【基本】割増賃金のルールをわかりやすく解説。割増率や計算方法

2026年01月30日
割増賃金

残業をはじめ、休日労働や深夜労働が行われると、割増賃金が発生します。割増賃金は労働の種類ごとに割増率が異なります。給与計算の基本的な知識としてしっかり押さえておきたい内容です。

 【この記事のポイント】

  • 割増賃金は法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働や、法定休日・深夜(原則22時~翌5時)の労働に対し、通常の賃金に上乗せして支払うことを義務付けるルール
  • 残業が深夜(22時〜5時)に及ぶと「残業25%+深夜25%=計50%」というように合算して支払われる
  • 割増賃金額は「1時間あたりの基礎賃金 × 対象となる労働時間数 × 割増率」で決まる

割増賃金とは

「割増賃金」は、労働基準法第37条にもとづく、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働や、法定休日・深夜(原則22時~翌5時)の労働に対して、通常の賃金に上乗せして支払うことを義務付けるルールです。

割増賃金は身体に負担のかかる労働に対して経済的な補償を行うとともに、企業に対しては追加の負担を求めることで、安易に時間外・休日・深夜労働をさせないようにしています。

支払いは雇用者の法的な義務であり、支払わないと行政指導や罰則の対象になります。

関連記事:36協定(サブロク協定)とは?労働時間の原則を解説

割増賃金の種類と割増率一覧

割増賃金は対象の労働ごとに割増率(どれだけ通常の賃金に割増さなければいけないか)が決められています。

対象 条件 割増率
時間外労働
(時間外手当・
残業手当)
法定労働時間(1日8時間、週40時間)
を超えたとき
25%以上
時間外労働の上限(月45時間、年360時間)
を超えたとき
25%以上
時間外労働が月60時間を超えたとき 50%以上
法定休日労働
(休日手当)
法定休日(週1日)に労働させたとき 35%以上
深夜労働
(深夜手当)
22時から5時の間に労働させたとき 25%以上

※ 2023年4月1日から月60時間超時における、中小企業の割増率が50%以上に引き上げられました。

【原則】重複時は割増率が合算される

時間外労働や休日労働と、深夜労働とでは、割増賃金の目的が異なります。

例えば時間外労働と深夜労働が重なったとき、労働者は「長く働く負担」と「深夜に働く負担」を同時に受けています。

そのため、対象の労働が重なったときは、両方の割増率を合算して支払うことで、労働者の負担を補償します。

ちなみに、法定休日には「時間外労働」の概念がないので、休日労働と時間外労働の割増率が重なることはありません。

割増賃金と残業代の違い

割増賃金と混同されがちなのが「残業代」です。

「残業代」は、会社が定めた労働時間を超えた分に対して、支払われるものです。

例えば会社の所定労働時間が7時間で、1時間の残業があったとき、法定労働時間(1日8時間、週40時間)は超えていないので、通常の賃金のみ支払われれば、問題ありません。

一方で法定労働時間を超えるときの「残業代」は、所定の割増率を守ったものでなければいけません。

罰則

企業が割増賃金を適切に支払わない場合、以下のような罰則や影響があります。

  • 刑事罰(法的罰則)
    6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 労働基準監督署による指導・勧告
    従業員が申告することで調査や指導、是正勧告が行われることがある
  • 訴訟へ発展する可能性
  • 企業イメージの低下 など

特に従業員・元従業員が会社に対して未払残業代にかかわる訴訟を起こす例は多く、2020年には未払い賃金の請求権の時効が3年に延長されています(今後、5年まで延長される予定です)。

割増賃金の計算方法

割増賃金は、以下の計算式で求めます。

割増賃金額 = 1時間あたりの基礎賃金 × 対象となる労働時間数 × 割増率

「1時間あたりの基礎賃金」の算出方法

  • 時給制:時給 = 1時間あたりの基礎賃金
  • 日給制:日給 ÷ 1日の所定労働時間
  • 月給制:月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間

月給制の際に用いる「1ヶ月の平均所定労働時間」は

1年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12

で求めます。

例えば年間休日が140日、1日の所定労働時間が8時間の場合、

(365-140)× 8 ÷ 12 = 150時間

が1ヶ月の平均所定労働時間となります。

基礎賃金から除外されるもの

基礎賃金を算出する際、以下の手当、賃金は除外します。労働基準法第37条第5項、施行規則第21条で決められています。

手当・賃金 内容
家族手当 扶養家族の人数などに応じて支給される手当
通勤手当 通勤距離や通勤費用の実費に応じて支給される手当
別居手当 家族と別居して勤務するときに支給される手当
子女教育手当 子どもの教育費に応じて支給される手当
住宅手当 住宅費に応じて支給される手当
(家賃やローン額に連動している場合のみ。
定額支給などの場合は除外できない)
臨時に支払われた
賃金
結婚手当や見舞金など、
突発的・臨時的に支給される賃金
1か月を超える
期間ごとに
支払われる賃金
賞与(ボーナス)など、
1ヶ月を超える期間ごとに支給される賃金

