援の給付等を受けられる制度公共職業安定所
(ハローワーク)
5. 労災保険業務中に事故や病気に遭った際、医療費や休業補償を受けられる制度労働基準監督署

労災保険が適用される災害

労災保険で補償される災害は、大きく分けて「業務災害」「通勤災害」「複数業務要因災害」に分類されます。

災害の種類によって給付内容や申請手続き、補償の範囲などが異なります。

業務災害

業務災害は、労働者が業務中または業務が原因でケガや病気、亡くなってしまった場合を指します。

  • 工事作業中に機械に巻き込まれた
  • 現場で転倒した
  • 業務による過労やストレスで病気が発症した など

業務災害の認定は

  • 業務遂行性:業務中の災害であること
  • 業務起因性:業務が原因の災害であること

で判断されます。

通勤災害

通勤災害は、労働者が自宅と職場の間を合理的な経路・方法で移動するときに被った災害を指します。

  • 駅の階段で転倒した
  • 自転車通勤中に交通事故にあった
  • 帰宅中にトイレを借りるために店舗に寄り、駐車場から出るときに交通事故にあった など

仕事の帰りに映画館に寄るなど、通勤経路を大きく「逸脱」した場合や、私的な用事で通勤を「中断」した寄り道は、通勤災害には認められません。

複数業務要因災害

複数業務要因災害とは、複数の異なる事業主に雇用されている労働者が、複数の業務による負荷(長時間労働、ストレスなど)が積み重なることで発生した病気(脳、心筋梗塞、精神障害)などを指します。

2020年の法改正によって、新たに認められた災害です。

これまでの制度では、複数の職場で働いている場合であっても、それぞれの事業場ごとの「負荷」によって災害の判定が行われていました。

そのため、例えば「A社で8時間、B社で5時間労働」が続いたことで、脳梗塞を発症した場合などでも、A社、B社それぞれ単独で負荷を判断した結果、労災認定されないというケースがありました。

法改正で複数の就業先での業務負荷を合算しての評価が認められたことで、近年広がっている副業・兼業を行う労働者への保障が手厚くなりました。

労災保険の給付の種類(一覧)

労災保険の主要な給付を確認しておきましょう。

給付の種類 内容 給付額例
療養(補償)
等給付
業務や通勤によるケガや病気の療養にかかる費用を支給 療養にかかる費用全額
休業(補償)
等給付
療養のための休業で賃金を受けられない場合に支給 給付基礎日額の80%
(60%+特別支給金20%)
傷病(補償)
等年金
療養開始から1年6ヶ月経過しても治らず、傷病等級1~3級に該当する場合に年金として支給 等級により給付基礎日額
の313〜131日分の年金
障害(補償)
等給付
治療後も障害が残った場合、障害の程度に応じて年金または一時金を支給 ・年金:等級1~7級は給付基礎日額の313~131日分
・一時金:8~14級は給付基礎日額の503~56日分
遺族(補償)
等給付
労災で死亡した場合、遺族に年金または一時金を支給 遺族の人数や状況により異なる
葬祭料等
(葬祭給付)
労災で死亡した場合の葬儀費用を支給 a・bの高い方
・a:31.5万円+給付基礎日額の30日分
・b:給付基礎日額の60日分
介護(補償)
給付
傷病(補償)等年金または障害(補償)等年金を受給し、かつ、介護を受けている場合に支給 介護に必要な費用
・常時介護:最大171,650円/月
・随時介護:最大85,780円/月
二次健康診断
等給付
特定の健康診断結果に異常があった場合、二次健康診断や保健指導の費用を支給 実費相当額

※ 給付基礎日額とは

労災事故に遭わず働いていた場合の、1日あたりの平均賃金額。

労災が発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額(基本給、残業代、各種手当を含む。ボーナスなど臨時的なものは含めない)を、その期間の総日数(休日も含む)で割って求める。

企業が行う労災保険の手続き

労災保険への加入手続きや保険料の算定・支払い方法など、企業に必要な対応をまとめます。

加入手続き

労災保険は「労働保険」として、雇用保険の加入といっしょに手続きします(一元適用事業の場合)。

初めて従業員を雇う際は以下の書類を所轄の労働基準監督署、金融機関、公共職業安定所に提出します。

  1. 「労働保険 関係成立届」
  2. 「労働保険 概算保険料申告書」
  3. 「労働保険 保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」(任意)
  4. 「雇用保険適用事業所設置届」
  5. 「雇用保険被保険者資格取得届」

※ すでに事業所として労災保険(労働保険)に加入している場合で、今回新たに従業員を雇った場合は、個別の労災保険の加入手続きは不要です(大幅に賃金が増える場合にのみ、後述する「概算保険料」を追加で申請し支払います。

詳しくは以下の記事で解説しています。

関連記事:【事業主向け】雇用保険のキホン 加入条件、手続きをわかりやすく解説

労災保険料の支払い方法と算定

労働保険(雇用保険+労災保険)の保険料は、事業者が毎年度、労働者の賃金の概算額をもとに保険料を計算して前払いします。そして年度が終了すると、確定した賃金をもとに正しい保険料を計算し直して、精算します。さらに新しい年度の概算の保険料を算出し、前払いします。

これを労働保険の「年度更新」と呼びます。

関連記事:【サクッと理解】労働保険 年度更新の申請手順、計算方法をわかりやすく解説

労災保険料は以下の方法で計算します。

労災保険料 = (労災保険被保険者の)賃金総額 × 労災保険率

労災保険率は業種によって異なります。

労災保険料は全額、事業主が負担します。

出典:労災保険制度の概要、給付の請求手続等 |厚生労働省

例えば「卸売業(98)」事業に分類される企業の、被保険者(従業員)の賃金総額が2,000万円だった場合、以下のように計算します。

  • 事業主負担:2,000万円 × 0.3% = 6万円

一般拠出金(労災保険)の支払い

一般拠出金とは、石綿(アスベスト)健康被害者を救済するためのもので、すべての労災保険適用事業者に支払い義務があります。労働保険料の年度更新の際に併せて支払います。

  • 料率:業種を問わず「1000分の0.02(0.00002)」
  • 負担:全額事業主負担

※ 一般拠出金は少額なので概算払い制度はなく、確定納付のみです。例えば令和7年度の年度更新(令和7年6月-7月)では、前年の令和6年度の賃金総額をもとに金額を算出し、令和7年度分として申告・納付します。

労災発生時の対応

労災が発生した際は被災者の救護や救急・警察への通報など初期対応を行った後に、以下の手順で労災にかかわる手続きを行います。

  1. 労災指定病院への通院
    被災者へ労災指定病院へ通院させる。通常の病院を利用する場合は、労災であることを伝えた上で、健康保険証を使用しない
  2. 労災給付にかかわる請求書の作成サポート
    請求は被災者本人が行うものだが、事業者の証明などが必要なため、サポートする
  3. 労働基準監督署への報告
    4日以上の休業の場合、労働者死傷病報告を提出する(2025年1月から電子申請が義務化)。4日未満の場合は3ヶ月に1度、まとめて報告する

また「休業(補償)等給付」は休業4日目からしか支給されません。企業には最初の3日間の賃金を補償する義務があります。

労災保険について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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