上記に当てはまらない手当(例えば役職手当、皆勤手当など)は、原則、基礎賃金に含めます。

また手当の名称が上記に当てはまったとしても、実態(内容)が当てはまらなければ、基礎賃金から除外できません。

割増賃金で注意すべきこと

以下では割増賃金を計算する際に注意することや、知っておきたいことを補足します。

みなし残業代(固定残業代)の運用

「月40時間分」など、一定時間分の残業代を予め給与に組み込んで支払っている企業も多いです。割増賃金の観点では、以下の点に注意して運用します。

  • 前提として割増率を反映した金額を設定する
  • 休日労働、深夜労働の割増には別途対応が必要
    (一般的に「固定残業代」には時間外労働分のみが想定されているため)
  • 固定残業時間を超えた分は必ず追加で支払う
  • 基本給と固定残業代は明確に区分して、労働契約書で明示する
  • 就業規則へ明記する

正しく運用しないと、最低賃金を下回り違法となるリスクもあります。

関連記事:最新の岡山の最低賃金|そもそも最低賃金とは?基本から解説

「管理監督者」の割増賃金の適用

労働基準法で定められる「管理監督者」には、原則、時間外労働(残業)や休日労働に対する割増賃金の支払い義務がありません。

ただし、深夜労働については、管理監督者であっても割増賃金(25%以上)の支払いが必要です。

変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制と割増賃金

昨今の多様な働き方における割増賃金の考え方を整理しておきましょう。

変形労働時間制

繁忙期・閑散期に合わせて、日や週ごとの労働時間を柔軟に設定できる制度

  • 設定された期間内(1ヶ月、1年など)で法定労働時間を超えた場合に割増賃金が発生する
  • 所定労働時間が8時間を超える日や週は、超えた分が時間外労働となる
  • 休日労働や深夜労働も通常通り割増賃金が発生する

フレックスタイム制

清算期間(最大3ヶ月)内で、従業員が始業・終業時刻や1日の労働時間を自分で決められる制度

  • 清算期間内の総労働時間が法定労働時間の総枠(例:月160時間など)を超えた場合、割増賃金が発生する
  • 休日労働や深夜労働も通常通り割増賃金が発生する

裁量労働制

実際の労働時間に関係なく、予め決めた「みなし労働時間」を働いたものとみなす制度

  • みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超えている場合は、割増賃金が発生
  • 法定休日や深夜労働は、実際に働いた時間分に発生

割増賃金が発生しないケース

割増賃金が発生しない主なケースは以下のとおりです。

  • 休憩時間
  • 出張、通勤などの移動時間
  • 自宅待機・オンコール中
    ※ 拘束性が高い場合は労働時間とみなされることもある
  • 法定外休日(会社独自の休日)の出勤 など

代替休暇制度とは

代替休暇制度は、月60時間を超える時間外労働(残業)に対して、本来支払うべき「50%以上の割増賃金」の支払いの代わりに、有給休暇(代替休暇)を与えることができる制度です(労働基準法37条3項)。

  • 通常の割増賃金(25%以上)は必ず支払いが必要
    →休暇で代替できるのは「追加の25%分」だけ
  • 代替休暇を取得するか割増賃金で受け取るかは労働者が選べる
  • 代替休暇を付与するためには労使協定の締結、就業規則への明記が必要

割増賃金に関するよくある質問(Q&A)

最後に割増賃金に関するよくある疑問を一問一答形式でまとめておきます。

アルバイトやパートにも割増賃金は発生しますか?

はい、発生します。雇用形態に関係なく、労働基準法が適用されます。

副業・ダブルワークをしている従業員の割増賃金はどうなりますか?

複数の勤務先の労働時間を通算して、割増賃金を計算します。

本業と副業(ダブルワーク)の労働時間を合計して、1日8時間・週40時間を超えたときは、原則、後から雇用契約を結んだ会社が、その超過分の割増賃金を支払います。

労働時間の端数を切り捨てることはできますか?

労働時間の端数を切り捨てることは、原則として認められていません。

ただし、月単位で集計した時間外労働・休日労働・深夜労働の合計時間に限り、30分未満の端数を切り捨て、30分以上は1時間に切り上げることが例外的に認められています。

参照:時間外労働・休日労働・深夜労働 Q10|鹿児島労働局

また、割増賃金の金額の端数(円未満)が出たときは、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることができます。

割増賃金計算に役立つツールはありますか?

Keisan」などの無料Webツールで簡易的に計算することができます。

また一般的な給与計算ソフトや労務管理ソフトには割増賃金(時間外・休日・深夜など)の自動計算機能が標準搭載されています。

関連記事:【効率化】給与計算ソフト導入ガイド|費用、選び方、導入支援まで

関連記事:勤怠管理システムを導入する前に知っておきたいこと

従業員の賃金について相談するなら、まき社会保険労務士事務所へ

岡山市のまき社会保険労務士事務所では「お客様の悩む時間をゼロにしたい」という思いのもとで、社会保険等届け出・就業規則の作成・給与計算・助成金等の申請を行っています。

「気軽に相談できる身近なパートナー」となるべく、可能な限りサポートさせていただきます。岡山市周辺の方はもちろん、全国オンライン対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。


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    参考資料

    この記事の執筆者
    まき社会保険労務士事務所 代表
    社会保険労務士 牧 あや